第2話 妹再生計画その2


 妹をどうにか再生して彼氏を作らせる。

 俺に課せられた使命だ。


 しかし、妹は手強い……今のままでは間違いなく責任を取らされる……責任……。


 俺はノーマルだ、そんな趣味はねえ!

 だから妹をなんとしてでも妹を再生してやらねば!


 とりあえず敵を知り己を知ればなんとやら、まずは分析から始めよう。


 妹は現在高校1年、名前は瀬戸口 せとぐち もえ趣味BL『(総受けに命かけてます)慎重148cm かなりの小柄、バスト74 ウエスト58 ヒップ78 っていうか兄ちゃんもう少しサバ読んで』「って、なんで俺はサイズとか言ってるんだ! おい耳元で喋るな!」


「えーーーーだってお兄ちゃんがぶつぶつと私の事を言ってるからついでに」


「それより、なんて格好してるんだ!」


「ん? 兄ちゃんが風呂入れって言うから」


「終わったんなら着替えてこい!」


「待って、今暑いから、折角久しぶりに入ってすぐに汗かいたら勿体ないでしょ?」


「だからってバスタオル1枚で部屋に入って来るな! 勿体ないってまた当分入らない気か! 毎日入れ!」


「ん? いつもの事じゃん、何意識してるのお兄ちゃん? ああ、みたいなら見せてあげようか!?」


「はずすなああああああ、とりあえず部屋に戻って下着を着けてこい!」


「はーーい」

 妹はそう言うと俺の部屋から……。


「そこでタオルを外すなああ!」

 俺の部屋から出るなりタオルを外し素っ裸で出ていった……いや、後ろ姿だけだぞ、何も見えてないぞ!! 尻以外は見えてない……くっ。


「と、とりあえず敵を尻、いや違う……敵を知り己を知ればなんとやら……」


 続けよう……妹は、萌って名前の通り見事なオタクに育った。別に親はオタクにしようと付けた名前じゃないらしいが……そして俺の名前は……たく、学校じゃ萌卓と呼ばれオタク兄妹で通ってる……うう、俺はオタクじゃねえのに……。


 そう、よりによって妹と俺は同じ高校……妹はオタクの事を、特に腐っている事を全く隠さずに夏休みまで過ごしてしまい、クラスの男子から完全にドン引きされ、今に至る……終わってんだろこれ。


 しかし! まだチャンスはある! 今は夏休みだ、夏休み明けにガラッと変わる事が出来れば、まだ取り返せる。やれるはず、やらなきゃいけない、何故なら妹のお陰で俺も完全にオタク認定され、クラスの女子からは遠巻きに笑われ初めている。

 俺だってな、俺だって……彼女が欲しいんだ! 童貞捨てたいんじゃ!!


 だから、やらなくては、今やらないでいつやる? 今でしょ! そう今なんだ、今しかない。妹を再生してやる、やらばければ俺の青春、俺の高校生活は終わってしまうんだ!


「兄ちゃん着てきたよ~~」

 妹はそう言って全く色気のない、古びた上下500円位のベージュの下着を着て、下着だけ着て俺の部屋に戻ってくる。


「下着姿で来るんじゃない!!」


「えーーーーだって下着を着てこいって」


「全部だ、下着も含めて全部着ろ!」


「え~~面倒だからいいよこれで」


「よくねええええ!!……はぁ、はぁはぁ~~~~」


「兄ちゃん?」


「とりあえずお前の部屋に行くぞ」


「えーーーー、えっとそれは……やめた方が」


「な、なんでだ!」


「いや……えっと」

 そのなんとも言えない表情……お前まさか……。


「ああ、ダメえ、兄ちゃらめえ」


「変な声を出すな!」

 妹は俺にしがみつき俺を止めようとする。そこまで俺を部屋に入れたくない理由……それは一つだけだ。

 俺は妹を振り切り、妹の部屋の扉を開けた。


「な、ななな、なんじゃこの部屋は!!」


「あはは、1年位ほったらかしにしてたんでぇ」


 俺の隣が汚部屋に……ぎゃあああ!

 今なんかいた、なんかいたぞ!


「あははじゃねえ! 俺は潔癖症なんだ! ああ、お前最近俺の部屋に居るのって」


「ああ、うん、避難?」


「かたずけろーー!!」


「どこから直せば良いんだよ? 容姿だけじゃねえ、生活習慣からか? 性格からか? マジか……間に合うのか?」


「兄ちゃん?」


「と、とりあえず……片付けよう……俺も手伝うから……」


「うん!」


 妹再生計画は、まず部屋の片付けから始まった。



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