第2話
今回は勇者の話。
「ははは、愉快だ」
今馬鹿笑いしていたのは魔王討伐に初めて成功した勇者だ。
「馬鹿笑いとはなんだ」
おっと、気づかれるとは。
「ふん、俺は魔王討伐後からずっと機嫌がいいんだ。ほっといてくれ」
まあ、勇者のことはほっといて、今の勇者の状況について説明しよう。よく言われるハーレム状態になっている。勇者は魔王討伐の実績によって莫大な富を得た。皆が想像できることをこの勇者はやったのだ。
(俺の当初の計画通りにことが進んでしまった。魔王討伐、その後はハーレム生活。俺の想像通りの生活だ)
「ははは。お前ももっとこっちによれ」
「はい、王子様」
勇者の周りにはすでに綺麗な女たちが5、6人いる。
「あれ?勇者様、何故今も剣を腰に携えていらっしゃるのですか?」
「あー君は最近入ってきたから知らないのか。一応念のためだよ。いざって時に大きな力が必要になるかもしれないからね。それに念のため備えているんだよ」
「流石勇者様ですね」
そう言ってその女は大きな胸のをチラつかせながら勇者に寄り添っていく。
「あー、全く勇者がアレでいいのかねー?」
「まあ、魔王倒したんだから許してあげても…」
「たしかにあいつの貢献度はでかいからな。あいつがいなきゃ絶対魔王なんて倒せなかっただろうな。だが、作戦がなー」
「たしかに褒められたようなものじゃなかったけど、あれは確実に倒せる方法だった」
「実力は認めざる負えないな」
戦士と僧侶がそんな話をしていると
「何言ってるんですか。私たちはあの戦いが終わった後お払い箱にされたじゃないですか」
「だが、ここにいることは許されてるからな」
魔法使いが話に混じってきた。答えたのは戦士だ。
「なんでこんな立場にされたことを納得されてるんですか」
「そうですよー。私たちあの人に、お前たちにも勝ったあかつきには地位を与えようと言っていましたがまだもらっていません!」
今度は賢者が主張する。
「流石にこの仕打ちはおかしいんじゃないですか?」
魔導士も同調する。
「だが、奴がいなければ俺たち、いや、お前たちなんてただの有象無象だったのだから王から報酬がもらえてよかったではないか。もらった金で一生暮らせてもおかしくない」
「でも…」
「ズバリ今だから言うけど君達3人が選ばれた理由って顔がいいからなんだよ」
と僧侶が言う。
「「「えええ!!!」」」
「そうだったの…」
「え、私達こそが適任だから選んだって言ってたのに…」
「私達とは…」
魔法使い、賢者、魔導士、3人全員が落ち込んでいる。
「…あまり言いたくはなかったが俺たちむさ苦しい男は俺たち2人で十分だとか言ってお前たちを選んでいたからな」
戦士が追い討ちをかける。
「私達は戦闘に花をつけるために選ばれたって言うの」
「そうそう」
「「「ぐっ」」」
僧侶の何気ない返事でさらに刺さる。
「お前もその辺にしてやれ」
戦士が止めに入る。
「分かった分かった。でも、君達が適正の魔法を持っていたから選んだって言うのは本当だよ」
「え?」
「君達3人以外にこっちの望む条件を満たしていた人物がいなかったんだよ」
パァァァァ
3人の顔が一気に明るくなる。
(条件というのが、討伐の際に使う魔法の適正を少しでもいいから持っていて可愛い女の子というものだったというのは黙っておこう)
「だって、勇者様に選ばれてからの1年はとんでもない地獄のような特訓の日々だったもの。今の話を聞いて少しは許してあげる気になったわ」
魔法使いがそう言い放つ。
(あーそう言えば、あの人がこんなこと言ってたな。『あいつら顔で選んだから才能がなさすぎてやばいな。ちょっとは適正あるしいけると思ったがまさかここまで全員酷いとは…3人全員かなりの特訓をしてもらうしかないな。これも全て魔王討伐のためだ。厳しい特訓も許してくれるだろう。俺が絶対に魔王を倒せると保証してるんだから』これも黙っておこう。教育がかなり大変だったと。それでも、まだ適正が少しあったから助かったって言ってたな。これでもし全く適正のない奴を顔で選んでたら魔王討伐なんてできなかっただろうって。んー、こういうことは全部伏せておくのが吉かな)
僧侶は心の中にそっとしまった。
「実際やつの作戦は目を見張るものがあった。今までそんなことをして魔王を倒そうとする者などいなかった」
戦士が語り出す。
「私たちはよくわからないんですけど。作戦説明されて、ずっと特訓して本番迎えて、勇者様が魔王あっという間に葬ったくらいにしかわからないんですけど」
魔導士がそう言う。
「5年前の魔王討伐までの1年間はとてつもないものだった」
ここで回想。
勇者は突然こんなことを言い出す。
「俺は魔王討伐に行くのをやめる」
いきなり言い出すものだから当時仲間にいた戦士と僧侶が驚いた。今までに魔王討伐という勇者の任務を責務を放棄したものはいないからだ。2人とも勇者が壊れたかと思った。元々、元来の勇者と全く性質が違っていたため異端児としては扱われていた。
