第3話 Waiter(待ち人)

僕と山田は、いったんそのカフェを離れ、僕は打ち合わせ現場へと向かった。次回の講演会の打ち合わせも順調に終了した。これでほっと一息つけると僕は感じた。


時間は14時30分を過ぎていた。今日はこれで仕事は終了なので、山田とケーキを食べに行こう。僕は道玄坂上の交番前を小走りに通過し、マークシティ内を通り、山田との待ち合わせ場所のハチ公口へと急いだ。


渋谷の街並みは、いつものように人々でごった返している。この混雑ぶりはいつものことだ。人々はみな、スクランブル交差点で信号待ちをしている。もちろん僕も同じである。


スクランブル交差点が青になり、いっせいに人々は、蜘蛛の子を散らすように方々へ散らばっていく。ハチ公の銅像の前に、僕は山田の姿を発見した。ハチ公の待ち合わせ場所では、皆いろいろな思いで、待ち人を待ち、その相手に会えるのを今か今かと、その時を待っているのであろう。


僕は人並みに流されるように交差点を渡った。


ハチ公前で待っている山田のところへ僕は向かう。なんだかドキドキする感じがする。この感情は一体何なんだろうかを僕は不思議に思った。


僕「山田君、お待たせ。」


山田「酒井さん、俺、酒井さんに早く会いたくて待っていました。」


僕「どうもどうも、じゃ、ケーキかパフェでも食べに行こうか。新宿高野でいいですか。タクシーを拾っていきましょうか。」


山田「了解です。俺、山手線でも大丈夫ですよ。」


僕「山手線でもいいんだけど、ホームまで上がるのがかったるいから、このままタクシーで新宿まで行きましょう。そちらのほうが時間的にも早いしね。」


山田「酒井さんって、大人ですよね。タクシーを使って新宿へ行くなんて。学生の俺では思いつかないと思います。」


僕と山田は、スクランブル交差点でタクシーを拾い、明治通りを通り新宿まで向かった。


僕たちの乗車したタクシーは明治通りを進んで行った。間もなくすると、新宿三丁目交差点へ到着した。タクシーを止め、下車した。丸井デパートの前を横並びに僕と山田は二人並び、歩いて行く。


僕「山田君、到着しましたね。」


山田「はい、渋谷と同じように新宿も人がたくさんいますね。東京都内はどこに行っても人だらけですね。」


僕と山田は新宿高野へ向かった。


店へ到着した僕と山田をボーイが席へ案内する。この店を選んだのは、こちらのパフェは、本当に絶品だからである。特にマスクメロンパフェが僕の好物である。マスクメロンの噛んだときの触感が何とも言えず僕は好きだ。


なんだか人の出会いというかそんな感覚に似ている。僕と山田は、席へ案内され注文をした。メニューを見ている山田の目がキラキラとし、どのパフェにしようかと迷っている姿も弟っぽくてかわいいと思った。もちろん、今回は、僕と山田はマスクメロンパフェをオーダーした。


僕「山田君、渋谷で何をしていたんですか。結構、時間あったよね。遅くなっちゃってごめんね。」


山田「渋谷の街をぶらぶらしていました。渋谷って、今、注目のスポットだから、いろいろなお店があって楽しかったですよ。IT企業の方々も多くて、なんだか最先端って感じの雰囲気を味わっていました。それよりも酒井さんと会えるのが楽しみでしたよ。」


僕はなんだか二人の会話は、恋人どおしの会話のように思えた。


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