第5話

「勇者様、おかげさまで無事作戦の方うまくいっています」

「俺に頼るようじゃどのみちこの国に未来はない。礼などするな」

神父と勇者が勇者の城で言葉を交わしている。

「勇者様が私めが訪問なさった次の日に渡された手紙の作戦が非常に役立っております。王も感謝の言葉しかないと仰っています」

「・・・下賤な奴らめ。王も王だ。下らない」

勇者は神父に対してそっぽを向いた。

これは俺はしたくてしたわけじゃないこれ以上したくないと言う態度の現れかもしれない。この勇者は元来戦いを好まない性格だ。

(フフフ、この勇者も利用するだけ利用させてもらいますよ。今までの勇者達のようにね。今回の勇者様は相当頭が切れるようでらっしゃる。利用しがいがある)

(みたいな感じ出してるな。そうはいくかよ。だが、今回の案件は放っておくわけにもいかない。何故だか分からないが俺に関係する何かが起こる気がする。嫌な予感がする)

勇者が口を開く。

「今回だけは俺も協力してやる。何か嫌な予感がする。その正体を俺は知りたい。だから、お前らに協力してやる。自惚れるなよ。俺がいつでも協力すると思ったら大間違いだからな。俺はこの嫌な予感の正体を知るためだけに動く」

「ははっ、十分でございます。今回の作戦で魔族を滅ぼすことができれば勇者様の願いも叶うでしょう」

神父はそう言って出て行こうとするが、勇者が呼び止める。

「おい、まて!」

神父はすぐに振り返って勇者の方を向く。

「はっ、何でございましょうか?」

「何故、魔族を滅ぼす必要がある?俺はずっと疑問に思っている。何故なんだ?」

勇者は恐ろしい形相で神父に問い詰める。

「私達人族、人間にとっては魔族を滅ぼすことは常識、当たり前の事です」

「そんな答えが聞きたいんじゃない。確かに、魔族を見つけるための作戦まで立てておいてこんな事聞くのもあれだが俺はどうしても聞きたいんだよ。魔族を絶対的に殲滅させなければならない理由を。魔族を憎む理由を」

「・・・」

(この勇者は何を言っている?いや、勇者は元来変わり者が多いと聞く。まて、こいつもそれに当てはまるわけだし…)

「私達ずっと魔族は滅ぼすものだと教育されてきたからそれが常識だと思っていたけど…」

「確かに考えてみればなんでなんだろう?」

賢者と魔法使いがそんな事を言い合っている。

「そこのもの達!!そう言うものなんだと思っていればいいんです!」

神父が睨みつけるような目つきで魔法使い達を見ながらそう言い放った。魔法使い達は少し怯えたように口を閉ざす。

「その常識が俺にとっては不思議で不思議でしょうがないと思っているのだが、やはり、俺は頭がおかしいのか?」

勇者は鋭い目で神父に問う。

「・・・」

神父は黙り続ける。

「それがお前の答えか。ちょうどいい、俺自ら王のもとに行こう」

勇者は玉座から立ち上がり悠々とした態度で言う。

「勇者様ご自身で王様のもとに向かわれるのですか?!」

「ああ、俺が行っちゃ悪いか?」

勇者は睨むように神父に言う。

「い、いえ…」

神父は勇者の言葉で萎縮した。

「王様ってそんな簡単に会えるの?」

魔道士が素朴な疑問を投げかける。

「そ、そうですよ!勇者様、王様は常にお忙しい方、しかも現在は件のことでいつにも増してお忙しい身です。いきなり行って会うことなど叶いませぬ」

魔道士の言葉をいいことに利用して神父は勇者が王のもとに行かないように食い止めるかのように言葉を追い討ちかける。

「お前はそんなに俺が王に会うことを恐れているのか?それとも、俺が王に会うこともできないとでも言いたいのか?俺は腐っても、勇者を務め始めて魔王を倒した男だぞ。誰が俺を止められる。別に俺の扱いに困って俺を殺してもいいがそんなことしたらすぐにこの国は滅びるだろうな。ははは」

勇者は薄気味悪い笑い声を上げた。

(せっこいやり方で魔王倒したくせに)

(よくもああ堂々と言えるよね)

(あの勇者だがら)

魔法使い、賢者、魔道士がコソコソと勇者の事を行っている。

「待てよ!!俺と僧侶も行く」

戦士がそう言った。

僧侶も賛同するように頷く。

「・・・いいぜ。お前らもついてこい。そこの田舎っこ3人組はここで待機していろ。お前らだってちゃんとした冒険者なんだから、そこにいる女どもぐらいは守れるだろ」

「「「なっ、田舎っこって!!!私達のこと馬鹿にしてるでしょ!!!」」」

(((まあ、最もあの勇者と出会うまではそうだったとは今は口が裂けても言えない)))

3人の豪華でオシャレな服装を見ればその理由も分かる。

「クク、本当にお前ら3人は仲がいいな。大事にしろよそう言う仲間は」

「「「???」」」

(あの勇者は何意味深なこと言ってんの?)