まず、勇者は基本的には光属性を持って生まれるのに対して今回の勇者は光属性を持って生まれてこなかった。何故か炎と水という真逆の属性を持って生まれたというある意味珍しい勇者が生まれた。勇者の選定の仕方は代々受け継がれている大聖堂にある勇者の証と呼ばれるものがある。それが光った時、新たな勇者がその時代に生まれたことになる。そして、その証が導きとなる光を放つ。光の先にいる者こそがその時代の勇者なのだ。
それでは、今回の勇者の異常さを伝えよう。まず、炎と水の2属性。属性を二つ持つこと自体は珍しくない。しかし、この世の記録にこの二つの属性を同時に持って生まれた者はいないとされている、いや、されていた。二つ目に女へ異常な欲。今までの勇者のほとんどが女への興味が全くなく欲が全くない者ばかりだった。その法則を見つけてからは勇者が生まれたことがわかると近くに年の近いを女を置くようになった。流石に勇者が赤ん坊の時においても仕方ない。勇者が少しは喋るようになったぐらいの段階で女の幼馴染という者を作り、子孫繁栄を促してきた。そうでもしないと勇者は全く女に今日がないため結婚などできないのだ。だから、ほとんどの者は半ば強引に結婚させたりした。あの史上最強と呼ばれた勇者達は違ったと伝承では伝わっている。3人共自分にとって愛しき者が存在し、その者と添い遂げたと記載されている。他の者は一切女という生物に興味を示さなかった。なかなか、国の方も大変だったようだ。それほどに勇者は戦いという者に意識がいっていたのだ。しかし、皮肉にも魔王には一切通用していないのが現実である。ここまでのことを踏まえると女に興味が少しでもある勇者が魔王に対抗し得る力を持っているように思える。三つ目が性格である。今までの勇者は厳格な性格を持った者が多かった。優しさや正義感が強い者もいたが基本的には厳格な性格の者たちだった。しかし、この時代の勇者は違った。まず、面倒くさがり。修行をサボりまくったり、魔法の勉強はテキトーに終わらせたり、とにかく厳格な性格があるとは思えない立ち振る舞いばかりしていた。しかも、女への欲は強くスケベな行動を起こしたり問題ばかり起こしていた。いわゆる問題児だった。だが、流石の勇者も歳を重ねるうちに魔王討伐という目的だけはしっかり意識していた。魔王討伐をそれなりに強く意識するようになってからはある程度は真面目に修行をこなすようにはなっていた。
そんなある日だった。勇者が突然魔王討伐をやめると言い出したのだ。それを聞いたものは驚き帰った。しかし、中には半ば呆れるものもいた。すぐ近くでいつも戦ってきた戦士がその1人だ。だが、周りの者はすぐに勇者が魔王討伐を諦めたことに対して方向転換した。あの勇者だから当然か、別に無理にこの代で倒す必要ないしな、あの勇者は元々魔王を倒すほどの適性はなかったなどと囁かれた。あの勇者がそんなことだけ言われて終わるタマではない。まず、そんなこと言われようとどうでもよかったのだ。勇者はやめると宣言する時には既に魔王を倒す算段があったのだ。算段がついた時勇者は魔王を倒すための準備をしなければ討伐を成し遂げることができないことに気づいたのだ。ただ修行したところで魔王は倒せないと判断した勇者は修行をやめ、自分にとって魔王討伐に必要な人材をまずは集め始めたのだ。勇者が仲間を集い始めたということで多くの者が押し寄せたためすぐに人員を準備することができた。勇者が何故美少女軍団にしたのかというと勇者の趣味だ。修行の際はむさ苦しい男どもしかいなかったためパーティーに華を持たせたかったのだ。だが、勇者は慎重な性格な上に誰かが犠牲になったり、余計な傷を負うことを嫌う。特に女の子に対してはその傾向が強かった。しかし、魔王討伐に選んだ人材はか弱い女の子達だった。勇者のポリシーに反する行いだった。しかし、勇者の魔王討伐計画に仲間そして自分も含めて一切のダメージを負うことなく魔王を倒すことができると算段が実は付いていた。実際、ノーダメージで魔王を討伐を成功させた。魔王が倒された後魔物達は魔王が討伐されたということで意気消沈になっていたため、難なく魔王城を脱出することに成功した。魔王が再生復活しないようにと死んだはずの魔王の遺体に追い打ちをかけるように炎で焼き尽くす事までやってのけた。魔王の復活に時間がかかったのにはこういう背景があった。体が元のいい状態で残っていれば復活して、傷を塞ぐだけでよかった者が勇者が用心深いせいで体が粉々にされて元の体に戻るまで再生するのに時間がかかったため魔王は復活するのに時間がかかってしまったのだ。
魔王討伐後の勇者は先に説明した通り堕落した生活を送っていた。
これが勇者の概要だ。
「説明ご苦労だった」
と勇者がドヤ顔でねぎらった。
はて?誰が説明をしていたのだろうか?
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