第10話
その後は平穏な日々が続いた。
争いという悪しき歴史を払拭するかのように。
だが、そんな平和も長くは続かなかった。
二分されていた大陸が地殻変動の影響で一つの大陸となってしまった。
人族に至ってはもう一つ大陸があることすら知らなかった。いや、もしかしたら魔族も知らなかったかのかもしれない。だからこそ、その後争う事になる。
人間達に高度な航海の能力と技術がなかった。だから、彼方にあるもう一つある大陸の存在に気付かず、地殻変動で初めて気づいた。
魔族の方の事情は知らない。人族に沿って話は進む。
人族は地殻変動が起きてすぐ行動は取らなかった。というよりも行動しようとする者がいなかった。人間達はやっとの思いで手に入れた平和に干渉し過ぎて危機というものを忘れてしまった。
だが、魔族側は違った。すぐに地殻変動によってどのような状況に自分達が陥ってるか調査を開始した。
魔族が調査を開始し、人族側の大陸方面に来た時、そこで初めてお互いを認識した。
戦というものを忘れた人族達は調査に来た膨大な数の魔族達に怯えた。最初の頃は魔族達も調査が主だったため人族に干渉しようとする動きはなかった。だが、そんな和やかな時間はすぐに終わった。魔族は人族がどのような生物なのか、自分達に脅威となるのか確かめる作業が始まった。何が起こったか、単純な話だ。人族は魔族から体力の虐殺を受けた。人族は当時、他種族との争いが絶えなかった時代が終わり平和な時代を迎えていたところだった。そのため、魔族が攻めてきた時、腑抜けた人間達は対応することができなかった。いや、正確に事実を言うのなら、魔族という存在があることを信じられず戸惑っていた。戸惑っていたというのはその存在があることを認められない、認めてはならないという人族達の平和ボケした頭によるおかしな思考が働いてしまった。正確に言うと、本来人間が持っていた本能を人族は失っていた。そのために、魔族という脅威に対して対策が遅れた。いや、対策したとしても大して被害の大きさに変化はななったかもしれない。
始めの魔族の動きは人族が住む土地の制圧ではなく、その土地に住む生物がどのようなものかというしだ定めのようなものだった。だからこそ、たくさんの人々、動物は殺されていった。
そうして、魔族はその土地が自分達にとっていい土地か判断していった。
そして、最終的に我々が住んでいる土地が素晴らしい場所だと判断し、攻めてきた。
・・・
「おい、ちょっと待て」
勇者が王の話を一度止める。
「なんじゃ?」
「いろいろ驚くことがあるが、今お前が話している歴史はどうやってそこまで詳細に伝承してきたんだ?」
「それは後の話で分かる。他に聞きたいことは?」
「もう一ついいか?」
「なんじゃ?」
「魔族はどういうところが人族が住む土地のいいと思ったんだ?そして、魔族と一括りに言っても様々な種がいる。どの種が攻めてきたんだ?」
「話を進めれば全てが分かる。聞いておれ」
「久々にあんたが王っぽい感じで俺は安心してるぜ」
「・・・貴様、余に向かってかなり失礼なこと言っておるな」
王が軽蔑するような目で勇者を睨むが勇者はどこふく風で催促する。
「早く続きを頼む」
王は微妙な顔をしながら続きを話し始めた。
「・・・それでは続きを話すとしようか…
魔族からの侵攻を受けるようになった人族達も流石に行動を開始させた。今考えれば、それはあまりにも遅い行動の開始だったと言える。
その時には既に人族の住んでいた土地の一部が制圧され、魔族が領地侵略の拠点にしてしまっていたのだ。被害は甚大とほか表せない状態だった。
魔族は拠点を手に入れた事で勢いを強めていた。その時の人族陣営は杜撰な状態でまともな作戦があるようにも見えず、魔族に対抗できるような力があるようには見えなかった。
だが、そんな様子を見兼ねてある者が人族で立ち上がった。
それが今に続く王族の祖である。
まだ20を過ぎたばかりの少年が1人立ち上がり人族をまとめ上げようと行動した。その者はカリスマ性があり、すぐに人族をまとめ上げた。
それでも、魔族との戦力差は変わらなかった。
祖は才を多く持ち、智略にも長けていた。そこからは祖を中心として作戦を立て魔族を使い打つようになった。そこからは魔族への対処をしっかりする事ができるようになり、被害もだんだんと少なくなっていった。しかし、現状は良くなっていない。魔族に攻め続けられる人族はどうやって侵攻を止めるかという方針に変わっていった。祖の智略は非常に優れており相手が格上でもその力を利用したり、不利な状況を逆に利用したような戦略が多かった。そのため、自分達を守り、攻めてきた相手の兵を減らす事はできても根本的な解決にはなっていなかった。
それでは、最終的にジリ貧負けしてしまうのではとなった。そんな時、ある1人の者が声を挙げた。
奴らの領域に逆にこっちから攻め込もうと。その時の人々は勢いがあった為その意見は多くの賛成を得た。しかし、祖は断固反対した。しかし、提案した者は相手は油断していると述べる。付け加えて、こっちは守るので手一杯で攻めてこないだろうと油断している上にこっちが相手の勢力を減らした為、相手の兵力は傾きができているところがある、そこを突けばいけると言った。
