第11話 Worship(お参り)
僕と山田は、九頭龍神社をお参りする前に、漲水で手を清めた。
僕はその瞬間、湖面より声が聞こえてきた気がした。低音のバリトンのような声だった。その音は、はじめ風に乗って僕の耳に入ってきたが、よく聞いてみると男性の聞き心地の良い声だった。
風に乗ってきたその声は、僕にこう聞こえてきた。「今日は良くおまいりへいらっしゃった。われは、そなたが来るのを待っていた。ありがとう。」といった声だった。
声が湖畔から聞こえてきたことは山田へは伝えなかった。僕は心の中で「僕もようやくお参りできてうれしいです。」と返事をした。
その瞬間、上空に一瞬龍のような雲が出てきた。その後、そう時間がたたないうちに快晴になった。芦ノ湖の湖面からはキラキラと太陽の光が輝いていた。それと同時に上空から光の筋がお社に降りてきた感じがした。
山田「酒井さん、なんだかほっとする空気感ですね。俺、なんだか眠くなってきちゃいました。」
僕「そうですか。そろそろ行きましょうか。僕もなんだか心癒され感じですよ。」
山田「了解です。」と、僕と山田は、先ほど通った木漏れ日がさす道を駐車場まで戻っていった。
木々の間を歩いているその間中、僕の中では、なんだかすがすがしい気持ちに満ち溢れていた。これはただ森林浴ができているからという感覚ではなく、まさに何かから解き放たれた解放感であった。
山田「酒井さん、木々の間にあるこの道を歩いていると、なんだかすがすがしさと気持ちがいい感じですよね。」
僕「そうだよね。樹々からのエナジーと芦ノ湖からのパワーがこの道には龍脈のように通っている感じがしますね。」
山田「それって、芦ノ湖の言い伝えが関係しているんでしょうかね。」
僕「そうですね。そこのところはよくわかりませんが、実際のところそういった目に見えない力も加わっているのかもしれませんね。その眼には見えないパワーっていうのは大切なんですよね。」
山田「なんだか箱根も神秘的な場所ですね。」
僕と山田は、芦ノ湖からのすがすがしいプラスのパワーを感じ取りながら、来た道を二人並んで歩いて行った。間もなくすると、先ほどの駐車場へ到着した。時間は15時を少し回ったところだった。
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