第4話 あっ、ス〇モ!
ゴールデンウイークが近づいたとある日のこと。そこには欲望渦巻く一人の青年がいた。
「なあしょう」
「ん、どうした」
「おれ一人暮らししたいわ」
「あー。そりゃあな。ケイは実家から通えなくもないけどそれなりに時間かかるしな」
「ああ。あと完璧に一人で暮らせる空間が欲しい。親フラにおびえる生活はもうしたくない。夜遊びをしても怒られない環境を体が求めている」
「そんないいことばっかじゃないぞ一人暮らししても」
「うるせー持つものが持たざる者に説教かましてんじゃねーぞ」
「今日口悪くね?生理?まあいいや。で、どうしてほしいん?」
「一人暮らしする家を見つけたい」
「不動産屋をやってくれと」
「そういうこと」
「圧縮言語がひどいぞ。まあいいけど」
「じゃあさっそく頼む」
「おうとも」
~ケイside~
家探しとかはじめてだから緊張するな。まあ今日はあくまでもお客さんなんだしバイトの面接みたいにはならんだろう。よし!
ウィーン
「いらっしゃいませ!賃貸のお探しですか?」
「あ、はいそうです」
「ではこちらのほうの席にお座りください」
結構ちゃんとした雰囲気だな。これならちゃんとした家を探せそうだ。
「では、どんな条件がお望みでしょうか」
「大学から徒歩10分以内で、家賃五万円程度のところがいいんですが」
「あー今の時期だと大学付近は新入生が借りたばっかりだからあんまあいてないんですよねーと、ここなんてどうです?家賃六万で1Kのマンション。大学にも近いですよ」
「いいですね」
「ただ一つ問題がありまして」
ん?嫌な予感。
「問題って?」
「三年前にエレベーターが壊れまして、空いているお部屋が11階より高い部屋しかないので大学まで8分+階段10分といったかんじですかね」
「地獄かよ」
「いい条件かと思いますが」
「どこがだよ。早くエレベーターなおしてやれよ。なんで三年も放置されてんだよ」
「オーナーの趣味らしくて」
「意味わかんねー趣味だな」
「お気に召しましたか?」
「お気に召しませんよ。ほかに条件に近いものないんですか」
ったくしょっぱなにやばい家紹介されたな。いや、あれは店員さんのジョークか?ジョークだと信じたいな。素であれならヤバイ。
「おっ、こちらの家はどうでしょう。シェアハウスの同居人募集なんですけど風呂トイレキッチン共有でただいま同じ大学生の男性2人と女性2人が住まれています」
「唐突に青春の波動を感じさせますね!近い年の人とシェアハウスですか!」
最近は不動産でシェアハウスの募集もされてるのか。知らなかったな。
「しかもこの4人、2組のカップルらしいですよ」
「地獄かよ」
ちょっとデジャヴ。
「さらにこの4人元カレ元カノの関係らしいです!」
「え、もともとカップルだったのが別れたけど同居してんの?しかも元カレ元カノの今カレ今カノとも同居?青春空間が一瞬で修羅に変わったんですけど?」
なんだろう、深い闇を感じざるを得ない。
「今ならそこに混ざれますが、いかがですか?」
「絶対巻き込まれたくないです」
一人浮いた状態になるのは間違いないし、毎日火薬庫で生活するような感じになりそうだ。
「欠点のない素敵なお家かと思いますが」
店員さんの想像力の欠落が激しい。
「いや、その家はいいです」
「そうですか。条件に合ったいいお部屋かとおもったのですが」
この店員はポンコツかもしれない。
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