第2章 見知らぬ世界と見たことのある顔

 光を遮る深い闇の中、球状フィールドに包まれた一人の少年が漂い続ける。視線を動かしても変わらない景色、平衡感覚すら失われた中で一瞬前に起こった出来事が脳裏を駆ける。

 目の前で砂になった博士、自分に向けられていた敵意、そして願い。

 それらはトゲトゲとした感覚になり心に突き刺さっている。

(ぼくは何のために居るのかな)

 言葉にならない想いは心に堅い堅い壁を作り出していく。

 時間の流れすら感じられぬ現象が不意に急激な変化をもたらした。

 まばゆい光が視界を包み意識を白い闇が埋め尽くす。

 視界は霧が晴れるかのようにゆっくりと色を取り戻し、周囲の光景が浮かび上がる。

 青々と茂った木々、その合間から見える薄い水色、身体にふれる柔らかな感触に視線を移すと茶褐色の地面が目に入った。どうやら横たわっているらしい。

「これが土、あれが、空? 初めて見たような気がする。向こうの世界では……? 向こうって何だっけ? 記憶がもやもやして分からない。何か大切な事があった気がするんだけど」

 思考がぐるぐると回っているものの、起き上がって周囲を確認しようという考えが生まれない。

「空って、こういう色だったのか、なんだか心が穏やかになる」

 考えが働かないというよりは、見惚れているというのが正しいようだ。

 少年は気がつかない。彼を取り囲むように無数のうなり声が近づいていた事に。


 ザッザッと音を立てながら一人の少女が木々の間をすり抜けていく。

 山道だというのに白い修道服に身を包み、長い黒髪をなびかせながら迷いのない歩みで奥へ奥へと進んでいく。

 年の頃なら16~7位、とても山の中に用事があるとは思えない。

「全く、鈴音は、探知するのはいいけど、面倒ごとは全部あたし任せなんだもの、インドア派もたいがいにして欲しいわ」

 ぶつくさと言葉は漏れているが歩く速度は落ちず。むしろ速くなっているようだ。

 木々が作り出す日陰のトンネル、その先にひときわ開けた場所が見えてくる。

「そろそろ目的の場所だけど……はて? ここってこんなに開けてたっけ?」

 山の中に不自然に広がるぽっかりとした空間、それは抉り取られたような印象を見ている者に感じとらせる。

 まばゆい光に照らされた広場のただ中に一人の少年が横たわっていた。

 それを取り囲むようにうなり声を上げ続ける6匹の野犬達。

「どんな異変が待っているのかと思えば、野犬に襲われてる男の子が一人かあ。何とも意外性のない展開ね。魔物とか怪物とかが居るかと、ちょっとドキドキしてたのに」

 がっくりと肩を落とした少女はやる気なさげに右手をかざす。少年の少し上、野犬達のちょうど中心部くらいの位置に炎が弾けた。

 唐突に沸いて出た炎を目の当たりにした野犬はうなり声を止め、しっぽを丸めながら後ずさりしつつ離れていく。

 そこに追い打ちとばかりに現れる火の柱。危険を感じとったのか6匹の犬達は散り散りになって居なくなった。

「さて、こんな場所に倒れてるなんてどんな間抜けさんだろう」

 若干熱の残る空気を身にまとい、少年に近づくと注意深くその様子を眺める。

 野犬に噛まれたであろう衣服の破れが3カ所、白い肌が見えてはいるものの、血は流れてない。

「襲われてた割には傷一つ無しかあ、結構運がいいみたいね。……ん~どこかの制服みたいだけど見たことないデザインだわこれ。それで、みてくれの方は、っと」

 視線を顔に向けた途端ドキッと心を掴まれる感じがした。

(ちょっと、なにこれ、定番と言えば定番だけど、顔立ちが整っていて、幼く見えるけどそこが何ともいえず可愛らしいというか……)

