第223話 いや……おまえらの理屈なんて知るか。
「所詮は下等な
艶やかな黒いローブを纏うのは、眼窩に赤い光を灯す金色の骸骨――
ここはガルナッシュ連合国の北東部にある荒地であり、さらに北にある辺境の大森林地帯を抜けて、彼らはガルナッシュ最北の都市イルズベリアに迫っていた。
闇の魔神に仕える筈の魔族が、人族と手を結ぶなどと――裏切者どもを皆殺しにしてやると、意気込んで聖王国に向かった『
冥府の魔神の声により、それを知った他の
「このように、我ら
青白い焔に包まれた血まみれの甲冑の男――否、甲冑に宿る死霊が放漫な言葉を放つ。彼は『
「ヤルド……カッテハユルサヌ。ウラギリモノドモハ、ユウシャトテヲムスンダノダ……」
軋むような呻き声が重なり合う声――『
全戦力を一カ所に集中して都市を一つずつ滅ぼしていく……単純な作戦だが、膨大な数の壁と強大な
イルズベリアまでは、あと数キロというところであり。今夜のうちにイルズベリアは地上から姿を消すだろう。都市の防壁など
死の饗宴の始まりを思い浮かべて、
「何事だ……」
ザウエルが
しかし、この状況を創り出しているのは巨大生物などではなく……漆黒のハーフプレートを纏い、黒く光るバスタードソードを手にした魔族の女だった。
「この力は……まさか魔王が復活したのか? いや、待て……勇者パーティーの者が魔族に化けていると考えるべきか? 何れにしても……もう少し情報が欲しいところだ」
ザウエルは側近である
「これほどの
暫し思考している間に、今度は右側から轟音が鳴り響いた。
ザウエルは反射的に音のした方向に視線を向けて――思わず大口を開けて言葉を失う。
轟音を発した者の姿は、一見するとザウエルと同族のような金色の骸骨ではあったが……サイズが桁違いで、全長が十メートルを超えていた。さらには
まるで冗談のような巨大な
「何なのだ、あの化物は……
数十体の
その余りにも派手な戦ぶりに気を取られていたせいで気づくのが遅れたが。最初に前線に現れた魔族の女――メリッサは、今も同じように周囲の
(このままでは……さすがに不味いか。ヤルドと『
そんなザウエルの心の中の舌打ちが聞こえたかのように――
「貴様は本当に魔族か……それても勇者が化けてるのか? まあ……どっちでも良いか。どうせ俺に殺されるんだからな!」
『
「キサマハ……アンデッドハナイ。ニセモノダナ……ホンモノノオソロシサヲ、オシエテヤロウ……」
ほとんど同時に、怨念の集合体である『
青白い焔を纏う戦斧『魂喰らい《ソウルイーター》』の超重量級の一撃を――メリッサはバスタードソードを両手に持ち替えて受け止める。
「ほう。俺の一撃を受け止めるとは……やはり貴様が勇者か!」
『
一方、怨念の集合体である『
冗談みたいな『ラブリーラビット』のパワーも相手がアストラル体では効果がなく。本物の
「さすがは……一応は
『
致死性の超広範囲魔法である『
他の
しかし、ザウエルとて最上位魔法を発動するまでには時間が掛かるから、
そして、約五分間に及ぶ長い詠唱を終えて、ザウエルが『
「……!」
声を発せないザウエルの抗議など完全に無視して――アリスは不満そうな顔で言う。
「あのねえ……ロザリーにメリッサ? メリッサが面を喰らってるのは解るけど……ロザリーは遊び過ぎよね? たかが
何を寝言を言っているのだと、ザウエルは思っていたが――
「ア、アリス……僕にも言い訳をさせてくれないか! 余りにも手応えがなくて……何か隠しているんじゃないかと、警戒していたんだ」
「ロザリーちゃんも……そうですの。たかがエナジードレインくらいで『ラブリーラビット』の魔力を奪える筈がないのに、無駄な事をしてるから何か企んでると思ってたんですの!」
「だったら……時間の無駄だから、さっさと倒しなさいよ?」
『
「ど、どういう事だ? 我は……」
『
「何言ってんのよ……そのままの意味だけど?
アリスの言葉を証明するように――
「僕も……そろそろ本気を出さないとね!」
黒いバスタードが膨大な魔力を放ちながら、『
「
ロザリーと同化した『ラブリーラビット』は――天使の輪と悪魔の翼を持つ巨大なゴスロリ幼女の姿と化して、『
「ワレハ……オンリョウノシュウゴウタイデ……ナニヨリモ、ジュンスイナアンデッドノハズナノニ……」
「だから……頭が悪いのが致命的なのよ。
幼女に嘲笑われながら――『
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