第9話12ヶ月寿限無・其の2

「おや。今出ていったとばかり思っていた熊さんがもう戻ってきたよ。いったいどうしたのかね」


「ご隠居、産まれました。玉のような赤ん坊です。立派な男の子です」


「そうかい。そいつはよかったね。それで、なんて名前をつけたんだい?」


「『名前』って、ご隠居さんが英語での月の名前ををたくさん教えてくれたじゃありませんか。だから、そいつを名前にさせてもらいました」


「だから、どの月の名前を息子の名前にしたんだい?」


「そんな、せっかくご隠居が教えてくださった名前ですから、ありがたく全部ちょうだいしましたよ」


「全部って、それじゃあお前さんは息子にジャニュアリーフェブラリーマーチエイプリルメイジューンジュラーイオーガストセプテンバーオクトーバーノーベンバーディセンバーなんて名前をつけたっていうのかい」


「はい、きょうからおいらにはジャニュアリーフェブラリーマーチエイプリルメイジューンジュラーイオーガストセプテンバーオクトーバーノーベンバーディセンバーって息子がいることになりました」


「しかし、ジャニュアリーフェブラリーマーチエイプリルメイジューンジュラーイオーガストセプテンバーオクトーバーノーベンバーディセンバーってのは名前としては長すぎないかい?」


「そんなことありませんよ。ご隠居に教えていただいたありがたい名前です。それじゃあ、早い所ジャニュアリーフェブラリーマーチエイプリルメイジューンジュラーイオーガストセプテンバーオクトーバーノーベンバーディセンバーの顔を見に帰りたいですから、これで失礼させてもらいますよ」


「そ、そうかい。それじゃあおっかさんとジャニュアリーフェブラリーマーチエイプリルメイジューンジュラーイオーガストセプテンバーオクトーバーノーベンバーディセンバーちゃんによろしくね」


……


「さてさて、おいらの可愛いジャニュアリーフェブラリーマーチエイプリルメイジューンジュラーイオーガストセプテンバーオクトーバーノーベンバーディセンバーちゃんは元気かな……どうしたことでい。赤ん坊の泣き声が騒がしいじゃないか。おい、かあちゃん、なにが起こったんだ」


「あ、あんた。それが大変なんだよ。ジャニュアリーフェブラリーマーチエイプリルメイジューンジュラーイオーガストセプテンバーオクトーバーノーベンバーディセンバーちゃんが、ドアの出入り口に手を挟みそうになっちまったんだ」


「なんだって、ジャニュアリーフェブラリーマーチエイプリルメイジューンジュラーイオーガストセプテンバーオクトーバーノーベンバーディセンバーちゃんが、ドアの出入り口に手を挟みそうになっちまったてのかい」


「それだけじゃないんだよ。ジャニュアリーフェブラリーマーチエイプリルメイジューンジュラーイオーガストセプテンバーオクトーバーノーベンバーディセンバーちゃんが、お月様を見たいってむずがるんだ」


「なに、ジャニュアリーフェブラリーマーチエイプリルメイジューンジュラーイオーガストセプテンバーオクトーバーノーベンバーディセンバーちゃんが、お月様を見たがってるのかい。自分の名前が月にちなんでいるからってわけでもねえってのに」


「そして、ジャニュアリーフェブラリーマーチエイプリルメイジューンジュラーイオーガストセプテンバーオクトーバーノーベンバーディセンバーちゃんが、戦争映画に興奮して行進曲のマーチを歌い始めちゃったんだ」


「そんな、ジャニュアリーフェブラリーマーチエイプリルメイジューンジュラーイオーガストセプテンバーオクトーバーノーベンバーディセンバーちゃんが、まだ赤ん坊だってのに行進曲のマーチを歌っちゃてるのかい?」


「で、ジャニュアリーフェブラリーマーチエイプリルメイジューンジュラーイオーガストセプテンバーオクトーバーノーベンバーディセンバーちゃんが、『こんな長ったらしい名前はいやだ。名前はビーナスがいい』なんて駄々をこねるんだ」


「なんだって、ジャニュアリーフェブラリーマーチエイプリルメイジューンジュラーイオーガストセプテンバーオクトーバーノーベンバーディセンバーちゃんが、せっかく御隠居につけていただいたありがたい名前を嫌がってるだって」


「そしたら、ジャニュアリーフェブラリーマーチエイプリルメイジューンジュラーイオーガストセプテンバーオクトーバーノーベンバーディセンバーちゃんが、『名前を変えさせてくれないのなら、せめて略させてくれ』なんて頼んでくるんだよ」


「ええ、ジャニュアリーフェブラリーマーチエイプリルメイジューンジュラーイオーガストセプテンバーオクトーバーノーベンバーディセンバーちゃんが、『自分の名前を略したい』だって。だめだ。せっかく御隠居につけていただいたありがたい名前なんだから」


「で、ジャニュアリーフェブラリーマーチエイプリルメイジューンジュラーイオーガストセプテンバーオクトーバーノーベンバーディセンバーちゃんが、『結婚したい』って言うんだよ」


「なんだって、ジャニュアリーフェブラリーマーチエイプリルメイジューンジュラーイオーガストセプテンバーオクトーバーノーベンバーディセンバーちゃんが、『結婚したい』って。まだ産まれたばかりじゃねえか。いくらなんでも気が早すぎらあ」


「お次は、ジャニュアリーフェブラリーマーチエイプリルメイジューンジュラーイオーガストセプテンバーオクトーバーノーベンバーディセンバーちゃんが、『自分の名前を日本でも使え。睦月如月弥生卯月皐月水無月文月葉月長月神無月霜月師走なんて言い方は古臭い』なんて言い出しちゃったんだよ」


「なんと、ジャニュアリーフェブラリーマーチエイプリルメイジューンジュラーイオーガストセプテンバーオクトーバーノーベンバーディセンバーちゃんが、『自分の名前を日本でも月の名前として使え』だって。子供の言うことだって、調子に乗りすぎだって。ローマの皇帝にでもなったつもりだってのかい」


「最後に、ジャニュアリーフェブラリーマーチエイプリルメイジューンジュラーイオーガストセプテンバーオクトーバーノーベンバーディセンバーちゃんが、『最後が7番目、8番目、9番目、10番目ってのはいいかげんじゃないか。だいたい、9月、10月、11月、12月とずれてるじゃないか』なんて不満たらたらなんだよ」


「そんな、おいらだって、太郎、次郎、三郎、四郎、五郎、六郎、七郎、八郎、九郎、十郎、与一なんてありきたりな名前はいけないと思ってご隠居にいい名前を考えてもらったってのに。何が不満なんだい。ジャニュアリーフェブラリーマーチエイプリルメイジューンジュラーイオーガストセプテンバーノーベンバーディセンバーちゃんや」


「あんまりあたしの名前が長すぎて、閏月うるうづきが入って、一年が13ヶ月になっちまったからだよ」

















                        

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