2巻

第10話 期末試験の前哨戦④

〜翌日〜

「まずは、再試験の勉強からね。とりあえず、各教科の苦手な部分を洗い出してそこを強化していくことにするわ。」


天王寺さんが、これからのカリキュラムについて話す。言ってることはご最もである。だが、俺には苦手な部分を洗い出す必要はない。なぜなら、全て苦手だからだ。そんなことを思っていると、楠木さんが、口を開く。


「苦手を洗い出す必要はないかもね。この答案を見る限り、英語以外は基礎から全部やらないとダメそうよ。」


"何?楠木さんは俺の心が読めるんですか?"というツッコミはさておき、それを聞いた他のメンバーはため息をついた。やることは簡単だ。最初からやればいいのだから。だが、その道のりが壮大すぎる。


「それじゃ、予定と誰がどの教科を教えるかってことから決めていきましょ。誰がどの教科を教えるかはそれぞれの一番の得意分野でいいよね?」


「オッケー!」


他の4人が満場一致で賛成する。こうして、国語が天王寺さん、数学が楠木さん、英語が武田さん、社会が久保田さん、そして理科が緒方の担当となった。


「私たちが勉強を教えられるのは、放課後の2時間ね。同じ教科を連続2時間ってのは少しキツいかな?」


天王寺さんが、俺に聞いてくる。勉強が嫌いな俺にとって同じ教科を2時間連続は苦痛だ。たまに学校の授業でも同じ教科を2時間連続でやることがあるが、苦痛で苦痛でしょうがない。


「非常に苦痛です。」


「それなら、毎日2教科を1時間ずつ教えていくってことにしましょう。」


そして、月曜日は国語と理科、火曜日は数学と社会、水曜日は英語と理科、木曜日は国語と数学、金曜日は英語も社会をやることになった。


〜5日後〜

「ハァ...ハァ...。数学やっぱダメだ...。疲れた...。休憩...!」


そう言うと俺はすぐに机に突っ伏した。そんな俺を楠木さんは無理やり起こしてくる。


「まだ、30分しか経ってないでしょ!さっきも休憩とか言って休んだし!」


今日は授業もだいぶハードだったので身体は疲れきっている。そこに数学と来たもんだ。10分置きに休憩を取りたくなるのも仕方の無いことである。


「はぁ...。しょうがない...。あれを使おうかな。」


楠木さんはそう言うと、何やらカバンの中をガサゴソと漁り出した。そして、何かを見つけ取り出す。数秒の間の後、俺の耳元で"バチン"と大きな音が鳴った。俺は驚いて飛び上がりながら楠木さんの方を見る。その楠木さんの手に握られていたもの。それは、鞭だった。


「勉強したがらないのならこれを使うしかないかな〜?」


鞭を握りしめ、微笑みながら楠木さが言う。俺は、すぐさま姿勢を正し机に向かう。右手にシャーペンを持ちいつでも勉強できますよアピールをする。


「や、やだなー。勉強する気しかないですよ。さ、早く教えてください。(棒)」


やはり楠木さんは、ドSだった。だいたい、普通の人は鞭なんか持っていないだろう。それなのに、なぜ持っているのだろうか。そういう趣味があるのだろうか。かなり気になったが、タブーに触れそうな気がしたので聞かないでおくことにした。


〜さらに3日後〜

ついに明日、再試験の日である。再試験前最後の放課後の勉強を終えた。


「とりあえず、教えるべき所は教えたけど、正直付け焼き刃みたいなものだから、再試験が終わったらしっかり復習して、期末試験に備えなきゃね。」


「はいっ!」


俺は、元気よく返事をした。ココ最近は別人のように勉強していた。きっと、その努力は報われるだろう。


「じゃ、明日の再試験頑張ってね!」


「はいっ!ありがとうございます!」


〜1月17日 22時57分〜

「よし、最後の勉強も終わったし、そろそろ寝るか。」


最後の勉強を終え、明日の準備をし、ベッドに入る。俺の心は少し緊張していた。俺は、今までこの再試験に向けてたくさん勉強してきた。今の俺があるのはあの5人のおかげだ。その5人にいい報告をしたい。明日は、実力以上を出し切ろうと思いながら深い眠りについた。





第11話 「期末試験の前哨戦⑤」に続く。

次回更新は3月15日(日)の予定です。

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