第20話  Dinner(夕食)

僕と山田は、ルームカードキーを持って部屋を出た。なんだか僕は山田の隣にいると安心してくる感じがした。二人の出会いから、今この瞬間まで一緒にいられたことに対して感謝したい。


山田「なんだか今、酒井さんの横にいると照れちゃいます。」


僕「何でですか。今まで通りと変わりませんよ。」


山田「なんだか恋人として意識しちゃって。俺が酒井さんを守らなきゃって思っちゃうんですよね。」


僕「山田君の気持ちうれしいです。ありがとう。ずっと一緒にいようね。」


山田「俺はいつも酒井さんのくっつき虫ですから、一緒ですよ。俺、こんな気持ちになったのは初めてですよ。」


僕「こちらもですよ。こんな気持ちって初めてですよ。」


僕と山田は二人並んで夕食を予約してあるレストランへと向かった。落ち付いた電色になっている廊下は、ふかふかのカーペットになっており、なんだかバージンロードのように感じられる。この気持ちが幸せって感覚なんだろうか。


エレベーターを乗り継ぎレストランへと到着する。17:00からの回の方々と入れ替わりが始まるようだった。


入口のスタッフが僕と山田を席へとナビゲートしてくれる。案内された席は窓辺の席であった。なんだか夕間暮れの気配を感じながら、夕食が取れる席だった。僕は思わずラッキーと感じた。


入口から席までの間には、ビュッフェの料理がセンス良く並べられている。それだけでも箸が進みそうな感じである。さらに食が進みそうな小鉢でいろいろな食材が用意されていたりする。この景色を見ているだけで、空腹が満たされる感じがする。


山田「酒井さん、この席、窓辺でゆっくりできそうですね。ラッキーですね。」


僕「そうだね。山田君と僕のパワーでラッキーな席をゲットですね。」


そんな会話をしていると、僕と山田の席へボーイがドリンクのメニューを持って来てくれた。同時に本日のビュッフェの詳細を僕と山田へ伝えてくれた。


ボーイ「大変お待たせいたしました。ドリンクのメニューをお持ちいたしました。本日のビュッフェの内容のお伝えします。」


僕「ありがとうございます。よろしくお願いします。」


ボーイが本日のビュッフェの詳細を説明してくれた。1時間半の時間が設けられており、


フリードリンク以外は別途注文であった。一人一枚づつ木札が配られ、その木札でローストビーフを用意できるとのことだった。ビュッフェスタイルのためローストビーフも何度でもオーダーできるということだ。


僕と山田はドリンクのメニューを確認し、それぞれワインをオーダーした。今日は、二人の気持ちが確認取れた記念日だから、ワインで乾杯としようと僕は考えた。


僕「ボーイさん、ドリンクのオーダーをお願いします。白のグラスワインで、おすすめでお願いします。」


山田「ドリンクは酒井さんにお任せします。俺も同じものでOKです。」


ボーイ「かしこまりました。当店でおすすめの白ワインをご用意いたします。海の幸と相性のいいものをセレクトいたします。ご用意まで少々お待ちくださいませ。」


僕「よろしくお願いします。」


山田「よろしくお願いします。」


ボーイはメニューを下げ、ドリンクの用意へと向かった。僕と山田は早速、料理をチョイスとした。


山田「酒井さん、結構人いますね。」


僕「時間が時間だし、ちょうどいい時間帯だからね。それにしても食材のセッティングがきれいに並べられていて、景色もいいよね。」


山田「そうですね。そろそろ食材ゲットに行きますか。」


僕「時間も限られているしね。そろそろゲットしちゃいましょう!」


間もなくするとボーイが僕と山田のグラスワインを席まで運んできてくれた。僕と山田はまずは前菜が並べられているエリアへと向かった。どれもこれもおいしそうなものばかりだった。僕と山田は、とりあえず前妻の小鉢を5つ筒ゲットする。白身魚のお刺身が目に付いた。おそらく鯛なんだろう。


食材が引き立つように盛られている器も非常にセンスの良いものばかりだった。食事はまずは目に入ってくる器も大切だと思う。僕と山田はそれぞれの好みの前菜をチョイスし席へと戻った。


