第3話 ✣✣✣優しい手紙✣✣✣
「時間はたっぷりありますどうぞゆっくり読んで見てください」
そう優しく微笑みながら男性は席を離れた。
男性は一緒にレターナイフも渡してくれたのでそれで封を開けた。
『びっくりさせてごめんなさいね、あの日一緒にみた虹は美しかったわね、あの絵も貰ってくれてありがとう、主人もきっと喜んでくれてると思うわ、実は私と主人はずっと子どものころからのあなたを見守っていました、私たちには子どもがいました、小さな頃に悲しい事故で亡くなったのですが、同じ頃に両親を亡くされて泣いているあなたを見掛けたのです、小さな公園のブランコで1人で寂しそうに漕いでいるあなたが愛おしくなってしまっていたのです、あの店の前を通るあなたをいつもみていました、そして主人も亡くなり私も病に倒れたのです、不思議な事に私の魂はずっとあの場所であなたを見守り続けたのです、そしてあなたともう一度出会えてあの虹を一緒に見れたのです。楽しい時間をありがとう、そして今度巡り会う男性はきっとあなたを愛して幸せにしてくれるわ』
信じられない手紙を読み終えた私の目からは何故か涙が溢れていた。
小さな頃に公園で1人でブランコを漕ぐのが唯一の楽しみだった。
両親が亡くなって引き取られた親戚の家には少し年上の女の子がいたけれど、仲良くなることもないままに、高校を卒業すると同時に家を出て1人で暮らしていた。
どうしてこんなに不幸なのかと両親のお墓で泣き崩れることもあったし、死にたいと思う事も何度もあった。
でも今看護師として働いているからこそ命を繋いでいけてるのだろうと思う。
そんな事を思いながらこの手紙を読んだ。
しばらくしてドアがノックされた。
「読まれましたか?私は手紙の内容などは聞かされていませんが、もう1つ託された願いをお伝えしなければなりません、是非あのお店を引き継いで欲しいのです、もちろん今のお仕事は続けて頂いてかまいませんし、あの店の奥にはあまり広くはありませんが、住居スペースもあります、そこに住んで頂きたいのです、もちろん老朽化してるとこなどは直させて頂きます…如何でしょうか?」
突然の申し出に言葉を失っていると
「店の営業をなさるかはおまかせ致しますしお仕事を退職されるまで放置していても構わないと聞いておりますし、資金も充分にお預かりしています」
「すみません、少し考えさせて下さい、近いうちにまた返事に伺います」
そう返事をして家路を急いだ。
あの絵を見たら何かが分かるかもしれない、そう思って歩きながらポケットに入れた手紙を優しく握った。ほんのり温かい手紙を…
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