第22話
「神…」
「神よ、我々が神界にいるのはなんでだ?」
魔王が迫るように問う。
『それはあなた達の力が必要なのとあなた達の罰だからです』
「罰??」
勇者が首を傾げる。
「おい、魔王。罰ってなんだよ?死んだら罰が下されるのか?俺そんな酷いことしてたか?」
「さぁ?我も聞いたことがない」
魔王が掌を返して、さぁ?、という表情をしている。
『死した者はみな全て、天界の神判によって罪を告げられます。その者はその罪を自分の生きていた時の罰として受け入れ超過しなくてはならないのです。死者はただ天界という死者の国に行くのではありません。死んでも、なにをなさなければなりません。その罰をしっかり受け真っ当することができた者がようやく死者が漂っている高の場である天界の天の国に行くことができるのです』
「へぇーそんなシステムなんだー」
「死んでもなにか義務があるとは面白い」
《この2人なら今話について何か質問してくると思ってましたが意外と大人しいですね》
神がそんなことを心で思っていると勇者が声を挙げる。
「正直何箇所か不自然なところがあったがそんなことツッコンでたら本題に入れねぇから今回は無視してやる」
《…そういうことでしたか。ですが、なにをそんなに急いでいるのですか?》
「お前もわかってるだろ」
『あーなるほど。そっちのことですね。それは仕方ない』
「そういうことだ。早く本題に入ってくれ」
『あなた達への罰は現世で起きている事を解決してもらう事です』
「む?なにを言っている我らは死んだのだぞ。どうやって現世に行く。まず、現世で起きた事だ。相当な非常事態でないのなら上から干渉してはならないだろう」
魔王が神に言葉を返す。
『普通であればあなたのいう通りです。ですが、今回の件はこちら側に関係するのです』
「どういう事だよ?あいつ神なのか?」
勇者が神に質問する。
『いえ、今回になっている彼の者は神ではありません』
「じゃあ、なんなんだよ」
「我も気になるぞ。我々が死んでからのことはまずわからんしな。なるべくなら今の現世の状況も説明して欲しいな」
勇者と魔王が続け様に言葉を投げる。
『順を追って話ましょう。まず、現世の状況ですが…ということです』
「そんな状況に…」
魔王が顔を曇らせる。悔し創な表情だ。
だが、逆に勇者は激怒していた。
「おい、どういうことだよ!!俺が勇者じゃなかったって!替え玉だたって!そして、あいつなんであんなにすごい力持ってるんだよ!俺なんて光属性すら持ってなかったぞ!なんであいつは光な上に超協力なスキル持ってんだよ!なんで、あいつ勇者業サボってんだよ!俺の努力とはなんだったんだよ!!」
勇者は叫びながら激しく落ち込む。それを横目で魔王は哀れみの目で見ていた。
『勇者よ、一旦落ち着きなさい。あなたほど考え行動してきた勇者はいません。あなたは紛れもなく勇者です。それは誇っていいでしょう』
神が勇者を宥める。
(うわっ、神が勇者のこと宥めてる)
魔王はもう一度哀れみの目で勇者をチラ見する。
「もうこれ以上俺を哀れにしないでくれ。宥められるほど虚しくなるからやめて」
悲しみのこもった勇者の言葉に妙な説得が生まれ、誰も勇者に対してこの話題に触れることはなくなった。ただ、妙な空気になり無言の空気が流れる。
『では、本題に入ります。あなた達への罰として現世にいるダークロードと名乗るコクシンを成敗してもらいたい。あなた達は少しの時間だけですが、神としての権限を差し上げます』
神は淡々と話をした。
勇者はこの話の内容にあまりピンとこずただただ困惑している。しかし、隣で聞いていた魔王の表情だけはおかしかった。
それに気づいた勇者が魔王に声をかける。
「おい、どうした?鳩が豆鉄砲喰らったみたいな顔して。なんでそんなに驚いてるんだよ?どこに驚く要素があったんだ?」
勇者は頭の上に疑問を浮かべながら魔王に迫った。
ボソッと魔王はこんな事を言った。
「な、なんであの種族が…我が完全に葬ったはず…」
「ん?」
勇者はよく聞き取れなかった。
その反応を見て神が話を再開する。
『そうです。彼はあなたが滅ぼしたはずの種族であるコクシンの最後の生き残りです』
魔王は冷や汗をかく。汗の滴が頬を通る。
この様子だけでどれだけのことなのかが読み取れる。勇者はそう思った。
『コクシンは約2000年ほど前、人間たちがまだまだ幼い頃にそこにいる魔王の手によって殲滅させられました。と、思っていましたが違いました。なんとたった1人だけ生き残っていたのです』
「神よ、このことは知っていたのか?」
『私たち神々も彼が本性を表すまでわかっていませんでした。彼は神の目を掻い潜る強力なスキルを持っています』
「神をも欺く強力なスキル…」
「おい、お前らだけで理解した感じになるなよ。俺は黒神?の事わからないんだけど?」
「そうだや、貴様は分からんな。いや、人族がわかるはずのない歴史か。これは人族と争う前の出来事だ」
(過去編に突入する気か?)
