第9話 Beginning of the mystery tour(ミステリーツアー)

僕と山田は、芦ノ湖の湖畔の脇道から歩き始め九頭龍神社へと向かい、歩き始めた。山田がスマートフォンのナビで地図を確認しながら、僕をエスコートする一生懸命頑張っている姿が、若さっていいなという思いを感じさせた。


芦ノ湖の湖畔にある芦ノ湖プリンスホテルの脇道を入っていった。間もなくすると案内看板がり、九頭龍神社へのルートが記載あった。


山田「この地図に沿って行くと九頭龍神社と白龍神社へ行けますね。白龍神社は九頭龍神社へ行く途中にあるみたいですね。」


僕「僕は、初めて九頭龍神社へ行くので楽しみですよ。山田君が誘ってくれて、本当に感謝ですよ。こういったチャンスがなければなかなか箱根も来ませんからね。」


山田「酒井さんに喜んでいただければ、俺は、それだけでうれしいです。満足です。だって、俺は酒井さんのくっつき虫ですから。」


こういった若さみなぎった山田の直球すぎる気持ちが、僕にはうれしく感じた。僕と山田は、進行方向左手側に湖畔の波音を聞きながら、右手側には秋の気配を醸し出している森林を目にしながら歩いて行った。


山田「こうやって森林の道を歩いているとなんだか気持ちいいですよね。森林浴って気持ちいいのがわかりますね。先に見えるあの建物が九頭龍神社の入口のようですね。この箱根園ってなんだか九頭龍に守られているって感じがしますよね。神聖な空気に感じちゃいます。空気が、いい意味で張りつめていますよね。」


僕「入口はそれっぽいね。雰囲気もかなりあるよね。」


僕と山田は、とりあえずその建物へと向かっていった。建物の中にはカウンターがあり

そこで入場料を一人500円支払うようになっていた。


山田「この先に白龍神社と九頭龍神社があるんですか。」と、カウンターの女性へ確認した。


受付女性「そうですね。九頭龍神社は道なりに歩いて10分程度ですね。白龍神社はこの建物を出て箱根園に入るとすぐそばにありますから。あそこに見える小さな祠が白龍神社なんですよ。」


僕「そうなんですね。小さなお社ですが、なんだか迫力というか異次元のパワーを感じちゃいますね。」


山田「そうですね。もっと大きな社かと思っていましたが、白龍神社のお社はなんだかこじんまりしていて、かわいい感じですね。」


僕「このお社からもかなりのパワーを感じちゃいますね。やはり、神様の力ってなんだかすごいですよね。このパワー。畏敬の念を感じちゃいます。」


白龍神社のお社は確かに、全体は白くなっていた。鳥居も白くなっており、統一感があった。お社の側に大きな木の切り株があった。おそらくこの切株が、白龍神社の本体のように僕は感じた。


山田「酒井さん。この白龍神社ってなんだか趣がありますね。ちなみにこの切株って白龍神社の本体なんでしょうか?」


僕「そうだよね。おそらくね。」


僕と山田はお社と切株に手を合わせた。その瞬間、なんだか心穏やかになる気がした。それと同時に僕と山田の体を包むように、今年の初秋の風が芦ノ湖の湖畔から吹いてきた。その風は、僕にとっては心地よいものだった。よく言われることだが、神社などへ参拝し、突然、風などが吹いていると神様に歓迎されているといわれる。まさにそのような状況であった。僕はなんだか感動した。やはり今回は箱根へ来てよかったを感じた。


僕と山田はその爽やかな風を全身にまといながら、二人並んで歩いていった。僕は僕の隣にいる山田から、なんだか僕に対して好意がある空気感を感じ取った。それは異性に対してのその気持ちの空気感に似ている。


僕「山田君。芦ノ湖から吹いてきた風はなんだか爽やかですよね。さすが箱根って感じですよね。こういった空気感って僕は好きですよ。山田君はどうですか。」


山田「俺もこういった空気感って大好きですよ。」


僕「こういった感覚も僕と山田君って好みが似ているんですよね。」


バリ島渡航の際に、山田との出会いの意味を知らされて以来、なんだか親近感が今まで以上に沸いてきている。この気持ちは山田もおそらくシンクロしているような気がした。


というのもなんだかバリ島から帰国して以来、更に僕になついているような気がしたからだ。僕と山田は、並びながら秋の気配を感じている森の道を歩いて行った。


山田「酒井さん、まもなく九頭龍神社だと思います。おそらくこの先でしょうね。」


僕「そうなんですね。今日は天気がいいので、なんだかこの森の小道もマイナスイオンたっぷりでさわやかですよね。森林浴ですね。辺りの木々からパワーをいただいちゃいますよ。」


山田「芦ノ湖畔からの風がなんだか、心地よいですよ。というか酒井さんと一緒だから、俺、気分は上がっちゃいますよ。」


僕「そうですか。そう思っていただけると嬉しい限りですね。」


そんな会話を交わしながら、二人歩いていると気が付くと、目的地の九頭龍神社へ到着した。九頭龍神社までは、木々に覆われた小道をゆっくりと歩いていく。途中、ハイカーとすれ違いお互い、会釈をして通り過ぎる。こんなさりげない挨拶もまた旅情を感じる。


白龍神社から九頭龍神までは、10分少々の道のりであった。芦ノ湖を左手に眺めながら歩いていると、なんだか幸せな感じが僕の心の中に沸いてきた。自然からのエナジーを吸収しているような感じだった。樹々の間から芦ノ湖が見える道へ差し掛かった時に、湖畔からすがすがしい風が、またそっと僕へ吹いてきた。


山田「酒井さん、ようやく到着しましたね。こちらが九頭龍神社ですね。なんだかすごくプラスのパワーを感じますね。酒井さんは、何か感じられますか。」


僕「僕は、目も前の大きな木からのパワーをすごくプラスのエナジーがヒシヒシと伝わってきていますよ。山田君はどうでしょうか。」


僕はその木がなんの種類かはわからないが、確かにこの木がこの地のパワーをみなぎらせるスポットになっていることを感じ取れた。


山田「俺は特に今のところは感じないです。」


僕の目の前にある大木から、すごくプラスの気を感じていた。芦ノ湖畔からのパワーと九頭龍大神からのパワーもすごく感じていた。この箱根という土地を守っている、いや富士山を通して日本を守っているような気がしていた。


ただ、いまの僕に言えることは、この九頭龍神社のこの厳かな空気感は大切にしたいということだった。


自然の中では、人間は全く持もって無力である。芦ノ湖の湖畔に佇む社で僕と山田が、今一緒にいるという奇跡の現実も大切にしたいと思った。その時間が本当に貴いもだと感じた。山田が僕へ話しかけてくる。

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