第29話 終わらぬ誤解
ぽわー。
頭ふわっふわな状態で私はシュリンガーの居る病室から退室します。
もうふわっふわのとろっとろ状態です。どれくらいふわっふわかと言うとすっごいふわっふわで凄い状態です。あれ? 何言ってるんでしょう私? すごい頭悪い事言ってる気がします。っていうくらいふわっふわなんです。
「ぽわーーー」
間抜けな声を出しながら、私は夢遊病者みたいにふらふらとお城の回廊を歩きます。ふらふら、ふらふら、ふらふらです。
「えへ。えへへへへへへ~~」
かと思えばにへらととても殿方には見せられないような顔で笑っちゃったりもします。鏡なんて見なくても分かります。今、私は女の子がしちゃいけないような笑い方をしていると!!
「あいたっ!」
そんなふうに歩いているからか、何もないところで転んでしまいます。まったく、我ながらドジっ娘です。てへぺろです。
「………………っじゃないですよわたしぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!! あああああああああああ!!!」
痛みで少しだけ我に返った私は転んだ状態で床をどんどんと叩きます。
「結局なにも謝れてないじゃないですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! なーにが『えへへ』ですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
色々あって私とシュリンガーは結ばれた。
それ自体はすごく嬉しい。私も彼の事が大好きだ。
あの堅物なシュリンガーにあそこまで想われているのも嬉しい。絶対に幸せにしてあげたいと思う。
だけど――
「それとこれとは話が別なんですよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
彼と結ばれて私は幸せだ。胸のぽかぽかが止まらない。幸せだという気持ちが溢れてくる。
だけど彼に対しての罪悪感もどばどばと溢れていて、胸が苦しくてたまらない。
「もういっそこのまま秘密にしちゃいましょうか? でもでも、もしバレたら……うぅっ」
思わず身震いしてしまう。
まったく……物語とかならお互い危機を乗りこえた果てに結ばれてハッピーエンド。となるはずなのに……なんなんでしょうかこの茶番。
実際は勘違いの果てに勝手に危機に陥ってなんやかんやで結ばれてハッピーエンドです。なんですかこれ!? どこの笑い話ですか!?
「そもそも、私のドジがきっかけなんですからやっぱり謝らないとですよね……」
私があんなマヌケなドジを踏まなければシュリンガーはあんなに傷つくことはなかった。そう思うと罪悪感で押しつぶされそうだ。だからこそ、私は彼が目覚めてすぐ謝罪しようとしたのだ。
だというのに……、
「あそこまでうまく行かないなんて……いや、上手くいったといえばうまくいったんですけどね? ふふ、ふふふふふふふふふふ」
先ほどのシュリンガーとのやり取りを思い出すと、幸せな気持ちになる。
あんなの反則ですよぅ。あんなにつっけんどんだったシュリンガーがあんな……。『好きだ。愛してる(キリッ)』なんて。どれだけキュンキュンさせてくれるんですかもおおおお!!
これがギャップ萌えというやつだろうか。普段ツンツンしていた彼があそこまでデレデレ状態なのを見ると愛しさが止まらない。
「ってだからそっちに行っちゃだめですってば!!」
またもや夢の世界に生きそうだった私自身に待ったをかける。
「はぁ……。どうしましょう」
その日、デヒュールヒーズ城の一角ではだらしなく笑ったりいきなり叫びだしたりと奇行を繰り返すカルシアの姿を幾人もの兵士が目撃するのだが、それはまた別のお話。
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