魔法使いは心の中でそう疑問に思った。

「それじゃあ、2人とも行くぜ」

「ああ」

「了解」

(これで何か知ることができるかもしれない。勇者がどんな事を考えているのかと言う断片が)

戦士がそんな事を思っている中、

(僕たち3人一緒っていうのも久しぶりだ。1年前からはあのうるさく喚く奴らがいたからな)

勇者が2人を連れて城を出てすぐ勇者は明日を止めた。

「ん、どうした?」

戦士が聞く。

「いや、こうやって3人だけでいるのも久しぶりだと思ってな。なんだか懐かしい気持ちになっただけだ」

「ふっ、確かにそうだな」

「うん、ほんとに久しぶりだよね」

「そんな事言ってる場合じゃないな。さっさと城のほうに行くぞ」

「ああ」

「うん」

3人は真っ直ぐに王のいる城に向かった。

その頃、神父はと言うと。

「どうするべきか。勇者が直接城に向かって行った。これはまずいんじゃないか?何がまずいかって向かう前にしてた話題だ。魔族の殲滅、憎悪感に対しての疑問。これを突かれるのはまずい。この国が揺るぎかねない。それは阻止せねば」

悩んでいた。

勇者達は神父をガン無視して城に向かったのだ。神父を自らの城に置き去りにして。


時間は経過して勇者達一行は王のいる城に着いていた。

「久しぶりだな…もう2度とこないと思っていたがまさかくる羽目になるとはな。…もう着たくもないと思っていたのにな」

「どうした?」

戦士が勇者の様子がおかしいと思い聞いてみた。

「いや、何もない。行くぞ。門番は俺を弱愛してるから問題はないだろう」

「ああーあいつらか」

「あのこいメンツだね」

3人は城の門に向かう。

城の門に着くと2人の男が立っている。1人は若い男で勇者と年齢が変わらないような趣だ。もう1人の男は歳を食ったガタイのいいオヤジのような者だ。中年の中々ゴツいおじさんだ。

「よぉ、久しぶりだな」

「あ!!なんで勇者様が!!」

少し高めの声でものすごくいい反応をしたのが若い男だ。

「お久しぶりです、若」

膝をつきながら敬意を払うように言葉を勇者に語りかける。

今、勇者を若と呼んだ膝をついている男がゴツいおじさんだ。勇者を若というのにはあるわけがあるのだがそれは後に説明しよう。

「今日はどう言ったご了見で?ここ5年は来ていらっしゃらなかったじゃないですか」

「僕達すごく寂しかったんだよー」

「すまんな。俺にも事情があったんだ」

(事情…俺たちが知らない事だな。これもここで知れればいいんだがな)

戦士がそんな事を思っているのを他所に話は進む。

「そう言えばそうだったな」

「勇者様…」

「・・・」

3人とも照れた様な笑顔で話を進める。

その様子を見ていた戦士はというと

(おい、待て。お前らは知ってるのか?俺知らないんだけど)

そんな事を心の中で思いながら自分は何も知らされてない?と少しピンチなのではという危機感を額に汗を垂らしながら考えていた。

「お前ら、入るぞ」

「いってらっしゃいませ、若」

「なんで来たかわからないけどゆっくりしていってねー」

勇者達3人は静かに門を後にする。

門を通った後がやはり問題だった。

「何故、勇者様御一行が!?」

「少し王と話したい。そこを通してもらおう」

「それはいけません。許可なく先を通すことはできません。あなたが功績者であっても」

予想通り揉めた。

「王も随分と大きくなったものだな。俺が魔王を討伐したのによー」

「そう言われましても、王様は常にお忙しい方です。訪問される際は予めこちらに連絡いただき日程を踏んでお会いすることができます。なので、急に来られても王様が面会する時間を確保できませぬ」

「知ったことか。俺は今すぐに王と会って話がしたい。こっちの気分が変わらないうちに王に会いたい」

「しかし…」

「まあ、どうせ簡単に会えるとは思っていない。実力行使で活かしてもらうぞ」

「え、それは困…」

勇者は右手を前にかざした。

「水魔法“水流覇”」

掌から渦を巻いた光線の様な水が放出される。

「ぐはっ」

「ぐはっ」

2人いた兵が倒れた。

「お前らいくぞ。どうせ王の間にいる兵士以外は大したことないからな。どんどん進まねぇと」

勇者は横たわっている2人の兵を無視して2人を連れてどんどん王の間に近づいていく。


「ぐはっ」

バタっ

「こいつで最後だな」

「全くお前はめちゃくちゃだな」

「そうか?今までも俺はこんな感じだったぞ。お前も平和ボケしてるんじゃないのか?」

「それをお前が言うか」

勇者と戦士が王の間の直前でそんな会話を挟む。

(まあ、ここまで楽勝で来れたのは当たり前だな。正直、王の間にいる兵以外は雑魚だからな。門番の2人もかなり強い。あの門番2人がこの国の最終防衛ラインだろうな。この城で1番強いのはあの2人だし、王の間にいるやつも中々強いがあの2人比べればかなり劣る。まあ、仕方ないだろう。なんたって、人間で1番強いのが俺らの目の前にいる勇者なんだからな。まず、はっきり言って誰も敵うはずがない。こう見えても勇者だからな。強さは折り紙付きだ)

「おーい、お前何ボーとしてるんだ。目的地はもう目の前なんだからさっさと行くぞー」

勇者が戦士を呼ぶ。

「置いていかれたら寂しがるんだから早くおいでー」

僧侶が戦士を煽る。

ムカッ

「お、俺がそんなひ弱な人間なわけないだろ〜」

少し骨格を上げ、目くじらにシワをよせ、額に怒りを表し、戦士はそう告げた。その後、少し急ぎ足で先行してる2人の元へ駆け寄る。

「お前ら、遂にこの時が来た。王には聞きたいことが山程ある。それを全部聞くことができると思うと胸がスカッとする」

(まあ、あの無能王が知ってるとは思えんがなら。どうせ今頃、女に囲まれて高笑いでもしてるんだろうな。ん、なんだろうか。今の言葉なんか胸に刺さるな)

勇者は自分の事を棚に上げたのだ。だが、無自覚だったため本人は気づいていない。

「よし、扉を開けるぞ」

そして、勇者は王の間の扉を開けた。そこに写る光景とは。

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