 しばしの間、動くことすらせずに少年の顔を眺め続ける。

「――はっ! 見惚れてる場合じゃ無かったわ。どうやら気を失ってるみたいだけど、どうしたものかしら」

 ちょこんと両膝を抱えるようにしゃがみ込んで、人差し指で少年の頬をツンツンしてみる。

 じーっと反応を眺めているけど動く気配もなし。

「う~んこの少年、死んでるわけじゃないわよね?」

 ツンツンから頬全体をなでてみたり、おでこに手を当てて熱を計ってみたりと、その行動は次第にエスカレートしていく。

「起きないわね。ショックで気を失ってるとか、もしかしてどこぞの童話とかみたいに目覚めのアレをしないと目を覚まさないとか? まっさかね~っ、――試してみるか?」

 冗談とも本気とも取れない台詞を吐きながら、指先は少年の唇へと近づいていく。

 あと少しで触れるというその時、閉じられていた少年のまぶたがパッチリと開いた。

「うわっ、起きた」

 あまりの瞬間だったからか、コテンと後ろに転がりつつ距離を離す。

 セクハラ同然のような事を行っていた少女は、気まずい表情を浮かべつつ這いながら近づいた。

「ど、ども~、目醒めた?」

 若干声が上ずってしまう。それに反応するかのように少年の視線は少女をとらえる。

 そのまましばらく見ていた彼は、表情を曇らせ身体を後ずさりさせた。

「ん? あたしの顔に何か付いてる?」

 あんまりにも無遠慮にさわり過ぎちゃったかな。等と考えながら表情を眺めていると、どうやら違うらしい。

「――もしかして、あたしが怖いの?」

「……多分」

 短い返事が彼から漏れる。後ずさりした状態のまま少女を見ているその表情は、明らかに恐れている物だった。

「はて? 初めて会った筈なんだけど、違う?」

 問われた彼は記憶を探しているのだろう。俯きながら考え込んでいる。

「まっ、いっか、あたしは綾香、あんたの名前は?」

 なるべく怖がられないようにニッコリ微笑みながら問いかけた。ふと、こちらを見た彼の表情から恐れの色が消えている。

「えっと、その、分からないみたいなんだ」

「分からない? ……もしかして記憶喪失?」

 こくりと頷くその姿になるほどなあ、と理解した。確かに記憶のない状況で、やけに馴れ馴れしい人がいれば警戒するか。

「記憶がないって事は身よりも、どうしていいかも分からないって事よね。……う~ん。怒られそうだけど、いいか」

 一人で納得した綾香は立ち上がると少年に向かって前屈みになる。

「とりあえず。家にでも来る? どんな身の振り方するにしても、当面生活する為の宿くらいは無いと不便でしょ?」

 左手を差し出しながら優しく問いかけた。断られてもいいか、という位の軽いお誘い。

 まあこの子可愛いし、等という少しばかりの下心が隠れていたりするが、微笑みでごまかしつつ彼の反応を待つ。

 後ずさった体勢のまま、差し出された手と綾香の顔を交互にみつつ、彼は戸惑っていた。

 かすかに残る記憶の陰は、自らに恐怖を植え付けた少女のもの。自分が消えてしまうという恐怖が自然と身体中を駆け巡る。

 ……なのに、彼女の笑顔はどこか柔らかく、恐怖心を霧の中へと包み込むような雰囲気があった。

 わずかながら彼の左手は伸びていく。感じたことの無かった感覚に突き動かされるようにゆっくりと――。

 二つの手がそっと触れあった。優しく握ると綾香は彼を立ち上がらせる。

「じゃ、いこっか」

 軽い口調でそう告げるなり来た道を下っていく。風のながれが黒髪を撫でるように揺らしていた。

 活発な雰囲気を持つ少女と、幼さが多分に残る少年、手をつなぎながら歩く姿はさながら姉と弟のように見えるかもしれない。

 木々によって作られた日陰のトンネル、さわやかな涼しさに身を包まれながら道を下っていくふたり、やがて日の光が強くなり熱波のうだる領域が広がっていく。

 ちょうどトンネルを抜けた辺りだろうか、強い風が吹き上がった。

「んきゃ!」

 短い悲鳴と共に綾香は両手でスカートを押さえつける。

 その場を包む長い沈黙、スカートを押さえた体勢のまま、ゆっくりと少年の方へ振り返った彼女は顔を真っ赤にして震えている。

「見たでしょ?」

 ぼそりと一言、少年はその言葉が自分に向けられている物だと気づかずに首をかしげている。

「だから、見たんでしょ?」

「……いったい何を?」

 問われた事にようやく気づいた彼ではあるが、何のことを言っているのか、何故彼女が赤くなって居るのかですら見当が付かない。

「顔が赤くなってるみたいだけど、何かあったの?」

 心底不思議そうに問う少年の姿を目にした彼女は気がついた。

(表情は読み取れるけど、どんな感情をしているのかこの子には分らないんだ)

「何でもないわ。いくよ」

 再び手を握った彼女は歩き出す。

 山道を過ぎ、ぽつりぽつりと一軒家が姿を見せ始めた頃、一際大きな館が姿を表わした。

 中央にそびえる塔のような八角形の壁、周囲を包むように配置された部屋が城のような印象を見る者に与える。

 門を抜け、高い塀に囲まれた敷地内へと進んでいく二人。館の前に立った綾香はぴたりと歩みを止めた。

「……ふう、やっぱり緊張するわ、開口一番、何を言われるか」

 呟いた彼女は両手で自分の頬をパチンと叩く。

「よし、いくか」

 意を決して扉を開ける。

「ただいま。……うっ」

 入った途端に彼女の言葉が詰まる。視線の先に立っていたのは白い修道服で身を包んだ一人の少女、肩口で切りそろえられた髪に整った顔立ち、やや幼い印象を抱かせる丸メガネを身につけた少女は、ジト目で二人を見ている。いや、正確には綾香を眺めていた。

