第3話
「魔王様!勇者討伐はどう言った手筈を考えておられるのですか?」
「取り敢えず、一対一の状況に持ち込めるように策を練ろうと思う」
「一対一?」
「うぬ。正々堂々と一対一で戦える場面を作ろうと思うのだ。あの様な不意さえ疲れなければ面と面合わせて戦えば我が負けることはないだろうからな」
「ですが、魔王様、あの剣はどうなさるおつもりですか。一応、あの剣の一太刀で魔王様はやられてしまったのですから…」
「ふん、あんなもの我にしっかりと意識があって情報を判断できる状態なら余裕で避けられるわ」
「おぉー、流石魔王様!今度こそ勇者を蹴散らしてください!」
「ははは、任せろ!だが、あの勇者は何を考えているか読めんからな念入りに準備するのに越したことはないだろうな」
(魔王様がかなり警戒なされている。あの勇者の略は魔王様を悩ませるほどのものということなのか…)
この2人は仮の拠点地で地層の地の仮魔王城の仮玉座の間で会話をしていた。
その頃、勇者はというと…
「ははは。愉快愉快」
女に囲まれてハーレムを楽しんでいる。
「飽きないのだろうか」
戦士が不思議に思う。
「飽きないのでしょう。でなければ、この5年代わり映えのない様子を我々は見せられないでしょう」
僧侶がそう答えた。
「その通りだな。考えるだけ無駄だな」
(少しでもいいから勇者としての心を思い出してほしい気もするが魔王が倒された今やることもないからな。勇者の好きにさせても問題はないか)
そんなことを思いながら勇者を見ていた時、
バタン!!
「勇者様!!我々にご教授を!!」
勇者の間の扉を開けて神父が入ってきた。
「ん、お前は確か王の側近の…」
勇者は扉を音を開けて入ってきたためその方向に目を向けて、言葉を発する。
「おぉー、勇者様ーー」
神父は勇者を崇めるように手を合わせ膝を落としこびる。
「で、なんだ?何しに来た?」
「勇者様の知恵をお借りしたく参った次第です」
「俺の知恵?」
勇者が疑い深そうな目をしながら言った。
「はい」
勇者は周りの女達に少し離れるように指示し、神父の話を聞く体勢に入る。
「それで?」
「魔王軍、つまり、残党の魔族を殲滅させるのに力を貸して欲しいのです」
「嫌だ。その話は前にもしただろう。俺が前言ったやり方をギルドの連中と連携してやれば楽勝に殲滅できると言っただろう。報酬の方ケチったり、ギルドに手を借りなかったとか言うなよ」
「いえいえ、そんなことはしておりません。しかし、魔族が殲滅できていないのは事実です。勇者様に前ご教授された方法を使ってすぐに魔族の殲滅に入りました。ですが、最初の頃は効果的にその作戦は聞いたものの最近では全く通用しなくなったのです」
「俺のところに来るの遅くないか?もっと早く来れただろ」
「そのことに関しては勇者の言葉に返す言葉がありません」
(返す言葉はないか…意味がわからんな。何かしらの理由があるから俺のところに来るのが遅れたんじゃないのか?じゃなきゃ、ここに来た辻褄が合わない。面倒くさいからこの話は流してやるか)
「それで、今どう言う状況なんだ?」
(俺の前の策で通用しなくなる?そんなはずはないはずなんだけどな)
神父を顔をあげ、話を始める。
「私、そして、王様はあなた様の考えを聞きすぐに行動に移しました。魔法陣に魔族を閉じ込め、魔法等で相手を弱体化させてから外からの魔法攻撃やスキルを放ち地味だが確実に除去する方法を我々はご教授されてからすぐに実行しました。最初の方こそ魔族を蹴散らすことに成功し、皆このままならすぐに魔族を滅ぼすことができると喜んでいました」
*魔族とは他の世界観でいうところの魔物全般を指す言葉。スライムとかも魔族の部類に入る。ヴァンパイヤも魔族の部類に入る。一応、この世界ではスライムもヴァンパイヤも同じ部類にまとめているのだ。
