第5話 あっ、ス〇モ!
「そうですねーほかにお客様のご要望にあう家は...」
相変わらず店員(しょう)さんが家を探してくれているが正直言うともはやほとんど期待はしていない。というかろくでもない家しか紹介されない気がする。
「こちらのお家は素晴らしいと思いますよ!大学から徒歩7分で家賃4万5000、風呂トイレ別の1K!」
と思ったら急にマジでいい感じの家を紹介してきた。もしや上げて下げる作戦か?
「実は高層マンションの高い階で階段を何分ものぼらないといけなかったりは?」
「しません!」
......
「家が修羅場だったり?」
「しませんって!そんな部屋紹介するわけないじゃないですか」
え、もしかしてちゃんとした部屋なの?
「いい部屋じゃないですか!こういうお部屋をもっと早く紹介してくださいよ!」
「ええそうでしょう!実は私も同じお家に住んでるんですよ」
なるほど。店員さんが住んでいるのなら本当に優良物件なのだろう。これは信用できる。
「ただ一つだけ問題がありまして...」
やっぱこいつは信用できない。
「空いてるお部屋がないんですよね」
「...は?致命傷じゃん。どうしようもないタイプの状態じゃん。ていうかそれ店員さんが今住んでる家の自慢しただけじゃん」
「へへっ」
「へへっ、じゃねえよ!」
こいつはとんだくそ野郎だった。
「お客さんとなら同棲でもいいですよ」
「いやです」
「家賃は4:6で」
「なんでちょっと自分が払う金額少なくしてんだよ。そこは5:5だろ...いやそれでも住まないけど」
「そうですか...いいお家なんですけどね」
「この期に及んでまだ自慢すんのか。もっといい家探して!ほら次!」
やっぱり上げて下げるタイプだった。なんかじきに人間不信になりそうな気がする。
「そうですね、紹介しにくいのですが...」
「え、紹介しにくいなんて思う感性あったの?もう簡単には驚かないから早く紹介して」
こいつにそんなことを言わせるなんて逆に気になる。
「事故物件となってしまうのですが...」
「あぁー」
納得。まあその一点にさえ目をつぶれば格安でいい家に住めるのだろうし逆に事故物件から選ぶのもありかもしれない。
「こちらのマンションでしてね、2年前にできたばっかりなんですけど1LDKで月4万8000となります」
一人では持て余しそうな広いマンションだ。しかも新しい。
「で、ここで何があったんですか?」
「それがですね、火事で燃えているらしくて...」
ん?
「燃えている?燃えたじゃなくて?」
「はい。今は七割がた燃えているらしいです」
事故物件(現在進行形)じゃん。
「防火対策が不十分だったらしくて...これはいまの火が消えてもしばらくは炎上してそうですね」
「やかましいわ」
1LDK(煤まみれ)なんかに住みたくはない。
「もうろくなお家ないみたいですね。分かりました。帰ります」
「お役に立てず申し訳ありません。あっ、ちょ、ちょっとお待ちくださいお客様!たったいま新しい情報が入ってきまして!」
「...なんですか」
ろくな情報じゃないのは間違いないだろう。
「先ほど紹介したシェアハウスのほうで痴話げんかがあったらしく、こちらのほうも事故物件となりお安くなりましたがどうでしょうか!」
「絶対に嫌だ」
「なあ」
おれは疑問に思っていたことをしょうにぶつける。
「不動産屋ってまじでこんなヤバい家も紹介してくんの?」
「さあ?俺は家借りるときほとんど親がやってくれたから知らね」
こいつっ!
生まれ変わるとしたら鵺 @ravinir
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