山田「いろんな食材があり、目移りしちゃいますね。」


僕「どれもおいしそうなものばかりだよね。じゃ、山田君と僕の出会いに乾杯としましょうか。」


山田「乾杯。」


僕「乾杯。」


山田「先ほど、デザートコーナーへも行ってみました。色とりどりできれいでしたよ。ケーキも何種類もあって、酒井さんもきっと満足されますよ。」


僕「デザートコーナーですね。後で行ってみます!まずはメインを食べないとですね。」


僕と山田はチョイスした前菜に箸をつけた。白身魚のお刺身を口に入れた瞬間、思わず僕は言葉がこぼれた。


僕「この白身魚のお刺身、新鮮で身がコリコリして、まじでおいしいですよ。山田君も取ってきた?」


山田「俺はまだです。酒井さんのをいただいてもいいですか。」


僕「もちろん。」


山田「なんだか恋人通しみたいですね。俺、こんなことをしてみたかったんですよね。」


僕は思わず山田も言葉に顔が赤らんだ。というかうれしかった。


山田「この白ワイン、結構おいしいですよね。」


僕「食事との相性がいいよね。」


山田「俺、ローストビーフを摂ってきます。酒井さんのも持ってきましょうか。」


僕「よろしくです。」


山田は席を立ち、ローストビーフを提供している場所へと向かった。その姿を僕は見ているとなんだか「ホッ」とする感じがあった。山田の放っているオーラが幸せ色を放っている印象を受けた。


山田がローストビーフをお盆にのせて席へ戻ってきた。


山田「酒井さん、お待たせです。おいしそうですよ。」


僕「いい香りだよね。ミントがちょっと入っている香草のソースだよね。ミントのさっぱりとした口当たりがローストビーフとの相性がマッチしているよね。」


山田「そのようですね。ミントがソースにワンポイント入れてますね。」


僕「早速いただきましょう。ビュッフェスタイルの夕食もいいものですね。」


僕と山田はそんな会話をしながら、さっぱりとした香草のソースのかかったローストビーフを堪能した。


山田「酒井さん。やっぱ、このローストビーフはおいしいですね。おいしいものを食べるとなんだか幸せな感じがしますよね。」


僕「食事でおなかを満たされると、幸せを感じるね。」


山田「食事もそうですが、酒井さんと一緒っていうのも俺を満足させちゃいますよ。」


山田からのグイグイとくる想いが僕はうれしいと感じた瞬間だった。


僕「今回の箱根旅行は、日本ってこともあるけど、今までの山田君との一緒の旅行とは違った感じがしますね。」


山田「そりゃそうですよ。俺の人生最大の告白もしたんですから。」


僕「そうだったね。お互いの気持ちがわかりあえてよかったね。」


山田「本当、そうですよ。気持ちは言葉にして伝えないと相手はわかりませんからね。」


僕「山田君の言う通りですね。」


山田「俺もたまにはいいこと言うでしょ!」


僕「そうですね。山田君の素直な気持ちが僕は好印象ですよ。人生はいろいろなことが起きますけどね。そんなところがなんだかワクワクさせられちゃいますよね。」


山田「そうですね。俺の気持ちを受け入れていただきありがとうございます。」


僕「そろそろデザートへ移りますよ。今度は一緒にデザートを取りに行きますか。」


山田「もちろんですよ。好きな人と一緒にお互いの好きなものを選ぶってなんだか幸せを感じますよね。」


僕と山田は席を立ち、デザートコーナーへと向かった。


デザートコーナーにはイチゴのショートケーキをはじめ、モンブラン、ミルクレープ、ティラミス、フレッシュフルーツ、杏仁豆腐などがセンス良く並べてあった。山田も僕の後に続いてデザートコーナーへやってきた。


山田「酒井さん、デザートコーナーはなんだか色鮮やかですね。見ていて満足しちゃいそうです。」


僕「デザートって、やはり華がありますよね。視覚と味覚、臭覚を満足させてくれますよね。」


僕と山田はそれぞれ好みのデザートをピックアップした。僕は、まず最初にフレッシュフルーツとした。第二弾でショートケーキをチョイスすることにした。最初に甘いものを食べてしまうと、フルーツのおいしさが分からなくなってくるからだ。食べる順序の大切である。僕がふと山田のチョイスを見ると、僕と同じパターンでチョイスしている。僕は心の中でこんなところも以心伝心なんだと不思議と感心してしまった。


山田「俺のデザートチョイスって、酒井さんとなんだかかぶっちゃいますね。」


僕「そうですね。というか、こういうところまで感性があっているんですね。」


山田「俺、なんだかうれしいです。食の感覚も酒井さんと一緒でよかった。食物の好みって結構大切ですよね。」


僕「そうだよね。なかなかここまで感性が合う人っていないんですよね。たぶん、初めてだと思うよ。」


山田「酒井さんにとって初めての人ですか。」


僕「そういわれるとなんだか照れちゃいますね。」


僕と山田はデザートの第二弾のチョイスへと向かった。お互い満足した。


山田「そろそろ食事を終わりにしますか。本当に満足しちゃいましたよ、俺。」


僕「そうですね。食べつくしたって感じですよね。」


僕と山田はそれぞれ席を立ち、一緒に出口へと向かった。二人そろってエレベーターホールへと向かった。


            

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