第11話

そこから人々に平和が訪れるかと思ったが、違った。

戦いは止まなかった。

そんな中、祖にはあることが起きていた。

祖はリザードマンを殲滅したことで全ての民に崇められ、王という称号を民から授かった。祖が王となった瞬間だ。ここから現在まで現存する王族の歴史が始まったのだ。

祖はリザードマンを殲滅した後から急に口数が減った。特に王になってからより一層言葉が少なくなった。

皆は祖が王になったことと力を手に入れたことによって圧を感じているのだろうと気にも留めてなかった。

そして、遂に魔族対人族の戦いが開戦する。

人族は強力な攻撃スキル又は攻撃魔法を保有する者達で軍隊を作った。力を持つ魔族に対抗するためだけに編成された。その編成された軍隊は次のように呼ばれた。“鬼強騎士団(キルウォーリアーズ)”。

騎士団は王を中心の組織として活動した。騎士団は結成されてすぐに魔族が住む領域に遠征に行った。

手当たり次第に魔族を葬っていったと聞く。無差別な虐殺に流石の魔族達も怒り人族への復讐を始める。

ここから、人族と魔族の対立の歴史が始まっている。

だが、この戦いも一旦落ち着く出来事が起きる。それが、王の戦線離脱だ。王が齢を50を過ぎる頃、自らの意思で自分は戦いに赴かないと発言した。だが、周りの反応は当たり前という声が飛んだ。それもそうだ。その時代、齢を40も過ぎれば老兵と呼ばれ、戦線から離脱ような時代だっのだ。当たり前といえば当たり前の引退だった。しかし、王の存在は大きく騎士団は王が抜けた大きな穴をどうするか必死に悩んでいた。だが、王が引退する際にある言葉を言った。

『これからは選ばれた勇者が各世代で生まれてくるだろう。その者達が他の者達全ての代表として魔族の悪の元凶たる魔王を倒す役目を担う。もう、わざわざ大勢の者が戦う必要はなくなる…』

意味深い言葉を残して、その直後に王は失踪し、行方を晦ました。その後の王の行方を知る者はいなかった…

月日が経つとある御告げを唱える者達が現れる。

その者達の話では魔族の長である魔王を倒す可能性がある逸材が生まれるというのだ。その生まれた逸材は人間の域を超えた強さを持つと言った。誰もそのような話は信じなかった。しかし、月日が経つとその御告げが事実だった事を知る。

その頃の魔族はというと特に自分達から襲ってくることはなかった。この理由は分からないだが、時代が変わると奴らの動きも変わった。それがわかるのはもう少し後の歴史だ。その時期は王の死もあり人族側も穏便な態度を取っていた。ここから、文化の発展が進んでいく。

御告げが事実だったということがわかるのは騎士団入団試験での出来事だった。1人の少年が圧倒的な力を見せつけて入団試験に合格したのだ。その力は入団した初めから騎士団にいる誰よりも強い程の実力を持っていた。その少年は現在勇者の1番の特徴の光属性を持っていた。光属性は王以外では当時は確認されていなかった。現在も勇者以外で光属性を持つ者はいなかった。光属性はそれほどに特別な存在を示し、勇者を勇者足らしめる強さを証明していた。

選ばれた少年は御告げ通りに皆から勇者と呼ばれるようになる。王の司令で魔族狩りに出ればあっという間に倒しさってしまうほどの腕を持っていた。ここから勇者の歴史が始まるのだ。

何故ここまで人族側が魔族について知っているのかというのは失踪した王が魔族の住む地を隅々まで探索したからだ。魔王の存在わかるのもその為である。王は一度だけだが魔王を見たことがあるらしい。見た当初は魔王だとは分からなかったらしいが見た瞬間にある事を悟ったらしい。こいつには勝てない。こいつはきっと魔族の頂点に立つような存在だと確信したそうだ。

現在、人族がある程度の魔族に対しての知識があるのは初代の王が基盤を残していったからである。

その後の歴史は魔族と人間が完全に対立する流れが出来上がりそれが今でも続いている。

勇者が魔王を討伐に行き、数多の数の勇者が返り討ちにあってきた。

だが、年月が経つにつれて勇者の犠牲者が減り始めた。いつしか、勇者が完全な返り討ちに合って亡くなることや再起不能になることがなかった。勇者は皆五体満足で帰ってくるようになってもう800年以上経つ。ぱったりと魔王が勇者の対応に対して緩くなったわけでなく、少しずつ変化していった印象がある。魔王の中に心境の変化があったのかもしれない。実際、魔族からの人族に対しての被害はここ300年は確認されていない。


「おい、王よ…本当か、それは?」

勇者は目を見開いて聞いた。

「当たり前じゃ。これは歴代の王のみに渡され伝えられている王書に書いてある事実じゃ。そして、絶対に漏洩してはならない歴史でもある。教育学校でも習わぬ、そして、大人や老人ですら知り得ない事実じゃ」

