第4話
「この作戦なるほど!!」
「おお、貴様もわかったか?」
「はい、勇者の戦術を真似させてもらうのですね?」
「ああ、少し形を変えてな。似たような作戦でやられたら勇者もたまったもんじゃないだろ」
「おおーー。流石魔王様!」
「早く幹部、そして、魔族全てにこの作戦を実行する事を連絡し、準備を始めさせるのだ!」
「はっ、わかりました!」
「但し、準備の期限は1ヶ月後だ。それ以上はかけられない!勇者に感づかれると困るのでな1ヶ月が限界だろう。さぁ!伝えるのだ!!」
「はっ」
家臣は勢いよく作戦室を出て行った。
「我も準備をしなくてはな。やつを確実に倒すために…」
作戦は瞬く間に魔族全てに伝えられた。魔王軍は魔王が考えた作戦の準備に取り掛かった。
あれから2週間の刻が過ぎた。
バタっ
扉の開く音。
「魔王様!!」
「ん?何事だ?」
「はっ、お伝えしたい事があり参った次第です」
魔王は現在魔王集中室にいる。魔王集中室とは魔王が復活の際に使っていた部屋である。そこを魔王が改造して、自分が集中するための部屋にしたのだ。
今、その集中室に入ってきたのは魔王軍?魔族の幹部であるヴァルクリードである。ヴァルクリードは吸血鬼の長である。史上最強のヴァンパイヤとも呼び声高いほどの実力がある。それもそのはず、ヴァルクリードは吸血鬼で初めて太陽を克服した程の強者だからだ。そんなヴァルクリードが急いで魔王のいる集中室に入ってきたのだ。
「我がここにいる際はいかなる者も入ってくるなと命じていた筈だ。それを破ってほどの一大事が起きたと言う事だろう。なんだ、早く話せ。我も暇ではない」
「はっ、失礼ながら私が伝える役目を努めさせてもらいます」
「うぬ」
魔王は頷いてヴァルクリードに話してみろと合図する。
この時の魔王は精神統一をしていた。そのため、何もない殺風景な景色の中の部屋で座禅を組んで宙に浮いていた。だが、話を聞くために精神統一をやめて地に足をつけてヴァルクリードに詰め寄った。
「実は…我らの同胞が人族に捕まってしまったのです…」
「何!!」
(それはまずいな…作戦漏洩するかもしれん…同胞を犠牲にしてでも勝利しようとなど我は考えんぞ。どうにかして助ける方法はないか…)
「魔王様、どうなさいますか?」
「んーー」
魔王がものすごい怖い顔で悩んでいる。
「もし、切り捨てると言うのであれば内部にいる者にやらせますが…」
魔王は怒ったような顔で言い放つ。
「我は魔王だぞ!!同胞を犠牲にしてまで勝利を欲するわけがなかろう!!あの勇者とち…」
魔王は何かを言おうとして歯切れ悪く止める。
「どうかなさいましたか?」
(流石は魔王様だ。さっきの言葉流石としか言いようがない。これこそが魔王様の魅力であり、我々がついて行くに値すると思った器の持ち主)
ヴァルクリードがそう思ってる中魔王はある疑問を抱いた。
(我はさっき『あの勇者と違って』と言おうとした。だが、このセリフに我は違和感を感じた。勇者は我を討伐にあたって我が城に乗り込んできた時、我以外に被害を出さなかった。後で、確認したが我以外に被害は一切なかったらしい。我が寝室を燃やした以外は…おかげで我がコレクションが全て失われてしまった…本当にあの勇者許すまじ)
「魔王様??」
魔王はヴァルクリードに声をかけられて我に帰る。
「はっ、済まぬが考える時間をくれぬか?他の者にも呼びかけて打開策を考えてくれ」
「はい、申し受けいたしました」
「考える際は人命を1番に考えることだ。それを忘れないように皆に言っておけ」
「はっ、了解いたしました!」
そう言ってヴァルクリードは出て行く。
「済まぬがお前たちでなんとか救い出す方法を考えておいてくれ。我は今別件の方の事を考えなくてはならない」
魔王は腕をくんでもう一度考え込む。
どう言う事だ?結果的に見るとやつは我だけを狙っていたように見える。しかし、奴ら人族は我らを殲滅する事を狙っている。実際、そう言う風に教育も施している。ここ何百年も特に我らから人族に何かした覚えはないのだがな。確かに、我と勇者はどの時代でも戦い続けてきたが最近はマジでそれだけだ。マジで、勇者ども以外と争いをした記憶がない。何故、人族はもう近年では全く被害を出さない魔族を葬り去ろうとするのだろうか?勇者のほとんどは我と戦った後、魔族がそれ程の悪なのか?と疑問を持っていた。もしかしたら、人族は何者かによって情報を操作されているのかもしれぬ。たった1人だったが我の言葉を聞き入れ理解し友好を結んだ勇者もいた。あの勇者のことは一度戦い、酒を酌み合わせて以来一度して会うことはなかった。やつは我にもう一度会うと約束したのにも関わらずだ。何か不可解な点がある。ただの戦闘馬鹿以外にはある程度魔族について話をした事がある。思い当たる節があるような反応した勇者もいたにも関わらずこの現状だ。反応した勇者は1人としてもう一度我の前に現れることはなかった。あの強かった3人もだ。今考えると不自然すぎる。いくら、現役を退いたからといって我に興味を示さないのはおかしい。今の今までこんなこと考えたこともなかった。奴ら人族は何かを隠している。人族同士で。特に隠しているのは勇者の歴史だ。勇者の歴史は我の歴史の一部だ。つまり、我の一部が分かれば魔族がどう言う存在かも分かってもおかしくない。