魔王が威張り腐った勇者を倒す話
sueoki
第1話
この話は魔王が勇者に復讐する話である。
5年前、魔王がある勇者によって討伐された。
その勇者は讃えられ、地球全域にその名が轟いたほどだった。
噂では魔王討伐を終えた勇者は大層もてはやされたそうだ。
「なーーーにが勇者だ!!くそっが!!」
「魔王様落ち着いてください!」
「あ〜〜〜分かっておる!こんなことをして腹立ても無駄ということは!!」
皆さんお気づきだと思うが、魔王が生きているのである。魔王は勇者に討伐されたということになっていたが果たして嘘だったのか?
「魔王様、今生きているのですから取り敢えずはいいじゃないですか」
「いいわけあるか!!」
ドンッ
魔王は玉座に力を込めて拳を叩きつけた。
「あのクソ勇者が〜〜。我を不意をついて倒したからといっていい気になりおって〜〜」
魔王は怒りをあらわにしている。
「でも、魔王様が復活なされて私たちはもう本当に本当に…」
家臣が泣き出した。
「泣くな。まさか、ここまで時間がかかるとは思わなかったが予定通りだ」
「そうですね…最近になってやっと喋れるようになったばかりですも…グスグス」
「ああ、我の復活が遅れたのも全てあの勇者のせいだ!我らがやつに討ち取られたせいで我が最強のパッシブスキルを使う羽目になってしまった」
「魔王様のパッシブスキル?」
「ああ、人智を超えたスキル、その名もサタンズリボーン。我は一度だけだが、死んだとしても生き返ることができたのだ」
「そんな理を超えたようなスキルをお持ちしてたんですね!!」
「その通り、生物という理から外れた我にだけ与えられた最強のパッシブスキルだ。まさか、こんな形で使うことになるとは思わなかった」
「私はまたまた感激しています。流石は我らが魔王様です!」
「そう言って私を褒め上げって何も出ないぞ」
「そんな、私は魔王様がこうして無事なだけで嬉しいでございます」
今までの会話でわかると思うだろうが、魔王は相当な人格者なのだ。部下に慕われ、魔王というほかの魔物達を指揮する立場にいながら確実な指示と政策を立てられるとても優秀でとても頼られいい魔王なのだ。
この事実を人間側で知るものはほとんどいない。
「勇者め〜。我を倒したとしてもてはやされ悠々自適の生活を送ってると聞いたぞ」
「はい、今現在勇者は王に魔王討伐した報酬として、勇者専用の城と一生困ることがないだけの財産を与えたそうです。使い魔からの情報です」
「なんとも腹ただしいやつだ。絶対に復讐してやる。我を殺したことを後悔させてやるような死に方をさせてやる。フフフ」
パチパチ。
「おー魔王様!とても魔王らしい笑い方をしてらっしゃいますよ」
「我魔王なのだが、いつもはそんなに魔王っぽくないか?」
「はい!」
「そこまではっきり答えるか」
「魔王様はあの勇者の闇討ちのことどう思っていますか?」
「ん〜〜。我は討伐される理由がなくないかと思ったな。最近は人間襲ってるわけじゃないし、魔物のみんなも平和に暮らしてるし、悪いことしてやつはお仕置きしてるし、ここ最近は我悪いことしてないよな?」
「はい、そうですね」
「最近じゃ、我も人間の文化にのめり込んでお忍びで人間の街に遊びに言ってしまうほどだったものだからな」
「魔物の皆様はどちらかというと人間と和平を結びたいと考えていた方が多かったですからね」
「その通りだ!ここ最近じゃ、我が勇者と戦う以外人間と魔物の争いはなかったはず」
「私達は魔王様が勇者によって一度殺された後、魔王様が死ぬ前に残したメッセージを元に行動しました」
「それがどうした?我がいなくなれば貴様らを殲滅する動きがあると思ってな。先手を打たせてもらったつもりだが」
「はい。魔王様のご厚意のおかげで我々はなんとか一切の犠牲を出さずに済んでいます」
「なら、よかったではないか」