「ですが、段々と退治する数が減っていきました」
「退治できる数が減った?お前らが減らしたからじゃないのか?」
(チッ、こんなことになるぐらいならもっと定期的に状況を報告にこいとか言っておいた方がよかったか?いや、それじゃ意味がない)
「いえ、魔族が目の前にいても逃げられているのです。まず、我々の調査した結果による魔族の総数の数に全く届いていなので魔族の数が減ったからという理由は当てはまらないのではと…」
「なるほど状況はわかった。魔族にはどんな感じに逃げられるんだ?」
「もう一つお伝えせねばならないことがあります」
「ん、なんだ?」
「最近は魔族を確認することができていません」
「なに?魔族に逃げられるとかそういう問題の前に魔族の影すら見ないというのか?」
「はい。どこを探しても見る影も無いのです。明らかに何者かが魔族に指示を出し逃げ道を作っているようにしか見えないのですが…」
「まだ、魔族を統率するような者が残っていたのか」
「その通りのようで…勇者様一つお聞きしたことがあるのですが何故勇者様は魔族の殲滅にで向かわないのでしょうか?何故魔王だけ倒してその後のことは放置という形を…」
(そりゃあ、今の生活が最高過ぎるからだろ。誰が見たってそう思う)
戦士が小さな声で呟く。
「俺はこの勇者の役目とやらを終わらせたかっただけだ。魔王を倒す事が勇者の使命だ。魔王以外は正直どうでもよかった。魔王を倒せば俺の勇者としての役目は終わりだからな。魔王1人を倒すだけなら倒す算段もついたしな」
「勇者様…」
「そういうことだ。この王国が勝手に勇者が魔王を倒さなきゃいけない使命を課すために自由を奪われた。俺は心底そんな人生が嫌だと思ってな。だから、魔王を取り敢えずさっさと屠ったわけだ」
「おい!そんな事初耳だぞ!」
戦士が驚いたように勇者に問う。
「当たり前だ。こんなことにならない限り誰にも話す気はなかった。勇者が自由を獲得するために魔王討伐したなんて聞かれたら恥ずかしいからな」
「あぁぁ」
(あの勇者にそんな考えがあったのか。今までただのチャランポランだと思ってて悪かったな)
「俺が魔王を倒さなきゃ永遠に勇者は自由を失い続ける。俺は今のうちに断ち切っておきたかったんだ。…全く無能な国のせいで恥ずかしい事を話す羽目になったぜ」
この時、ある1人の男からの勇者に対しての評価が爆上がりしていた。
「うぅぅぅ、お前がそんなこと考えてたなんてな…俺はすごく感動してるぞ…」
戦士が1人号泣していた。
「私は当回しに自分が自由になりたかっただけのように聞こえたけど…」
魔法使いがボソッと呟く。
「なにをーーお前あんな勇者からあんないい言葉が飛んできたんだぞ!それを感動しないでどうする…」
戦士が反論する。
「あんな勇者だからよ…何か企んでるんじゃないかって気になるのよねー」
魔法使いが勇者を睨みつける。
勇者は微笑んで返す。
「そう睨みつけるなよ。可愛い顔が台無しだろ」
「あんたの周りにはもうたくさんの可愛い女の子がいっぱいいるでしょ」
「おいおい、酷い言いようだな。まともに会話できるからってそれはないだろ。せっかくの高待遇を俺が手引きしてやったんだから感謝してほしいぐらいだよ」
ムカムカ。
魔法使いは勇者の言動に苛立った。
「へぇ〜。よくもまあ〜、そんな事が言えるわねー」
「なんだ、まだ待遇のことに不満があるのか?俺とお前たちに格差があるのは当たり前だろ。俺がいなきゃ魔王は倒せなかったんだから。俺がなんでさっき感謝してほしいぐらいだと言ったか分かるか?」
「…分からないわ」
「それはお前らは本当であればこんなとこにはいれなかったからだよ」