勇者がそんな事を思っているうちに回想へ移動する。
昔、約2000年以上前、ある二つの強力な種族が凌ぎを削っていた。
一つの種族はコクシン、もう一つの種族がキマ。魔王はキマに属する魔族だった。
「なっ、お前キマって言うのだったのか。他の奴と照らし合わせても魔王だけ特徴が合わなくて種族がわからなかったのはそう言う事だったのか!」
「話を初っぱなから折らないでくれ」
魔王はいきなり言葉を挟んできた勇者を軽蔑の目で睨む。
「お、俺が悪かった。さぁ、話の続きをしてくれっ」
勇者は焦るように魔王を宥めるよう言った。
「それでは続けるぞ。と言っても尺の関係もある。短くいく」
「…あっちの都合のこと忘れてなかったのね」
魔王は続きを話し始めた。
この二つの種族は魔族でも特に圧倒的に強い力を持っていた。この二つの種族を中心に魔族社会は形成していった。
二つの種族の力は拮抗していた。だからこそ、お互い相手が気に食わなくても容易に手を出すことができなかった。
だが、ある時天才児が2人生まれた。コクシンとキマで1人ずつ最強の種族の中でも吐出して才を持つものが生まれた。それが両種族に変化をもたらしていく。
天才と言われた2人はメキメキと力をつけ、最終的に族の長という地位と圧倒的な強さの証明を手に入れた。ここからより強く両種族は対立していく。
そんな中、キマの長となった魔王は全魔族の統一を目指す。魔王は生まれた時からこの大きすぎる才は何かを成し遂げるために託されたものだと悟りキマの長となったことでその役目を成し遂げようと動き始めた。
一方でコクシンの長はどうにもこうにも目障りなキマの存在をどうやって蹴散らそうかと考えていた。流石にコクシンの天才も魔王の存在は耳にしており安易にキマに攻め入れないことを分かっていた。昔と結局のところ状況は変わっていなかった。その状況を打破するためにコクシンの長はある企みを考える。それによってキマも魔族全体も混乱の渦に巻き込まれていく。
そんな状況でも魔王は自分の理想を叶えるために行動し続け、その努力が結びコクシン以外の魔族を取り纏めることに成功した。魔王の圧倒的な力があってこそなし得たことでもある。そして、魔王は最後に残った遠い昔から対立の関係にあるコクシンと話し合いをしようと計画を立てる。しかし、そんなことを思っていた時だった。なんと、キマと同盟を結んだ種族がコクシンによって大きな犠牲が出たのだ。コクシンは最初から話などする気がなかったのだ。このまま貴様らキマが調子に乗るようなら他の種族全てを滅ぼすと言葉を残し種族破滅に導いていった。それに激怒した魔王は立ち上がりコクシンと分かり合うことを諦めコクシンをこの世から抹消することを決めた。魔王は1人でコクシンを滅ぼすと立ち上がった。他の者たちから止められるが魔王は最小の被害に収めるには自分一人で行ってこの力で相手を打ち滅ぼすべきだと説得し、一人でコクシンを滅ぼしに向かう。コクシンの村に到着すると同時に長よ出てこいと叫びコクシンの同胞たちを次々になぎ殺して行った。どんなものにも容赦せず完膚なきまで虐殺していった。コクシンの村に1人もいなくなった時に魔王は初めて気づいた。コクシンの長がいないと。魔王は気付くのは遅かった時既に遅し、なんと魔王が1人で乗り込んでくることを察知しコクシンの天才も1人でキマの村に奇襲をかけていた。魔王がそれに気づき村についた時には既にキマは魔王だけしか生存していなかった。魔王は怒りコクシンの長と最後の戦いに臨んだ。最終的には気力で勝った魔王が勝利し、全てが終わった。あまりにも大きすぎる犠牲とともに。この時を持ってキマは魔王1人コクシンは絶滅した。
「ということがあった」
「お前と互角って相当やばいな」
「まあ、あの時が全盛期ではないから今ならそうでもない。あらから何百年か経った時だったか、神々と戦ったのは。というか、あのダークロードとかいうもの見たことないぞ?」
「はぁ?お前何言ってんだよ。今の流れならそのコクシンの長だろ」
「いや、全てが違う。容姿、溢れ出るオーラ、雰囲気」
「違うのにお前を殺せるほどの力を持つというのか?」
「一度はな。奴は我よりステータスが劣っているのだろう。だから、奴は自分の力では一度しか我を殺せないと見込んでお主を利用したのだろう」
「なに〜俺が利用されただと〜」
「お前は感情が高鳴る時はなかったか?きっとあやつがそうなるように仕込んだのだ。奴は我にもそういう力を働いていたのだろう」
「なるほどな。だが、どうやってそいつはお前の襲撃から逃れたんだ?今すぐ話題にならなかったが1番気になるところだろ」
『それは私が説明しましょう。彼は魔王、あなたの襲撃から唯一生き残ったコクシンの生き残りなのです』
「そんな馬鹿な!あの場に生命反応はなかったぞ!」
『あなたが気づかなかったのも仕方ありません。その者は影の世界に逃げたのですから』
「「影の世界??」」
「神よ、影の世界は空想上のものではないのか?」
魔王が神に質問する。
『いえ、存在します。何者も存在していない影の闇から広がる世界があります』
「シャドーダイブというスキルで影に潜り込んで移動するスキルがあるがそれを使ったのか?」
魔王はまたも神に質問をする。
『いえ、違います。彼は影を使う上での最高位スキルの一つであるダークシャドウを持っていたのです』
「ダークシャドウ?なんだそのスキルは」
今度は勇者は不思議そうな顔をして聞く。
『ダークシャドウは影の世界に入ることができる上に影をある程度大体のことは自由に操ることができるという強力なスキルです』
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