第12話
「まあ、何故人族が魔族を目の敵にしているのかという理由は分かった。勇姿誕生の秘話も分かった。代々知りたい事はわかった。だからこそ、一つ質問させてもらう?」
勇者は真剣な顔で言った。
「・・・今からお主が口に出そうとしていることは聞きたくないことじゃな…」
王の顔が曇った。
「…俺の話は続けさせてもらうぞ」
「なるべくなら話して欲しくないな」
「なら何で魔族と和平を結ぼうとしない?王達は分かってるってことだろ?魔族がこっちに危害を加える気がないって」
「…はっきり言って国民がいる前では口が裂けても言えんことじゃが、我々が魔族を恨んだり、妬んだり、敵対したりする必要はもうない」
「そうだろ?」
「だが、今更になって引けないのだ。実際に魔族から被害を受けた過去もある。逆にこっちが魔族を散々殺してきたという事実も存在する。どの首提げて魔族と和平を結ぼうとなどと言えるものか」
「・・・他にも理由はあるんだろ?」
「ああ、現状が非常に安定していることだ。人族が魔族を少し殺す事でお互いの平和が保たれている」
「なるほどな」
「理解したか勇者」
「ああ」
「ふむ…現状を維持することが最善な気がしての」
「おい、2人だけで納得してないで言葉にしてくれよ」
戦士が要求する。
「お主空気読んでくれぬか?」
「頼むから説明してくれ」
「はぁ〜分かった、説明しよう」
(今のため息はなんだ?俺分かんないんだから聞いたっていいじゃねぇか)
「一握りの魔族を犠牲にする事でお互いに平和を手に入れているのじゃ。人族だけじゃなく魔族も平和なのじゃ」
「あっ…」
「察したか、読者の為に続きも話そう」
「読者?」
「ツッコンではいけない」
戦士と勇姿が他愛もないコントを入れる。
皆さん、今の発言は無視して続きをお読みください。
(そろそろ、作者の限界が出てる。相当やばい状態)
「こちらは既にお互いの現状をしっかり理解している。どちらも争いもなく平和そのものだ。それに加えて、文化もかなり発達してきている。ここで、下手に和平を結ぼうとすればお互いに混乱が生まれるだろう。間違いなく、我ら人族は混乱し、国が揺るぎかねない。あちらがどうか知らないが。まず、王族は批判されるはずじゃろうな。何故今の今まで魔族が無害である存在だと知っておきながら事実を隠していたのかと。様々な事に王族は刺されるだろう。勇姿の犠牲。魔族のみの犠牲。隠蔽工作。今更になっての和平。きっと国民は許してくれないだろう。しかも現在は魔王も不在の状況だ。事態は最悪な状況じゃ。魔族は今、魔王を倒した勇者及び人族を許しはしないだろう。つまり、人族と魔族が手を結んでいい事はない。むしろ、今平和な状況が失われてしまう可能性もある。その為に、和平が結ばれることはない。いや、結べないと言うべきか。お互い、少しの犠牲を払うことで平和を守るというエゴを通し続けている。まず、和平を結んだからと言って2つの族が馴染めるかというとそう簡単なことではないだろう。様々な憶測が飛び交うと、やはり、現状維持がベストなのではないかと答えが出るのだ」
(まあ、こんなことを今話せるのも勇者が魔王を討伐したからじゃの。そうじゃなければ、こんなこと話したら大変なことになってしまう。特に魔王討伐をこっちが勇者に頼んでいるのにこんな状況になっているなどと知れれば、幾ら勇者という人間のほとんど人当たりの良い者であっても何をしでかすか分からないからの。それを考えればある意味この勇者が魔王を討伐したのは正解だったのやもしれん)
「・・・仕方がないな。それが人間の性だからな」
「私も酷く同意します」
「俺もだ」
「自分も同意」
「この場で聞いた事は他言無用で頼む」
王がそう締めくくる。
「…解せないな」
勇者が顎に手を当てて考え込んでいる。
「何がじゃ?」
王が勇者に尋ねる。
「いや、俺が知りたいことの大体はさっきの話で知ることができた。だが、なんだろうか負に落ちないことがある。いや、負に落ちないというよりは違和感を感じるというべきか?」
勇者が顎に手を当てた状態で険しい顔をしながら応える。
「おい、何言ってんだよ?」
「なんかおかしい気がするんだよ。いや、別におかしい点とかないんだけどな」
(なんなんだこの感覚は?何か嫌な予感?違う、何か俺に対して起こる気がする?いや、それとも違うなんだろう。なんだこの胸騒ぎは?)