そこにいた者は王以外全員が呆然としていた。特に戦士と護衛の2人は衝撃を受けてようだ。

そして、この話を聞きたがっていた本人の勇者はいうと、下を俯いてあることを考えていた。

(王族の祖…何者だ?勇者の存在も生まれる前から予知していた?まず、なんで勇者なんてものが生まれたんだ?何故、王族は現在光属性を持っていない?魔法の属性は遺伝100%だと聞いているが違うのか?勇者だけは例外だと聞いているが…)

勇者は顔を上げて王に尋ねる。

「話に続きはあるのか?」

「・・・ある」

「なら、全部話してくれ。俺はまだ納得いっていない部分が多くある。もしかしたら、これから話す内容に俺の疑問が解決する内容があるかもしれない」

「分かった。ここまできたら余がする限りのことを話そう。続きを聴かせよう…



ある時代から勇者の出生を知る方法が開拓される。それが現在ある大聖堂の光だ。大聖堂の光のシステムの詳細を知るものはいない。ある時から存在している。だが、それは人々にとって非常にありがたいものだった。無駄な手間が省けた。教会の光がある前は子が生まれるわざわざその子のもとに行って属性の適性を調べていた。だが、現在では大聖堂にある勇者の間のステンドグラスに描かれた勇者の剣(勇者の証)が金色の光を放った時、それが勇者が生まれた合図となっている。放たれた光がある一点を指す。その指し示された場所にいる子こそが勇者の素質を持ち魔王を討伐する可能性のある戦いの天才がいるのだ。

今までに魔王を討伐したものはいなかった。それ程に魔王との実力の差は大きかった。魔王との戦いの後、全ての勇者は魔王に勝てないことを悟り、戦いの第一線から退き、隠居生活を送っていった。

そのはずだった。だが、勇者が魔王に勝てませんでした。というだけでのこのこ国帰ってきて戦いもせずに暮らすということにはあまりにも無理があった。絶対に国民から批判が来ると代々の王は考えた。その為に役目を終えたと思った勇者を全て、国民の認識から外していった。認識を外すとはどういうことかというとそのものがしてきた痕跡を消し去るということだ。存在を消すのではなく、残してきた光を消し去るのだ。その者がいた、魔王の元へ行った、その後余生を過ごした。それだけが国民の記憶には刻まれてる。魔王討伐に行き、帰ってきてからの勇者の言動の詳細を知るものはいない。例外としては、魔王を最も追い詰めた力量だけでは最強の勇者と言われた、三勇者と現在魔王を討伐することを成功させた勇者の合計4人だ。 この4人以外の勇者は初期の勇者は魔王の手によって殺されたり再起不能にあった。しかし、それ以外の殆どの勇者は王と一部の者の手によって消された。先程述べた余生を許された4人にも理由がある。三勇者はある主張をした。もっと勇者が魔王と渡り合える環境を整えたいという申し出だ。その申し出が本当であればかなり確信的なことだと言うことで消されることが少し免除された。正確には勇者達は消される事実は知らない上に王達が勇者達が勇者を消そうと計画を立てていた最中での申し出だった。申し出というよりは提案という方が正しいかもしれない。この話が約500年前。勇者3人は自分達3人の命を光に捧げて魔王にも対抗できる剣を創った。命を捧げたため3人の勇者は命を落としてしまった。だが、それほどの価値のある剣だった。剣の名を命聖光剣。

その剣のおかげで勇者は以前よりも魔王と戦えるようになった。魔王も歳なのか衰えてきている為に肉体の弱さが出てきているのかもしれない。

その後は特に何もなく同じような時が過ぎていってる。時代ごとに勇者が生まれ、その勇者が魔王を討伐しに、魔王討伐を達成できず、最終的には王によって消されていく。

これが何度も何度も繰り返された。

時代の流れというものはある時から止まっている。


「…という感じじゃ。今まで話してきたことかま人族の歴史じゃ」

「…歴史についてはよーく分かったが、肝心なことがわかってねぇ。俺の質問の返答になってねぇじゃねぇか!俺は教育方針のことについてお前に質問した筈だが、一切その話に触れられてないじゃねぇか」

「…それは、あれじゃ。偶々そうなってしまったのじゃ」

「王様、ガチでそれで通すつもり?」

目を細めながら勇者が王に聞く。

王も細い目をして口を開く。

「…余も気付いていなかったのじゃ。代々の王が一人としてその事実に気付いていなかった。貴様が言って初めて気付いたのじゃ」

「はぁぁ?そんなことあることあるかよ??だってよぉ、お前、俺の話を聞いてる時に非常にまずいみたいな顔してたじゃねぇか!」

「あ、あれは遂にこの時が来たかという緊張の表情じゃ。だが、まさか貴様が世界の疑念に気付き王のもとに来るとは思っても見えなかったぞ」

「…俺の評価って何だ?さっきの女の従者達もそうだが、ちょっとおかしくないか?俺一応魔王を倒した唯一の勇者なんだけど」

落ち込んだ様子で勇姿はそう言った。

(そりゃそうなるだろ。日頃の行いが悪いからな)

戦士は心の中で密かにそんなことを思っていた。

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