第10話 回想 その1
学校は楽しい。
僕は心のそこからそれを思っていた。
仲のいいクラスメイト。親友。幼馴染。そして、好きな人。
充実していて、それでいて十分な程に僕はジュニアハイスクールを満喫している。
「おはよう‼︎」
「…………ああ、おは」
男子の中でいつも僕がいるグループに声をかけて、話の輪に入る。彼らは一度僕をいちべつすると、さりげなく輪に一箇所穴を開けてくれる。
いつも通りの日常だ。
自然に会話に入りながら、教科書類を出す。時々話すとみんな笑ってくれる。
それだけで僕は自分が肯定されたような、そんな気がした。
しばらくすると、蓮架がやってきて、僕の背中を叩いた。
「おはよ!ゆうちゃん」
「あー、おはよー、はーちゃん」
蓮架に周りには女子のグループがいる。きっと蓮架が僕らのグループに合流するために引き連れてきたのだろう。騒がしいのは嫌いじゃないので、僕らはすんなりと受け入れた。
「おはよ、蓮架さんたち」
爽やかイケメンな僕の親友の
淡河はクラスのリーダーのような立ち位置にいる。だからこそ人望も厚いのだろう、彼が何かやり始めるとみんなやり始める。
挨拶が一通り終わると、みんなはさっきよりも大きな輪で話をし始めた。
僕も積極的に参加する。
駄弁るのは楽しい。きっと時間の区切りさえなければ僕らは何時間でも話せてしまうだろう。僕はこういう関係を気に入っている。
×××
給食。僕は食缶を取りに給食室へ向かっていた。来年からの高校生活からは給食がなくなるらしいけれども想像もつかない。
「もう来年からは高校生だね」
僕は一緒に歩いていた
「それなー、優はどこ受けんのー?」
にっこりと笑って夜川さんはどう僕に質問した。話せるだけで少しウキウキしていた。なんてったって僕は彼女が好きなのだ。
意識し出したのは中二の時。なんとなく好きになったような気がする。いやもしかするともっと前からだったかもしれないが。
「んー、まだ決めてないかなー。夜川さんは?」
「あたしはまあ、適当なとこ受けっかなー。ほら、あたしそんな頭よくないし」
「ふーん……」
意識し始めると話が続かない。みんなといるときは普通にしゃべれるんだけど。
やっぱり恋って難しいなぁ。
×××
「結構いいかんじじゃーん、優と湊」
そう言って淡河は僕の肩に手をかけた。あの会話を見ていたんだろうか。
「そうかなぁ……」ニヤけが止まらなかった。
「ワンチャン告ればいけるクネ?」
「えー……」
告白なんて考えてもいなかった。本気で言ってるんだろうか?
「さすがに今告ってもフラれるだけだろー」
笑いながら僕はそう言う。すると淡河は一瞬不満そうな顔をした後、しかしすぐに元の顔に戻して言葉を続けた。
「いや、今だからいいんだよ!ほら、熱は熱いうちになんちゃらって、あるじゃん!」
「いや、だけど、、、」
思わず僕は渋ってしまう。
「いや、いけるって…………あーそう!前夜川お前のこと好きって言ってたし!いけるよ!」
そう言って淡河は僕の背中を叩いた。
しかしどうしようか。夜川は僕のことが好きっぽいし、ならいけるんじゃないだろうか?
「ん〜〜」
悩んでしまった僕を急かすように淡河はもう一度僕の背を叩くと
「いけるって!今日やっちゃえばお前もう彼女持ちだぜ!」
淡河は期待してくれている。裏切るのも気が引けるし、やるしかないか。
けどしかし、夜川は僕のこと好きっぽいして、デメリットはない。ならいけるのでは?
「…………やるか!男みしちゃるぜ!」
僕がそう元気よく言うと、淡河は早速と夜川の方へ駆けていった。話は今日やるってことだし、きっと集合場所とか伝えにいったんだろう。
しばらくすると、淡河は戻ってきた。
「待ち合わせは体育館倉庫前ね。そこがお前の決戦の地だ。頑張れよ!」
それだけ言い残して淡河は僕の元を離れた。
どうやら腹を括る必要があるらしい。
×××
放課後体育館裏。僕はそこで待っていた。
いざきてみるとなかなか緊張するものである。
僕がどう想いの丈を伝えようか悩んでいると、夜川さんがやってきた。
そして僕の前で止まる。
「どうーしたん?優」
「実は今日、伝えたいことがあって……」
「ん?」
そう言って彼女は首を傾げた。可愛い。
「その、僕、ずっと前からあなたのことが好きで……。ずっとあなたのことを考えてました…」
それだけ言って僕は一息吸う。夜川さんはニッコリと笑って聞いてくれていた。
「僕のそばにいてくれませんか⁈‼︎」
頭の中が真っ白になる。空気が静まっていた。
「…………うん、優…」
「‼︎」
やっぱり夜川さんは僕のこと好きだったんだ……‼︎
これで僕も彼女持ち
「キモい」
になれる……
………………ぇ?今なんて…?
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