まず、我は今までに勇者を殺したことはない。殺す程の価値がないのも確かだが、生命を無闇に奪うような野蛮な行いをしていてはいけないと思ったからだ。それでは、人族と変わらない。我らは人族とは違う、恐ろしい生命体ではないと証明するための努力をしてきた。他社の命をいただく時は祈りを捧げる。最低限の必要な命以外は無闇に使うことはしなかった。我はそうやって人族と和平を結べるように努力をしたつもりだった。だからこそ、勇者の命も一つの変わらない命だ。無駄にはできない。だから、今までボコボコにしたとしても殺さず生かしてやった。だが、あまりボコボコにもしないで威嚇だけで終わらせると舐められるためいつも戦闘の形をとって相手の心を折るように戦ってきた。心の折れた勇者をたくさん見てきた。我はその勇者の姿をみて人族が変わるかと思っていたが全く変わることはなかった。それどころか、こっちが何もしていないのに関わらず人族は我ら魔族の命を貪っていった。勇者の修行のためやレアな部位のために。自分たちの私利私欲のために。我は奴らと同じ道を辿ってはダメだと思い今のような形に完全シフトした。おかげで、人族の文化にどっぷりハマる事になるとは思っていなかったが。
ここで、本題に戻ろう。確かに、人族には不自然や点が多くあるがそれは過去のことである。今の勇者をどうするかの方が重要だ。中々の切れ者だから。まあ、人族の事を調べるのは今回の戦いが終わった後でもいいだろう。
あの勇者は何を考えているのか。全く読めん。今までの勇者と違いすぎて参考にならん。部下に勇者の事を調べさせたが今までの勇者の常識が全く当てはまらない。まず、歴代の勇者達も人族の習慣に少し疎かった。何故、疎いのかがわからなかった。他の民は全て人族の教育に染まっている。だが、何故かわからなかったが勇者達だけは違った。あの強かった3人もそうだった。勇者は全体的にいって話を聞き入れないわけではない。勇者は勇者なる才能が見出されてから魔王を倒すためだけの教育を済されると聞いた。そこにヒントがあるのかもしれない。一般の民であればうけるはずだった教養を勇者達のみは施されてきていなかったのかもしれない。んー、調査する必要があるな。本当であれば我から出向いて調査をしたいところだが復活したばかりでまだ使えないスキルが多くある。ステルスやオーラロス、トランスフォーム、など戦闘系以外のほとんどがまともに使えない状況だ。今ギリギリ使えるスキルシークレットウォールで魔王城仮全域に我が力がわからないようにする遮断バリアを張り巡らしているぐらいだ。決戦までには全てのスキルと魔法を使えるようにしなくてはならないだろう。調査の方は我が頼れる優秀な部下にやらせるとしよう。きっとやつなら捕まった仲間もバレることなく解放することができるだろう。そしたら、下手に動くよりはなるべく分かりにくい場所に隠密して作戦実行まで潜むべきかもしれん。
魔王がそんな事を考えていると扉が勢いよく開く。
バタンッ
「魔王様!!」
入ってきたのはいつもの家臣だ。
「なんだ次は貴様か。なんのようだ?こっちは考えなければならないことが山積みで忙しいのだ」
「それが…人間どもが各地異議の調査を行なっていると情報が入っているのです!」
「そんなことは既に報告で聞いているそれがどうした?正直、こっちの作戦が台無しになる可能性が高くなる可能性があるから遠慮願いたいのだがな…あっちにも策士がいるようだ」
「そのことでも報告があります」
「そのこと?早く話してみろ」
「はっ、実は…本当に申し上げにくいのですが…」
魔王は眉間にシワを寄せて問う。
「何があった?」
厳しそうな表情で魔王が家臣に向かって言った。
「・・・妖怪族が全滅いたしました」
「なに?!そんな馬鹿な!!そんなことがあるはずが…」
魔王は仲間がやられた事にひどく動揺した。
(何故だ?!あっちの対応策は事前に入手し、備えていたはずだ!人間どもにやれるなどあり得ない!)
「九尾などの強力な力を持つものもいただろ。そ奴らもやられたのか?」
「…はい」
「そんな馬鹿な!!今の時代に九尾をやれる手練れなど勇者ぐらいしかいないと思うが…」
「詳しい状況を説明させていただきます。これはある者からからの情報です。九尾達協力な力を持つ妖怪達は村とは違う場所で遺体が発見されました。他の者たちは村の中で悲惨な状態で全員見つかりました…」
魔王は声が出ないようだった。しかし、歯を噛み締めて無理やり声を出した。
「虐殺…何故このようになった…奴らにも十分気をつけるように伝えていたはず」
「はい、報告で妖怪達は完璧な対策をしたと聞いておりました」
「それなのに何故…」
魔王は物凄く動揺していた。生命を重んじる魔王にとってはとても衝撃的な事だった。
「もう一つの報告をさせてもらいます。今回の人族達の策を考えたのが例の勇者だという情報を手に入れました!!」
「何?!勇者だと!!」
(あの勇者が動いただと…我が存在に気づいたとでも言うのか?いや、それは絶対…捕まった我が同胞達…)
魔王は今回の出来事を聞いて焦りを表情で露わにした。
(勇者め〜〜。だが、なんだろうか?このモヤモヤは)
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