「あきれた」

 開口一番に呟かれたのは短い一言だった。

「異変を調べてきてと、お願いはしたけど。まさか男の子を連れ帰ってくるなんて」

 少年をちらりと横目で見たものの、興味なさそうに再び綾香へ視線を戻す。

「貴方好みの見た目ではあると思うけど、よく考えもなしに連れてきたわね」

「あ、あははは」

 乾いた笑いを浮かべつつ人差し指で自分の頬を掻く綾香。

「それに、彼が異変の大本でしょ。……まさか異変そのものを連れてくるなんて想像もしなかったわ」

「――へ? そうなの?」

「綾香、貴方はもうすこし状況を把握することを学んだ方がいいと思うわ。それで、どうしたいわけ? 聞かなくても想像できるけど、貴方の言葉で聞かせて」

 先ほどまでとは印象の違う鋭い視線が綾香に突き刺さる。

 視線を反らさず真っ直ぐに見据えた綾香はゆっくりと口を開く。

「ほっとけないのよ。彼不思議な雰囲気もあるし、確かに見た目も好みではある。それ以上に儚く見えたのよ。だから何かできないかって思った」

 言葉に耳を傾けながらも視線は綾香から離さない。

「……そう。その結果起こる事も引き受けるという事ね」

 少女が吐き出す静かな問いかけに首を縦に振る。

 それがきっかけとなって少女は綾香から少年へと視線を移した。

「そこまでの覚悟があるならいいわ。ただ、準備が終わるまで彼を館から出さないでね。それともう一つ、面倒を見ると決めたのなら、貴方に割り当てた部屋に彼を住まわせて」

「そのつもりだったけど、……何で?」

「夜に貴方が襲わないとも限らないでしょ? そんな時の声とか耳に入れたく無いわ」

「鈴音、あんたねえ」

「冗談よ。本音は、よく分らない人に自分のことを知られたくないだけ。最悪の事態を考えた用心という事よ」

 綾香に視線を移した少女は、声のトーンすら変えず淡々と言葉を紡ぐ。

「ああ、綾香、館の案内ついでに着替えを用意したら」

「そうね、さすがにこのままじゃ、堅苦しくて」

 彼女は綾香の台詞に思わず目を見開く。

「……貴方、彼の面倒を見るのでは無かったのかしら? ……はあ、少しでも期待した私が愚かだったのかしら、彼の服装を見て何か思い当たらない?」

 鈴音の言葉に促されるようにまじまじと少年を見る。

 白いワイシャツに紺色のズボン。特に変なところは……あった。

 野犬に襲われた跡だろう、シャツとズボンの両方に引き裂かれた痕がいくつか存在している。

「気づいたみたいね。と言うか、なぜ初見の私ですら気づく事なのに気にとめないのかしら」

 眼鏡の中から覗く鋭い視線にさらされ、引きつった表情を浮かべ後ずさる。

「そ、そうね。でも、私、男物の服持ってないんだよね……」

 苦し紛れに漏らす綾香の台詞に盛大なため息が響き渡る。

「貴方ねえ。そんな調子で、よく彼を引き取ろうなんて言えたものね。――もういいわ、服に関しては私が用意しておくから、綾香は館の案内をしてきなさい」

「は、はい」

 ずずいっと迫ってくる鈴音の迫力に掠れた声で返答した。

 そのまま少年の手を握ると館の奥へと滑り込んでいく、そんな綾香の姿を無表情で彼は眺め続けていた。

「なんか、ゴタゴタしちゃって悪いわね」

 廊下を歩きながら済まなそうに言葉を漏らす。その意味するところが何なのか分らないまま、彼は周囲の装飾を眺めていた。

「ん? 何か珍しい物でもある?」

 返事がないことを不思議に思い、振り向いた彼女はそう問いかける。

「壁に飾りがついてる」

 城のような外観にあわせて館内も西洋系の飾り付けがされている。だからといっても普通に想像出来る位にあっさりとした装飾だ。

 館の管理人といってもいい祖父の意向で、過度の飾り付けは控えるように造られている、鈴音も彼女もそれを変えようと考えたこともない。しかし、彼にとって控えめの装飾ですら物珍しい事だったらしい。