「「「!!!」」」
勇者は薄く笑みを浮かべながら、
「当たり前だろ。俺がお前らを選ばなければこんないい待遇も受けられなかったんだから。お前ら自分の事を少しうぬばれてるんじゃないか?俺が偶々お前らを顔と適正で選んだだけなのに。別に魔王討伐にお前らは必要なかったんだぞ?俺のチャージに時間かかるから育成時間できたから元々が上位の魔法使い共を使わなかっただけでお前らじゃなくてもよかっただよ」
勇者は哀れみな目を向けながら魔法使い達3人にそう言い放った。
3人は落胆して膝をつく。
「お、おい。それは言い過ぎなんじゃ…」
戦士が中に入って宥めようとする。しかし、
「俺とお前らの見てる景色は違うだよぅぅ!!!これは3人だけに行ってるんじゃない!!俺以外の全ての人間に行っている!!」
勇者は立ち上がって叫び放つ。
「…勇者様とにかく落ち着いてください!」
神父が勇者を抑えようと入る。
「俺は極めて冷静だ。俺はあの馬鹿3人に教えてやっただけだ」
「冷静になられたのであれば私の話を…」
「お前らの話は聞く気はない。俺は王に魔王討伐に行くにあたってある約束をした。これは書面でも残っている。勇者という役職の廃止を俺は提案し、王は魔王討伐に成功した暁にはそれを受理するといった。俺は勇者でも何でもない」
「そんなこと言わないでください!あなたは我々にとって英雄と同じ存在!!」
「じゃあ、俺は英雄だな。勇者じゃない。俺は今回の件に関して俺から出ていく気はない。…だが、アドバイスとしては全世界領域の調査と王国のガードを堅くするようにだけは王に伝えろ。魔王はもしかしたら生きているかもしれない。その可能性を捨て切れないからな。もしくは、魔王レベルの人徳者が現れたのかもしれない。注意することに越したことはない」
「は、有り難きお言葉!このお言葉は国王陛下に早急伝達いたします」
(なんやかんや面倒見がいい人だ)
「勝手にしろ」
「はっ」
神父はそう言って出て行った。
「勇者様、お優しいですね」
僧侶が勇者にそう言葉を投げかける。
「…俺以外の人間が考え方が浅すぎるんだよ」
「私も戦士もわかっておりますよ。あなたは昔からとても心優しい方だと。…だからこそ、魔王しか討伐しなかったんですから」
「・・・」
戦士は僧侶の言葉を聞いて渋い顔で黙る。戦士も勇者の性質はわかっていたからだ。戦士がハーレム状態の勇者をよく思っていなかった理由は修練をサボっているため体が鈍っているのではと心配していたからこそだったのだ。
「「「???!!!」」」
3人は僧侶の言葉を聞いて口を開けてただただ驚いていた。
「あの勇者が優しい?」
「修行あんなに厳しかったのに?」
「だからこそ魔王だけ?」
3人の頭にはクエスチョンマークが飛び交っていた。
「僧侶…俺はそんな人間なんかじゃない。本当に優しいやつが魔王を討伐するわけない。まず、人族の教育が間違っているんだよ…」
勇者は何やら深刻そうな顔で気になるようなセリフを言う。
「??それはどう言う…」
魔法使いが聞こうとしたとき、
「もう話はやめだ。俺は寝る。今日は疲れた。全員解散…1人になりたい気分だ。誰も俺についてくるなよ」
そう言って勇者が寝室に移動する。
その場にいたのは疑問符出るいっぱいだった。
「まだお昼を過ぎたばかりだと言うのに勇者様はどうしたのかしら…」
勇者の周りにいる女の1人が心配そうにする。
魔王サイド
「魔王様これは…」
魔王が作戦室で紙を広げている。
それを魔王の隣で見ているいつもの家臣。
「完璧な作戦だ。確実にあの勇者の息の根を止める。ははは」
魔王の計画は少しずつ動いていた。
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