第12話 Today's inn(本日の宿)

山田「酒井さん、駐車場へ到着しましたね。時間もホテルのチェックインの時間に丁度いいころ合いです。このまま直行でホテルでもいいですか。ゆっくり箱根の温泉にでも浸かって疲れをとりたいんですけど。」


僕「山田君、OKですよ。チェックインの時間は15時ぐらいですよね。僕は、どのホテルか知らいないので山田君任せですが、いいんですか。」


山田「もちろんですよ、酒井さん。今回は俺から誘ったんで、俺がスケジューリングを担当してますからOKです。」


僕「了解です。それでは、今からホテルへ直行しましょう。箱根へ来たんだから温泉は外せないですよ。さぁ、レッツゴーとしましょう!ゆっくりと温泉に入るよ。」


僕と山田は車に乗り、本日宿泊予定のホテルへと向かった。芦ノ湖の駐車場からホテルまでは、10分程度だった。


山田「到着しましたよ。今回予約を取ったホテルです。ちなみに俺たちが宿泊するホテルの部屋には、個室の露天風呂付の部屋にしましたよ。」


僕「マジですか。個室に露天風呂ですか。初めてですよ。なんだかわくわくしちゃいますね。じゃぁ、山田君と一緒に入ろうかなって冗談ですけどね。」


山田「俺、酒井さんと一緒に露天風呂に入るつもりだったんですけど。」


僕「じゃ、山田君がそういうんだったら、一緒に入りましょうかね。男同士、腹を割っていろいろ話せそうですよね。温泉につかり解放されちゃいましょうね。」


山田「了解です。色々話せますね。」


僕は、なんだかBLっぽく感じてきた。僕も確かに山田のことは好きだ。でも僕の好きっていうのは、人として山田に魅力を感じているってことだ。恋愛感情ってことではないと思っている。山田はどう思っているのだろうかと少々確認したくなった。


山田「酒井さん、俺がチェックインしてきますね。さぁホテルに到着しましたよ。」


僕「山田君、よろしくです。」


山田「了解です。ここで待っていてくださいね。」と言いながら、山田はフロントへ歩いて行った。


大きな一枚ガラスの窓辺に並んでいたソファーへ僕は腰を掛けた。今回の滞在ホテルは、桃源台から歩いて5分程度のところに佇んでいる。もちろん、ホテルからは芦ノ湖が見える。それとこのホテルの名物は足湯である。インスタ映えする足湯がある。僕は山田と一緒にその足湯でカメラをカシャってしよう。その足湯のスポットは、今、僕が座っている席の目の前にある。


足湯は水盤の中心にあり円形の形をしている。青空からの太陽の光が、その水盤の水に反射し、キラキラと幻想的な景色を醸し出している。なんだか幸せだなって、この景色を感じていたところ、山田がチェックインを終え、僕の方へ歩いてきた。


山田「酒井さん、お待たせしました。食事の時間を聞かれたので19時にしちゃいましたけど、大丈夫ですか。」


僕「もちろん、OKですよ。19時だったら丁度いい時間じゃない?」


山田「俺もそう思っちゃいましたよ。その時間でリザーブしちゃいました。」


僕「夕食の前に、温泉へゆっくりと浸かって癒されたいですね。」


山田「俺も同感です。部屋についている露天風呂もいいですよね。どんな感じなのか楽しみです。」


僕「ホント、そうだよね。個室に露天風呂付いているって贅沢だよね。それにこの窓越しにある足湯のもよさそうだよね。なんだかすべてが楽しみです。山田君、セッティングをありがとう。」


山田「いえいえ、今までは、俺、すべてが酒井さん任せだったので、今回は俺が男を見せちゃいましたよ。」


僕「山田君も一人前の男になったね。頼もしい限りですね。成長した姿が、なんだかうれしいですよ。成長してくれるってうれしいですね。ハノイの飛行機の中で出会ったときには、少年のあどけなさが残っていましたが、今では大人びた青年って感じですよ。まさか一緒に箱根に来るようになるとは思ってもいませんでしたよ。」


山田「なんだか俺も酒井さんに認めてもらって感じがして、うれしいです。本当に酒井さんと出会えてよかったですよ。」


僕と山田は、それぞれの荷物を持ちエレベーターへと向かった。まずはエレベーターで一度下の階まで降りて、その後、別のエレベーターを乗り換えて客室へと向かうルートになっていた。僕と山田の今回滞在する部屋は、3Fの303であった。芦ノ湖畔がベランダから見える日当たりの良い部屋だった。


山田「酒井さん、この303号室が今回の部屋のようですね。じゃ、鍵を開けますね。」

といい山田はカードキーをドアにかざした。「カチャ」っと音がして、部屋の扉が開く。


僕「山田君、いい部屋だね。日当たりもよく、ベランダからの景色もいいよね。」


僕たちの部屋は、ドアを開けるとそのままベランダが見渡せる造りになっていた。その造りのおかげで部屋からの解放感は、十分すぎるものだった。


山田「酒井さんが気に入ってくれれば、俺はうれしいです。ただそれだけですよ。」


僕は部屋の窓を開けて、ベランダへ出た。ベランダには、陶器でできた露天風呂があり、お湯がかけ流しになっていた。


僕「山田君、この露天風呂もいい感じじゃないですか。箱根って感じですよ。芦ノ湖を眺めながら入れるって最高ですよね。」


僕はかなりテンションが上がっていた。その様子を山田も感じ取ってくれて、山田も満足げな感じであった。


山田「この風呂いいですね。陶器でできていてお湯のかけ流しのようですしね。このベランダからの景色を見ながら、お湯につかると疲れも吹っ飛んじゃいそうですね。」


僕の後ろで肩越しに山田がそう言っていた。なんだか僕は一人幸せを感じていた。


僕「山田君、ありがとう。こんな素敵な部屋をとってくれて。」


山田「いえいえ、そんなことないですよ。酒井さんに喜んでもらえることを考えていただけですから。」


僕「食事はレストランでするんですか。」


山田「そうですね。時間制みたいです。ビュッフェスタイルですよ。好きなものを好きなだけ食べられちゃいますね。」


僕「でも腹八分目がちょうどいいですよ。何事も満足するまで食べちゃうとなんだかむなしくなりますからね。」


山田「そうでした。思わず食べ過ぎちゃいそうでしたよ。」


ツィンベッドでそれぞれのベッドを決めた。荷ほどきを終え、部屋でホット一呼吸っている感じだった。


僕「ひと段落できたから、大浴場へ行ってみませんか。」


山田「了解です。ゆっくりと温泉につかりたいですね。食事前に一汗かきましょうか。」


僕「そうだね。ひと汗流したいですね。」


僕と山田は早速館内用の浴衣に着替えて、温泉街気分で大浴場へ向かった。僕たちの部屋を出て、エレベーターを乗り換え向かう。エレベーターの中には家族連れがいた。なんだか幸せそうで、見ていてほほえましい気分となった。


エレベーターが開き、僕は開くボタンを押し家族連れにお先にどうぞと声をかけた。男の子が「お兄ちゃん ありがとう」と言ってくれた。なんだかほほえましく感じた。


その子の両親も僕と山田に会釈をして先に降りた。


山田「先ほどの男の子はちゃんと躾られていますね。ありがとうって言ってくれてましたよね。なんだかほほえましくなっちゃいましたよ。」


僕「そうだね。、親の躾ってちょっとした時に出るんだよね。」


山田「さぁ、俺たちも大浴場へいきましょう。なんだか解放される感じですね。」


僕「そうだね。早く大浴場で温泉を楽しみましょう。」



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