「飾りのついている壁を見るのは、多分初めてだと思う」

「まあ、記憶喪失だものね、貴方」

「記憶喪失とはいっても、どんな生活をしていたか、とかは朧気ながら残ってるかな。前にいた所は飾りなんて無かったと思う、印象にあるのは白い壁だけかな」

 装飾に目を凝らす彼の言葉に、何かいびつな物を感じる綾香。

「まあ、いいわ。最初にここね」

 扉の一つを開いた先に広がっていたのは、広めの部屋に食器棚やソファーが置かれた空間、いわゆる食堂と言うべき場所だ。

 奥の方につながる扉の先にはキッチンもあったりするけど、さらっとした説明でいいだろう。

「見て判るだろうけど、食堂よ。奥には調理場もあるけど……っと暗かったわね」

 部屋の薄暗さに気づいた綾香は壁にあるスイッチを入れる。2~3回の点滅が起こった後に薄緋色の灯りが部屋を彩った。

 シャンデリアからの灯りなので部屋全体を明るくするにはいささか力不足の感もある。

 その光景を目にした彼は驚いたように綾香の方へ視線を送る。

「ん? どうしたの?」

「今、何をしたの? 急に明るくなったけど」

「……はい? スイッチ入れただけよ。そうしないと電気付かないじゃない」

 質問の内容に思わず首をかしげる彼女、変な行動もしてないし普通のことだと思ったんだけど。

「初めて見た」

 スイッチをまじまじと眺めながらぽつりと呟く。

「どんな生活してたのよ。アンタ、電気も通ってない田舎にでも住んでたのかしら?」

「田舎がどういうものか判らないけど、電力はあった。……ああ、一つ質問があって。食堂って何する所?」

「は~~~!?」

 少年の漏らしたあまりにも予想外の質問に思わず大声を上げる。

「ちょっと、食堂っていったら食事する所でしょうが」

「……そうなんだ。それで食事って何?」

「うわあああああ」

 オウム返しの質問に思わずうずくまって頭を抱える綾香。

「食べないでどうやって生きてるのよアンタは!」

 声を荒げて叫ぶ彼女。そんな姿を彼は目を丸くしながら眺めていた。

「そうか、食べないと生きていけないんだ。知らなかった」

「は、ははははは」

 鈴音に言い寄られた時とは別の意味で、顔を引きつらせながら乾いた笑いを浮かべる。

 このときに悟ったのだ、この館案内は途方もなく先が長いのだと……。


 あれから2時間も経っただろうか、リビングのソファーに倒れ込んでいる綾香の姿があった。

「だらしないわよ。いくら館の中とはいえ少しは恥じらいという物を持ってもらいたいものね」

 部屋に入るなり、足すら投げ出し、周りを気にしない彼女の姿を見た鈴音は、静かに言い咎める。

「あ~鈴音、居たのね」

「ひどい格好ね。館の案内は済んだの?」

「な、何とかね。物を知らない人に説明するのが、こんなに疲れる物だとは思わなかった」

 足を正して上半身を起こした綾香は鈴音に向かって息を吐く。

「物を知らない? そうは見えなかったけど」

「正確には違うわね。知識としては知っていても、何でそれをしないといけないのかっていう理由と結びついて無いのよ。人間らしい扱いされてなかったんじゃないかって思うほどにね。テレビを知っていても何に使うか判らない。トイレも知ってるのに使う意味やその時の行動すら知らない。ってなぐあいよ」

「……そう、それで、彼は?」

 立ったまま部屋を見渡すが、鈴音の視界に問題の彼は映らない。

「あたしの部屋、その隣にある空き部屋に居るわ」

「判ったわ」

 くるりときびすがえした鈴音は、だるそうな綾香を残しつつリビングを後にする。

 ささやかな灯りによって照らされる廊下を進み階段へ。そのまま2階へ進んだ彼女は奥まった部分にある一部屋へと足を向ける。


 リビングで二人が話していた時、彼は部屋の窓辺に佇んでいた。

 青空に浮かぶ数々の雲、それを惚けた表情のまま眺め続けている。

 彼は不思議でしょうがなかった。

 何故あの時、綾香に手を差し出された時、その手を取ることが出来たのか。

 身体は怯えていたのだ。それはそうである。彼自身の記憶には残っていないが、転移前の世界で彼を殺そうとした存在。それと瓜二つだったのだから。

 記憶ではなく身体に刻まれた恐怖の記録、それを何かがはね除けた。

 流れる雲や空の色合いに目を奪われたまま、答えの出ないであろう謎を自らに投げかけ続けている。

「何をしているの?」

 窓から外を眺め続けている彼を不思議に思ったのだろう。部屋に入って来るなり、やや大きめな声で問いかける鈴音。学生服らしき物を両手に抱えながら、音も無く部屋の中へと歩いていく。