「はい、それは良かったのです。ですが、我々は魔王様を討伐した勇者とそれを取り囲む人間について調べあげだのです。いざという時が来た時のために」
「おーー。貴様らそんなことを〜。我はなんていい部下を持ったんだ。それで結果は?」
「人間共は憎っくきことに魔物は悪だという教育を全ての民に施しておりました」
「なんだと!!そんなことを…だからか、あまりにも長い年月が過ぎたのにもかかわらず人間の魔物への認識が変わらないのは。まさか、教育という面にまで盛り込んでおったとは。我々より遥かにタチが悪い」
「ほんとですよね、魔王様」
「ああ、あのクソ勇者がなんたって寝込みを襲うような奴だから。なんたってあの夜・・・」
ここで5年前回想。
我が人間の文化であるファンタジー小説とやらを読み終わり就寝し、我が寝静まった後だった。
奴ら勇者は我が城全域にサイレントの魔法を施し、城中の音を消した。
音を消したということは聴覚からの情報が入ってこないわけだ。そのことに気づいた警備の者から混乱していき指揮系統が混乱した。だが、そこは大きな問題ではなかった。勇者達は自分達が侵入したという事を我に伝わらないようにしたのが1番大きな役割だったと後で気づかされた。音が無ければ我を起こすことも一苦労だ。そして、我らは油断した。音を利用した戦略制をとってくると思ったからだ。だが、実際の真実は違う。勇者達一行は自分達にステルスの魔法をかけ自分達の姿を隠していたのだ。しかもかなり高位のステルス魔法だ。その前に放ったサイレント魔法もかなりの規模のものだった。
奴ら音だけでなく自分達の影も形も消し去ったのだ。完璧な作戦だった。しかも、気配を消す魔法もかけていたため我々が勇者達を気づくのは困難だった。やつらの目的は最初から我、魔王の討伐のみだったのだ。
勇者共はこっそりと我が寝室に忍び込み不意打ちを一撃我に食らわして我を討伐したのだ。
だが、勇者の攻撃ごとぎでは我にダメージは入らん。我にダメージを食らわすことのできるやつなど今までに数えるほどしかいない。もっとも、素の実力で我と戦えたのは3人しかいないがな。500年前に戦った3人の勇者達だな。あの、世代の勇者は3人いた。3人の勇者が協力して我に挑んできたが、なんと我と互角以上の戦いをあの3人の勇者はしたのだ。実際の事実、我が強すぎて勇者程度の力など弱過ぎて我の対抗戦力として数えるには力足らないところだった。我が勇者の戦いが始まってから我は五割より強い力を出したことがなかった。五割もあればどんな勇者も倒すことができたからだ。あの3人以外にも複数の勇者のパーティーで挑まれたことがあったが五割ぐらいの力で軽くあしらってやった。それほどの力が我にはあった。皮肉なことに勇者は魔王討伐に全く役に立たないのが事実だった。だが、あの3人の勇者は違った。しっかりと覚えてる。約500年前に戦ったあの勇者達は今まで戦ってきたどの勇者とも違った。いや、今回の勇者も他の奴とは違ったか。あの3人の勇者は我に本気を出させたほどの実力があった。一人一人で見れば3から4割ほどの力でも倒せるほどの力のように我は読み取ったが、3人で我と戦っている時我は初めて手加減というものをしなかった。
いや、できなかった。できないほどに奴ら3人は強かった。それでも、奴ら勇者は我を倒しきるまでの力がなかった。そのため、勇者達は魔王の討伐を後世に託し、引退した。と後で聞いた。今考えれば奴らは意外と話も通じそうなやつらだったから、人間と魔物で和平を結ぶことができたのではないだろうかと今更になって思う。
だが、そんなことは叶わず、奴ら勇者達は自らの力を一本の剣に注いだ。正確には勇者達の力を一つに集めて協力な勇者専用の剣を作った。奴らは剣を作った後は勇者としての仕事を引退したと聞く。そして、問題がその剣!!