勇者が何かモヤモヤを抱えたまま話は終わった。
話が終わったということで今まで通りの日常に戻った。3人は話が終わったらすぐに王の間をでて勇者の城に帰った。
3人が帰って直後、王は側近の護衛に耳打ちをした。その内容を知る者は護衛のみ。
ここまでが勇者サイドの話の全てだ。
ここからは場面が移って魔族サイドに行く。
魔族サイド
「作戦を実行する」
魔王が魔王の間で家臣1人に高らかに宣言する。
「今からですか?」
家臣が言葉を返す。
「いや、明日の正午に奴らの王国に奇襲をかける」
「明日の正午??予定が急という事にも驚きましたが、何故正午というまだ日もある時間帯に?!」
「魔族の、特に実力のあふ者は闇属性を使う。たしかに、夜のような闇の包む環境の方が戦いやすく実力を発揮やすいのは当然だ」
「魔王様も分かっておられるではありませんか!」
「だが、敢えて日の出てる環境を舞台とさせてもらう。普通であれば魔族が奇襲を仕掛けてくるとしたら夜と考えるのが妥当だろ?つまり、夜にしか奇襲をかけていないと考えているはずだ。その心の余裕から生まれている隙を狙わせてもらう」
「な、なんと!」
「勇者もやってきた我が今更やったところで特に感じることもあるまい。なんと言っても我もこの手で葬られてしまったのだからな」
「おおぉぉ。流石魔王様です!」
「ふふふ、そうだろ?これが我が魔王たる所以なのだからな。はっはっはっ」
魔王が高笑いをあげる。
「魔王様、計画では勇者と堂々と一対一で戦うと言っておられましたがそれでは勇者のやり方で仕返すという意味では主旨に反しているのでは…」
「ふふふ。敢えてそういうシチュエーションを用意したのだ。奴にまともに戦えば貴様に万が一の勝ち目もないと言う証明を見せつけなければならない。その為に敢えて、正々堂々と戦う舞台を用意するのだ」
「感服です…返す言葉をありません」
家臣が魔王には敵わないと表すかのように首を振りながら返事をした。
「作戦を振り返るぞ」
「はっ」
「作戦を振り返ったのちしっかりともう一度内容を吟味する。その後、魔族全員にテレパシーで作戦を明日の正午に決行することを報告し、明日に備えてもらう。そして、明日には実際に人族の国に奇襲をかける」
「はい、完璧な流れです」
「だろう?一時は計画が狂われるのではないかと危ぶまれたがなんとかなりそうでホッとしている。妖怪族が何者かによって斬殺された時は混乱した」
「あれは結局誰の仕業だったのでしょうね」
「さぁな。今じゃ真相は闇の中。だが、必ずこの勇者との戦いが終わったら妖怪たちを葬ったクソやろうを見つけ出してやる!!奴らの無念は確実に晴らす!絶対に許さぬ!」
魔王は後半、怒りを込めるようにドスの効いた声で言った。
その時の魔王は体の周りには強烈なオーラが放たれているようなそんな形相だった。
「魔王様、まずは目の前のことに集中しましょう!また、あの勇者に足元を掬われてしまうやもしれません!」
「…うぬ。お主の言う通りだ。もしかしたら、あの勇者が今頃、我の存在に気付いているやもしれん」
「そうです!その可能性も捨て切れません、確かに、偵察隊からの連絡が極端に少なくなってしまいましたがきっと作戦実行前までには情報が入ってくるはずです!」
「そうだな。今は待つしかない」
「魔王様、準備の方を進めていきましょう!」
「心配しすぎても仕方あるまいし、主の言う通り準備を進めるとしようか。あの勇者が何をしてくるかわからん上にどんな備えをしているかもわからない。こちらもできるだけの備えが必要だろうな」
「はい、そうでございますね。予め様々なものを用意しておりますが、まだ、考える余地はあるかもしれませんね」
「うむ。供えあって憂いなしということわざがあるぐらいだ。用心することに越した事はない。デモルスピヤや他の族長たちの負担も大きい。なるべく、早期にこの件は片付けなければ」
(我が殺されたと言っても二度の生が約束されていたのだから正直に言わせて貰えば一度殺されたぐらいどうって事ないがここで魔王としての威厳を示さないとまずい。魔族からの敬服、人族からの未知なる強さの恐れ、と言ったようなものが失われていってしまう。それは早々に対応しなければならない)
「魔王様?」
家臣が顔を覗かせている。
「おお、すまん。別の考え事をしていた」
「??何を考えていらっしゃったのですか?勇者の存在に対してですか?」
魔王が首を振る。そして、答える。
「そんな事ではない。特に大したことでもないから気にするな」
(これから勇者への復讐を実行しようとしている方が勇者関連のこと以外考えているとは考えにくいのだが…本人がそういうのだから違うのか?だが…)
家臣が魔王の顔をじっと見つめながら考えていると、
「なんだ?我が顔が何かおかしいか?」
「いえ、滅相もございません。そんなことは一切ありません。私目も考え事をしていただけであります」
「ん?そうか?ならいいが、何かあったらすぐに申せ。流石に勇者との決戦で顔にゴミが付いててその場の緊張を壊したとかいう状況は避けたいからな」
そのセリフを言っていた時の魔王の顔に威厳は見られなかった。
「それでは魔王様、さっきの打ち合わせ通りにいきましょうか」
「うむ、そうだな。時間は有限だからな。急ぐ必要はないが、時間を取りすぎるのもダメだからな」
そんな会話を2人はして、作戦の確認を始めようとした時だった。
バタっ
ある1人の者がいきなり入ってきた。
「はぁはぁ、はぁはぁ。魔王様!!報告があります!!なんと、人族に忍ばせていた我らの偵察部隊から情報が入りました!!しかも、かなり指折りの情報が入ってきました!!!」
「なんだと!!!」
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