「……空を、見ていたんだ。多分初めて見る光景だから」

 言葉に詰まったのは恐怖心からだろう。鈴音が不機嫌な表情をしてる訳ではなく、普通に、いや無表情で立っているだけなのだが。

「そう……、着替え、ここに置いておくから、食事の時には着替えて来て」

 伝えたい事だけを簡潔な言葉で告げた彼女は、来た時と同じく音すら立てずに部屋から去っていった。

 部屋に残ったのは飾り気のないベットの上に置かれた制服、綺麗にたたまれたそれは、彼にとって場違いな物として映っていた。部屋に佇む自分と同じように……。

 再び窓の外へと視線を動かした彼はその光景に目を奪われる。

 雲の移動か、光の差し方によるものかは判らないが、先ほどまで目にしていた風景とは印象が変わっていた。

「僕は動いてないのに、見える物が変わった?」

 生い茂る木々にしても、建物も空も、ただそこにあるだけ。なのに一瞬視線をそらしただけで変化が生まれている。

「なんだろう、興味が沸くというか、心がむず痒くなるというか……これが楽しいって事なのかな」

 自ら口にした言葉に心がふわっとした感覚で満たされる。

「あれ? この感覚、あの時にも感じたような……」

 綾香という女の子から手を差し出された瞬間を、つないでいた方の手を眺めながら思い出してみる。

「――ん、ん~? ちょっと違うような気がする。でも心が動いたのは確かみたいだ」

 視線を再び外へと向けた先には夕暮れに染まる町並みの姿が映っていた。

「すごいなあ、僕の知らなかっただろう世界は、こんなにも【楽しい】に満ちていたんだ。これからも見ていく事が出来るのかな?」

「あきれた……未だ着替えてなかったのね。そんなに気になる光景だった?」

 さして気にもとめていないような声色で現れたのは鈴音だった。彼女は壁にあるスイッチを入れて、部屋に灯りをともす。

「うん。見ていて【楽しい】と思えるよ。でもこの表現であってるのか判らないかな」

「貴方がそう感じるのなら、間違いでは無いと思うわ。――そうそう、綾香が呼んでいたわ。食事が出来たみたい。ただ、味の方は期待出来るか判らないけど」

「味? それは何?」

 小鳥のように小首をかしげる少年を目にした彼女はクスリと笑みを漏らす。

「なるほどね。確かに綾香の言ったとおりだわ。その質問の答えは自分で見つける方がいいと思う」

 くるりときびすがえした彼女はそのまま部屋の外へと歩いていく。

 扉を出るか否かと言うところで一言。

「早めに降りてきた方がいいわよ。綾香おすすめの味が変わってしまうから」

 

