世界すぐ終わる

 何度目の目覚めだろう。体は動かず指すら重い。数を数えながら呼吸する。いち、に、さん。それ以上を数えるのはやめた。頭はまだ覚めない。

 昨日世界終わったんじゃなくて?

 眠りからの復帰ではなく終了からの起動だからこんなに重いんだ。途切れ途切れの記憶。受信の下手なラジオ。稼働限界を越えたコンピューター。ねぼすけの二度寝、三度寝。私の体が重いのではない。世界が意識を失っていたから、私たちも接触不良で消えたり点いたりする電球みたいになっているんだ。

 世界が消えてしまえば私たちも消えてしまうので、厄介な話なんだけれども、こんなものだと思ってしまうとこんなものだ。ポンコツな世界だ。

「そうだよ、ねえ」

 声が出るようになったので話しかけてみた。横に人が腰掛けていたはずだが消えていた。空白にはすぐに砂が撒かれて穴が埋まり景色を寄せ集めて色が乗るので、誰かがいたのか何かがあったのかもう分からなくなった。

 制服のスカートをぱたぱたさせて風を起こす。雑に作った風だが気持ちいい。体も十分に血が回った。講義室に戻ろう。四限目が終わればお昼だ。

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