近未来、夏、スラム街。耳のついた子を拾う。

※作品は絶対評価したいので星はぜんぶ二つです。
※終話まで読んだ感想です。

2059年、なんやかんやあって衰退した日本は、遺伝子や人工臓器などの技術発展で、医療大国として一命を取り留めていた。

万象律と呼ばれる、光子や分子、電子など目にも見えない力を操る律術士の一人で、カレーにモヤシが混入するレベルの貧乏学生の星川証(あかり)は、ある日、スラムと化した東京の再開発地区で、耳のついた突然の変異のお子様を拾ってしまう。

それが、割と世界がひっくり返るほどの事件に発展していく理系アクションバトルハードボイルドです。

ハードボイルドらしく文章は端的で、無駄が無く、整理されています。九九ができれば入れるレベルの高卒であるレビュー主でも何が起こっているのか理解できました。

厳しめの世界設定ですが、出てくる人間たちは逞しく愉快にイカレており、楽しく読むことができます。



独断と偏見で人物を紹介します。「マジでこんな奴なの?」と思った方は、本編を読んでみてください。

〇星川証―――常時マーダーフェイスのハイパーシスコン律術士。モブに厳しいスラム育ちの甲斐もあり、立派なひねくれ者になった。姉の詩を失うことを心から恐れているようで、その巨大激重感情が乗っかったバトルは必見。

〇星川詩(うた)―――証が遺された家族を死んでも守ろうとするインフェルノシスコン男子だとすると、こちらは生き残ったことがトラウマになっている様子のガンガン行こうぜなサバイバーズ・ギルト女子。(姉の)いのちだいじにな証との姉弟喧嘩は必見。

〇リンゴ―――耳付きのお子様。それ以上はすべてがネタバレになるので書けない憎い奴。

〇水波漣(みなみ・れん)―――やべーやつその1。口調からしてヤバいのに、あろうことか医者を名乗っている。さらに困ったことに医者としての倫理観はある。

〇招鳥春譜(おきとり・はるつぐ)―――やべーやつその2。最年少律術士のイケメンだが、この世界観でただの爽やかイケメンで終わるはずもなく、美少女の詩よりも、マーダーフェイスな証に執着している。しかも、なんかやべーことに恍惚と誘っていた。


真夏の抜けるような青空とゲリラ豪雨のように、技術革新の進んだ街と歩道橋に蔦の絡みついたスラム街を行き来する世界観がとても楽しいです。読んでみてください。