「おっ、戻ってきたわね。どうだった? 彼」

 腕まくりのエプロン姿、長い髪を後ろに結わえた状態でいそいそと料理を運ぶ綾香。

「飽きもせずに窓から外を眺めていたわよ。そうしているだけで楽しいのだそうだけど」

 料理の並べられたテーブルには座らず。壁際にあるソファーに座ると綾香の姿を視線で追う鈴音。

「それにしても多すぎじゃないかしら?」

「ん? そうかな? 彼、食べそうじゃない?」

「貴方がそう感じるのならいいけど。イメージに囚われすぎだと思うわ」

 いろいろと綾香に対して口を挟む割には手伝おうとは一切しない。

 それは関心がないと言うより手がつけられないのである。台所は片付けられていない調理器具で溢れかえっており、床の所々に小麦粉らしき粉が散らばっていたりする。

 散々たる状況から目を背けた先に例の少年が現れた。足音を立てていた様子もなく。いきなり現れたような印象を感じる。

「あら、似合ってるじゃない。それ、うちの学校で使われてる制服でしょ?」

 周囲の状況に敏感な鈴音ですらついさっき気づいた位なのに、料理の準備に意識をとられていた綾香が気づいた事に目を丸くする鈴音。

「……ええ、そうよ。男性用の服なんて無かったから、貴方が案内している間に学校まで取りに行ってたの」

 二人が言葉にしたとおり、学校などで指定されているような襟首のしっかりとした紺色の制服姿だった。

「えっと、着替えて来たんだけど。これはどうしたらいいかな?」

 急に向けられた好奇の視線に戸惑いながら声をかける少年。手には折りたたまれた服が握られていたりする。

「私が預かるわ、直せるかどうか、仕立屋に出してみるから」

 少年の近くまで歩み寄って手にした服を受け取る鈴音。その顔が苦しげに歪む。

「貴方これを着てたのよね?」

「うん。何か変だった?」

「……変というより、重くなかったの?」

 受け取った服らしき物を部屋の端にある椅子の上に置いた途端、ギシッという鈍い音が耳に届く。

 それがどれだけの重さであるかは音を聞くだけで想像が出来るだろう。

 綾香は料理を運ぶ手すら思わず止めて目を大きく見開いた。

「重いという感じは無かったよ」

 きょとんとしながら答えた彼は綾香の方へ身体をむけ、テーブルに並べられた物を眺めていた。

「この服に関しては後でいいとして、とりあえず席に座ったら?」

 口にした鈴音は一瞬、椅子が耐えられるかと言う事が心配になったが、テーブルにむかって座った彼の姿を目にして、ほっと息を吐く。

 もしかしたら彼自身も凄い重さをしているのではないかと思ってしまったのだ。

 彼が座るのに合わせてエプロンを外しつつ、向かい合うように座る綾香、その隣に腰を落ち着ける鈴音。

「さて、そろったし、食事始めましょうか?」

 軽い口調で食事を促した彼女たちの前には数多くの料理が並んでいる。

 揚げた鶏肉に甘酢風味のあんかけを纏わせた物、キャベツやピーマン等の野菜類と豚肉を辛めの味噌で味付けして炒めた物、挽肉をボール状に丸めて焼き上げた肉団子等、主に中華系の料理が多いだろうか?

 それらを見渡した鈴音は料理した当人に視線を向ける。

「数が多いのもあるけど、偏りすぎではなくて? 野菜と肉類のバランスが全く取れてないわ」

「そう? 一応野菜物もあるでしょ」

 ご飯をよそいながら、不思議そうに首をかしげる調理者。まあ彼女の言うように肉物、野菜物(肉を含んだ)や、スープにご飯とそろっているようには見えなくもない。

「さあ、食べて」

 山盛り気味によそわれた茶碗を少年に渡しながら食事を促す綾香。

 その瞳は期待に満ちた物があふれている。

「……食べる。どうすればいいのかな?」

 渡された茶碗を手にしたまま、彼は困った様に眉をひそめていた。

 それはそうだろう、食事等という物は経験も無ければ聞いたのもつい先刻のことだ、単語としては知っていても何をすることなのか全く理解出来ていない。

 いち早く彼の困惑を見抜いたのは鈴音だった。

「私達のすることを真似るといいわよ」

 彼女は箸を使い炒め物を取り皿に取り分けると自らの口へ運んでいく。

 口に含んだものをよく租借して飲み込む、その姿を目にした彼は自らも同じように炒め物を口に入れ同じように飲み込んだ。

 一度見ただけの行為を、意図も簡単に真似る彼の姿に、鈴音は不思議な物を感じる。

食事をしたことも無い人間が、上手く箸を使いこなせる物なのかしら?

 そんな疑問もすぐに解けていく。

(なるほど、本当に真似ているのね。動きから順番まで全部)

 口に入れた物の租借回数や運ぶ物の種類、箸の持ち方や癖に至るまで、全く同じ動作を行っているのだ。リアルタイムで……。

(不思議な人、悪気はないのだろうけど、全く同じ動きをされるのって変な気分ね)