今回我がやられたのがその剣!!前振りが長くなってしまったが我がやられてしまった原因が全てその剣にある。その剣がとにかく協力なのだ。今までも1番の才能を持つ勇者が3人も集まり力を集結させて作った剣だ。流石に我にも届くような代物ができてしまったのだ。そのおかげで、その後に挑んでくる勇者全員がその剣を持っているため中々大変だった。勇者単体の力はそこまでではないがその剣の力が想像以上に絶大である程度の実力のある勇者だと我にダメージを与えられるようになってしまったのだ。それまで我はほとんどダメージを負うなんてことはなかった。
あの剣の秘密はまず勇者しか使えないというところだ。そのため、勇者に反応してその剣は力を発揮する。しかも、その剣の属性が光なのだ。我が苦手とする属性なのだ。しかも、我の力を持ったとしても全く折れない。我が闇属性ということもあり、光属性の勇者と光属性で通常ではありえない火力の出る剣で斬られるということもあり我がダメージを負ってしまうということが発生してしまった。勇者自体は雑魚だが、剣の火力が半端なくてなぁ〜。まあ、それでも、一度も致命傷になりかける攻撃すら食らったことがないのだがな。所詮はその程度の威力なのだ。人間が作ったにしてはとてつもない剣なのだが、我に当てはめてみれば大したことはない。まともに食らってもそこまでダメージは入らない筈だったのだが、あのクソ勇者の攻撃は我を一撃で倒してしまったのだ。
「魔王様、色々とありがとうございました」
「うむ、お主も聞いていたか。あの剣さえなければあの作戦も意味がなかったと言うのに」
「あの剣にはまだ力があるのですか?」
「1番問題の力がある。あの剣は力を溜めれば溜めるほど威力が増すのだ」
「えぇ、なんとそのような力があるのですか?!」
「ああ、そうだ」
「ですが、魔王様は大変お強いではありませんか。その魔王様が到底やられるようには見えないのですが」
「今までの勇者は戦う最中に力を剣に溜め込み剣のパッシブスキルで力の大増幅が発動して、アクティブスキルでその力を斬撃に込めて放出する。ただただそれをしていたに過ぎなかった」
「おお、それはなんともすごい能力。で、最後のお言葉の意味とは?」
「問題は今回の勇者は我との戦闘の直前や最中に力を溜めていたのではなく、あらかじめ剣にかなりの力を溜めてきていたのだ。一撃で我を倒せるほどの力を溜めた状態で我が城に乗り込んできたのだ」
「なんと言うことですか!!」
「今考えれば勇者がそのようなことをしている節は部下からの報告で予兆があった。くっ、人間の文化などに踊らされ注意が散漫になっていた。しかも、我の身体は全盛期に比べるとかなり衰えてきていた。そこをつかれた」
「魔王様…」
「部下の報告でここ一年くらい勇者が魔王討伐に関する動きが全くないと聞いた時少しおかしいとは思ったのだが…そろそろ勇者も諦めたかと思って油断した」
「これからどうなさるのですか?」
「まずは監視からの報告を聞いて状況を整理する。我直属の監視役だ。我が死ぬ前にやってほしいことは全部伝えてある」
「おぉ〜、流石魔王様!」
「そして、なるべく早く勇者のところに乗り込んでやつを葬ってやる」
(やつは多分一年ほどあの剣を全く使わずに肌身離さず持っていることで力を蓄えたのだろう。はっきり言って闇討ちで倒したことは褒められたことではないが他の部分は今までの勇者とは違うところだ。しかも、やつの対応属性は炎と水の対立した2属性。勇者は元来光属性だと思っていたがやつは違う。その点においても他の勇者とは違うということか)
「待っておれクソ勇者よ。我がすぐに始末してみせよう」
(やつ自身の実力は大したことない。あの剣封じれれば楽勝じゃ。だが、前回はこの油断でやられたからな。精進せねば)
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