第4話 ❀❀❀最終話❀❀❀
その手紙を枕元に置いて眠った、そんな時に限って夢をみる、父さんと母さんの夢だ。
夢の中の2人は何も言わないけれど優しく微笑んでいた。
それから毎日その絵を見ながら考えていた。
にわかに信じ難いことなのだけど、あの日一緒に虹を見たあの人はきっと嘘はつかないのだと思った。
夜勤明けの今日この思いを伝えるために不動産会社へと向かった。
待ち構えていたかのように扉を開けてくれた男性は笑顔でこう言った
「どうやら決心がついたようですね、どうぞ中にお入りください」
ソファーに腰掛けて待っていると小さなマグカップに入ったコーヒーを私に手渡してくれた「砂糖とミルクはどうしますか?」
「ありがとうございます、ブラックで結構です」
そう言いながらカップを受け取った。
深煎りのコーヒーが私の決心を後押ししてくれるようだった。
「ずいぶん悩みましたし、未だにすべては信じ難いことなのですが、是非申し出を受けさせて下さい」
そう伝えると笑いながら男性は言った
「そりゃ僕も信じるまで時間はかかりましたよ、だって不思議な事ばかりですからね、でもきっとあのお2人はその答えを喜んでおられると思いますよ、実はあのお2人はうちの両親の古くからの友達でして、僕も子どもの頃はよく遊んで貰ったものです……ほんとにあったかいご夫婦でした、思い出話はこのくらいにして、入居を決めて下さりありがとうございました、早速補修工事も始めさせて貰います」
「いえあのままで結構です、というかあのままがいいんです、幸い私は手先が器用なので自分で住みやすいように変えていきます」
その日から私が帰る場所はあの喫茶店になった。
━━━━数年後━━━━
「ママお空が綺麗だよ」
娘の
店先の赤いベンチはそのままに店名を『虹色のユメ』と変えた私はここでコーヒーを入れてたくさんのお客さんに囲まれている。
そしてあの絵はこの店の一番目立つ所で私たちを見守ってくれている。
引っ越す前に、安田さんが最期を迎えた施設を尋ねた。
湖畔に近いそのホスピスには優しい笑顔が溢れていた。
この絵と同じ風景そのままに……
「パパにこの虹の絵をプレゼントするんだ」
スケッチブックを抱えた私の愛し子は赤いベンチに座り空を見上げていた。
あの日のように綺麗な虹を……
❊おしまい❊
虹色の扉は誰かの心を開いてくれる~そして優しさもくれるんだ あいる @chiaki_1116
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