「なんか鏡でも見てるかのような動きね。端からみてると怖いわよ」

 全く同じタイミングで動く二人を目にした綾香は、食事の手を止めてげっそりと呟く。

「真似たらいいとは言ったけど、いつまでも真似続ける必要はないと思うわよ。食事の仕方を覚えたのなら自分のペースで食べるといいわ」

 指摘された少年は思わず動きを止めて鈴音の方へと視線を向ける。

「そういう物なの?」

「貴方のことだから、こちらの動きを真似る事が食べる行為なのだと思ってしまったのではなくて?」

 問われた彼は静かに頷いた。

「やはりそうなのね」

「違うんだね。食物を口から摂取するって行動が食べると言う行為なのか」

「あんた、本当に何も知らないのね。まさかここまでとは思わなかったわよ」

 食事を理解した少年に向かって綾香はげっそりと呟く。そして何を思ったのか鈴音の方へと向き直る。

「ねえ、珍しく面倒見がいいじゃない? もしかして彼の事気に入ったの?」

「綾香が何もしないからでしょ。これから一緒に生活を行おうと言うのに、基礎的な事も判らないままではこちらが困る事になるわ」

 彼女の冷やかしにも眉一つ動かさずに淡々と言葉を紡ぎつつ、紅茶の入ったカップを口に運んだ。

「ほんとにそれだけ? 他意はないと?」

「貴方が彼を連れてきたのでしょう? もう少し細かな事に気を配りなさいな。私を茶化す事に意識を向けるのでは無くてね」

 ジト目を向けつつ事務的な口調で鋭い一言。

「うっ……痛いとこ突いてくるわね。それはそうと、食事については判ったのよね?」

 不意にかけられた言葉に振り向きつつ頷く少年。それと共にカップを手にしていた鈴音の手が止まる。

 ぴくっ、と身体を振るわせた後、何事も無かったかのようにカップを口に運ぶ。

「味はどうだった?」

 瞳を輝かせつつワクワクした様子で問いかける綾香。それとは対象的に小刻み身体を震わせる鈴音。その表情は張り付いた様に変化しない。

「――ん? 味、そうだね」

 即答するかと思われた彼は、なにやら考え込むと綾香の目を見て一言。

「いろいろな刺激があって、楽しいと思うよ」

「……は!? た、楽しい?」

 ブフゥーーッ。

 少年の言葉と共に口に含んでいた紅茶を勢いよく吹き出す鈴音。

「ちょっと、何やってんのよ。きったないわね~」

 向けられる避難の声に左手のジェスチャーで抑えてと答えつつ、手にしたナプキンで口元を拭うと、席を立ちソファーにコロンと横たわった。

「何が抑えて抑えてよ。初めてじゃない。鈴音が食事中に吹き出すなんて……いや、それよりも、楽しいってなに?」

「食事して感じた事を答えただけなんだけど」

 言葉の意図を聞き返す綾香に正直な答えを返す少年。このやりとりがトドメになったのか、ソファーにころがっていた鈴音は声をあげて笑い出す。

「ふふふ、あはは、綾香の料理は刺激があって楽しいのよね。くくくっ――」

「だああ、笑うな。あんたの表現だと、あたしの料理がとんでも無くひどい事になるでしょうが!」

「ま、間違っては居ないと思うけど、いろいろな刺激があって〈楽しい〉のだから、ふふ、ふふふ」

「楽しいの部分だけ強調すな!」

 綾香の反応にますます楽しそうに声をかける鈴音。そんな二人を少年は何事かと眺め続けている。

「ま、まあ冗談は置いておいて、綾香、あなた忘れているのではなくて?」

「何よ」

 笑いを抑えた鈴音の言葉に、彼女は苛立ちぎみな返答を向ける。

「彼は初めて食事をしたのでしょう?」

「そうらしいわね」

「だったら気づきなさいな。彼は味に関しても体験したことがない感覚なのだから、あなたの期待する答えが貰えるわけないでしょう?」

 諭すような言葉に、はっとした表情を見せる綾香。

 そうなのだ、初めて体験したことを何とか表現しようとした少年と、料理の感想として美味しいか否かの返答を期待した綾香、双方の話が噛み合うわけもない。

「――なるほどね。言われてみればそうだわ。……ん? ちょっと鈴音、あんたこうなるのが判ってたわね?」

 納得しかけた綾香は、眉根を寄せつつ、ソファーに転がる少女へと視線を送った。

「え、ええ、判っていたわ。ふふふふ」

 先ほどのやり取りが思い出されたのか、鈴音は再び笑い始める。

「判っていて黙ってるなんて、趣味悪くない?」

「そうかしら? こんなに楽しいイベントを目の前で見られるかも知れなかったのだもの、それは黙っているでしょ? 綾香が同じ状況にいたら同じ事をしていたのではなくて?」

「うっ、……確かにしないとは言えないわね」

 ソファーから起き上がる様子すらない少女の一言に、思わず口を紡ぐ綾香。

 少しばかりムスっとした表情を浮かべているが、そこに険悪は雰囲気は漂っていない。

 少年にはその空間が不思議だった。彼の記憶、その片隅にある会話風景は、常に緊迫した物ばかり、怒りの表情があれば直接的に場を威圧し、言葉のたぐいも攻撃的な物ばかりだったような記憶がある。

(何故、こんなにも和やかな雰囲気で会話する事が出来るのだろう?)

 話の内容も特に意味をもたらす物ではなく、他愛のない出来事を取り上げただけ、なのに包み込むような柔らかさを感じることが出来る。

 それは少年にとって心地のいい空間だった。

 

