エピローグ






   エピローグ






 「いい場所だな………」

 「うん。ここなら、きっと喜んでくれるよね」



 高台にある小さなお墓。

 そこに新しい墓石が置かれていた。

 そこには「シンドウアキサネ」と英語でかかれていた。空澄はその上に白い花束を置いた。



 あの日。リアムが再び璃真の白骨は入り、バラバラになってしまったものを、空澄と希海はきれいに集めた。空澄はまだ家に璃真がいて欲しいと思っていたけれど、また、こんな事件があると彼もゆっくり眠れないのではないか。そう思い、2人はお墓を作ることにした。

 ここには、少し離れた場所に彼の両親も居るので、きっと今ごろ再会しているはずだと空澄は思った。





 リアムと希海にかかっていた容疑は、しっかりと調べた結果、逮捕に値しないと判断され、2人は釈放された。

 リアムは「おまえたちと関わるのはごめんだ」と、さっさと去っていこうとした。けれど、「あいつの墓が出来たら教えろ」と、連絡先だけ残して去っていった。

 そして、小檜山はあれから警察からもいなくなり行方不明だという。もともと空澄を見張るための仕事だったのだ。彼がこの土地から離れるのも仕方がないのかもしれない。けれど、希海は「まだ諦めてないかもしれないから気は抜けない」と、言っていた。




 希海の体調が戻ってから、璃真と希海の事。そして、リアムが彼の体に入っていた事を詳しく聞いた。

 自分は知らないことが多かったのだと反省しながらも、今魔女になれてよかったと改めて思った。


 

 「空澄、大丈夫か?」

 「………うん。大丈夫だよ。ちょっと、考え事してただけ」



 希海に後ろから抱きしめられ、空澄は後ろを向きながら微笑んだ。


 今は彼と一緒に魔女の店を細々とやっている。少しでも誰かの役に立てるならならと、始めたところ、「尚美さんと同じ力がある」と評判になりはじめて、最近はお客さんも増え始めた。希海は「よかったな」と懐かしそうに笑ってくれた。彼は癒し系の薬よりも、お守りの方が得意なようで、魔除けや縁結びのまじないをして、有名になっていた。



 「…………希海。私、魔女になってよかった」

 「………うん。俺も、嬉しい。おまえとこうやって抱きしめ合えるのも、おまえがそれを選んでくれたからだ」

 「これからも、ずっと見ていてね」

 「あぁ………当たり前だろ」



 鴉の羽のように艶のある髪が頬に触れ、そして、彼は小さく唇にキスをしてくれる。


 危険な事もあるだろう。

 また、泣いてしまう事もあるかもしれない。


 けれど、もう弱い自分ではない。

 守ってくれる人が居るから。守りたい人がいるから、きっと大丈夫。


 そんな幸せを胸に、空澄はゆっくりと目を閉じたのだった。



               (おしまい)






 

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