しかし、祖は首を横に首を振り続けた。ここで2人の人間が対立した。その為に派閥ができてしまった。祖を慕う派と魔族へ攻め込む事に賛成する派の二つに。人族はそこで二つに分かれてしまってからはお互い別々の行動を取るようになった。
そして、魔族へ攻め込む事に賛成していた派閥の方はそれが目的だった為、祖と対立した事をいいことに魔族へ侵攻を開始した。
祖が魔族の地へ攻め込むことに反対していたのには理由があった。
それは魔族一個体の高い戦闘能力にあった。人間を遥かに凌ぐ力を持っていた。まともに戦って勝てる相手ではないと分かっていたのだ。現在は自分達の身を守る戦いをしてるからこそ魔族に優勢に立ち回れているように見えているが実際の現状はそうではない。被害が少なくなったと言っても人間達の力が向上した結果によるものではないと祖は理解していた。
つまり、自分達から戦いを挑んだところで勝てる見込みなど殆どないと思っていたのだ。それと、懸念材料として、魔族の種類と土地の性質、1番強い力持つ者の実力、そして、特殊的な力だった。
この時、人族が戦った魔族はのちにリザードマンという種だと判った。リザードマンは羽を持ち飛行能力を持つ上に魔法を使うことができ、多彩な戦略性を持っていた。
そこに祖は疑念を感じていた。
もし、リザードマンに念力や精神操作、強化の魔法がある場合は人族に勝ち目が無いと考えていた。だが、実際のところ人族の大陸に攻め込んできた際にそう言った能力の使用は一切見られていない。目視されているのは炎などによる四大元素による魔法のみだった。もし、祖が考えるような能力があるならこの戦いは既に人族側の負けで決着がついているはずだと考えた。つまり、そう言った能力者がいる可能性が非常に低いと考えた。しかし、もし、そう言った特殊能力者の数な非常に希少なために敢えて自分達の領地に置いているとした場合、人族が攻め込んで勝てるはずがないと悟った。
この時の人間には魔法やスキルなどは備わっていなかった。つまり、使えるものはいなかった。だが、逆に魔族側は魔法もスキルも普通に常備していた。
圧倒的に戦闘力的に人族は不利だった。
しかし、その後ある戦いで人族はリザードマンに完全勝利を治める。
祖はいなくなった者たちのことを考えると夜も眠れないほどだった。
そして、祖は侵攻派が国を出発して2日目にある決心をした。それは自分の命を全て捨てる覚悟だった。代々古代の慣しによって伝えられてきた伝歌を祖は思い出していた。
その歌が
この世界を作ったのは神様さ〜
この地に存在する全ての人々は神に感謝しなければならないのさ〜
神殿には神と繋がることができる伝達物がある〜
昔はそれで知恵を借りていたと聞くよ〜
神殿には〜
力があると言い伝えられている〜
その力を手にした者は人間を捨てて砕け散ってしまうのさ〜
神に祈りを捧げよ〜〜
祖は閃いた。今起きてる事態を解決するには神の力が必要なのだと。神にもし現状を解決する手立てを聞き出せればベスト、出なくても力を手に入れれる可能性がある。それによって魔族との力関係を改善することができるかもしれないと思い立ち祖は神殿の元へ走った。
祖が神殿についた時、神殿はなかった。
言っている意味がわからないかもしれないが祖が神殿があると思われていた場所に神殿がなかったのだ。
そして、その近くに住む者達に神殿の存在について聞いて回った。しかし、そんなものは昔から存在しないと存在自体を否定されてしまう。
そう、後で調べてわかったことだがあの歌ですら祖の空耳だったのではと言われているほどだ。その歌を祖はどこで聞いたのか今現在も分かっていない。祖が神殿の存在を諦めて元いた地に帰ろうとした時だった。とぼとぼと祖が歩いていると途中で激しい頭痛に襲われた。頭痛如きは問題ではなかったが問題が一つあった。それが祖がその時歩いていた場所が森林に囲まれた一本道だったのだ。人は1人としていない環境で祖は助けを呼ぶことも出来ずもがき苦しんだ。そんな時だった。どこかから声が聞こえた。
祖は何処かから声が聞こえたこと以上の事を子孫に伝えなかったと聞く。
だが、1つの事実だけは消えない。
祖は強力なスキルと強大な魔力を手に入れた。
スキルは他への魔力寄与と最高位攻撃技、完全鑑定、魔法は光属性と四大元素全て風、火、水、土の四つの属性を所有したと言い伝えられている。
その力によってリザードマンを打ち滅ぼしたとされている。
現在、リザードマン種が絶滅していて一体もいないのは人間で初めて魔法とスキルを獲得した王族の祖によって殲滅させられたのである。
その時の様子がある書物に記されていた。
ある1人の少年が空飛蜥蜴人の巣に1人で乗り込みスキルと魔法を用いて全ての空飛蜥蜴人を狩っていった。
その姿はまるで初めて人族領域が侵略された時の空飛蜥蜴人ようだった…
この戦いを人々は次のように言った。
“暴龍の戦神”
この戦いによって一旦は魔族との激しい戦いは終わる。
しかし、ここで人族と魔族との戦いの歴史は終わらない。
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