 食事を終えて、自らに与えられた部屋へと、少年を戻らせた綾香は後片付けを行ってる。

 そこに鈴音の姿はなく。彼女は窓際のソファーでティーカップを傾けていた。

「ねえ、鈴音」

「判っていると思うけど、手伝わないわよ。そういう決め事でしょ?」

 かけられた声に間髪入れず鋭い言葉が放たれる。食事の時にあった和やかさは無い。

「判ってるわよ。そうじゃなくて、彼、どうだった?」

「そう、その話なのね。――そうね、彼自身は害が無いでしょうね。というより何かをしたいという意欲が感じられないわね」

「じゃあ、問題なさそうね」

 食器を片付け終えた綾香はエプロンと外すと鈴音の真向かいにあるソファーに腰を下ろす。

「何でそうなるの?」

「……え? だって害が無いんでしょ。さっきだってあんなに無防備な姿をさらしてたじゃない」

「彼自身は害が無いと言ったのよ。彼である限りは害が無いでしょうね」

 彼女が言わんとしている事の意味が分らず首をかしげる綾香。

「気づいてないのね。第一印象で彼が異変の元凶だって言ったのは魂が二つあったからよ」

「はっ? あり得ないでしょ。それ、猫でもあるまいし」

「そうね。普通の人間では決して起こらない現象だわ。それと彼の服、持ってみて」

 促されるままに、部屋の隅に置かれていた服を持ち上げようと手を伸ばす綾香。

「普通の服の感覚で持とうとすると身体を痛めるわよ」

「へ?」

 片手でとろうとしていた彼女は、鈴音の言葉に虚を突かれたように手にしたはずの服を取り落としてしまう。

 ミシッ。

 おおよそ服が落下したときには起こらない鈍い音を響かせ、床にめり込んだ服らしき物。

「何? これ、凄く重いんだけど」

「ええ、それと破けた部分を見てみなさい」

 言われるがままに視線を向けた先には、食い破られた袖の一部。一見すると異変など無いようにも見えるが……。

「野犬に食い破られている筈なのに、糸くずがない」

「そう、それは服ではなくて服の形をした何かなのよ。重さから考えると砂の固まりのような感じがするわね」

「こんなに柔軟に動かせる砂の固まりなんて無いでしょ? でも、得体が知れないと言うことは理解出来たわ」

 床に散らばった服もどきを畳み直した綾香は、ソファーへ戻ると、紅茶をたしなむ相方に視線を送る。

「何? その何かをしたんでしょ、と言わんばかり視線は」

「解ってるじゃない」

「はあ、しないわけ無いでしょ。自分の身に危険が及ぶかも知れないのだから」

 鈴音の言葉に身を乗り出して顔を近づける綾香。

「何したの?」

「遅効性の痺れ薬を彼が使う食器に塗ったわ、後は使い魔を部屋の外側に忍ばせてる」

「あっきれた。だから、食事中あれほど砕けた様子を見せられたわけか」

「あ、あれは、単純に抑えきれなかっただけよ」

 ジト目で嫌みを吐き出す綾香に対し、あらぬ方向へと視線を泳がせながら頬を掻く鈴音。

 意外な表情を見せる相方に思わず目を丸くする。

「めっずらしい。あんたが感情を抑えきれないなんてね。……得体はしれないけど彼が来た意味はあったかな」


 リビングで彼女達が雑談らしい事をしているとき、彼が戻っていた部屋の中。ベットに横たわっていた筈の彼は、その姿を変えていた。

 長い黒髪に整った顔立ち、胸元にはささやかなふくらみを携えた一人の少女が身じろぎすらせずに天井を眺めている。

 綾香達が目にしたら余りの美しさに息を飲んだ事だろう。別に彼女達の見てくれが悪いと言うわけではなく。同姓から見ても見惚れてしまうほどであるとすれば、いくらか理解出来るのではないだろうか?

 ただ、表情には感情がない。いくら美しかろうが、表情のない少女が身じろぎすらせず目を見開いているシーンなど、ホラー映画くらいでしかお目にかかれないだろう。

 因みに鈴音が塗った痺れ薬は全く効果を発揮していない。

 何しろ危害を及ぼす物質は体内に取り込まれた瞬間、分析、分解され、耐性を得るようナノマシンにプログラムが構築されている。

【次元間転移の完了を確認、状況把握のためネットワーク環境へ接続、……エラー、当次元内に有効なシステムが存在しない事を認識】

 実際少女は天井を眺めているのではなく、メモリー内で行われる機械的なコマンド表記が網膜に映し出されており、それを確認しているのだ。

【自己診断中……エラー発生、一部の記録域にアクセス不能、原因究明不可能。その他保有ナノマシン容量に大幅な減少を確認。現在最大値の70%、次元転移時過負荷による流出が主な原因と推測出来る】

(現状の確認はこんな物じゃな。身体機能に関しては戦闘域に達しないのであれば問題なかろう。じゃが記憶が失われているのは、恐らく、こやつの精神的なショックによる物じゃろうな)

 身じろぎすることなく耳を澄ます少女には、リビングで話をしている二人の声が遮られることなく届いている。

(やはり鋭いのう。あの二人は、我の居た世界でも侮れぬ存在ではあったがの。しかし同一種の個体であることには驚きを隠せぬ。物質から測定出来る年代としては西暦の1990年頃、転移前の年代から3000年以上は遡っている筈じゃ。生まれる時期が世界によって違うのか、それとも転生前の個体なのか解らぬのう。今のところ敵意はないようじゃし、我が表に出ることでいらぬ記憶が呼び起こされる事もあるやも知れぬ。しばらくは様子を見るだけでよかろう。――我が表へ出ずに済むのであればそれが一番良いのじゃがな)

 言葉に出すことすらなく、自らの願いを胸に留めた少女は、開いていた目蓋を閉じ、意識を身体の中へと沈み込ませる。……短い時間の後、少女の姿は再び少年へと戻っていた。

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