第24話 再会の想い
「じゃあ、そういう事だから……絶対に忘れるなよ!」
王宮のバルコニーから、カイエは王都の夜空に飛び立つ――
呆然とする人々を置き去りにして、カイエが降り立った場所で待っていたのは四人。
エスト、アリス、エマと――もう一人は純白の長い髪とドレスの美女だった。
「あんたねえ……また随分と派手にやってくれたわよね? カイエは、こういうのが趣味な訳?」
呆れ顔のアリスに、カイエは苦笑する。
「そう言うなって……俺だって、やり過ぎたとは思ってるよ?」
「へえ……どうだか?」
疑わしそうな顔をするアリスに、エストがフォローを入れようとするが――
「まあ……そのくらいで止めておいたらどうだ? とりあえず……私は奇麗なものが見れて満足してるよ!」
「うん……そうだよね!」
花火を思い出してうっとりとするエストとエマの二人に――アリスは一層呆れるばかりだった。
「我は……アリスとやらに同意するがな?」
白い髪の美女が口を挟む――光沢のある髪と、磁器のように滑らかな肌……そして完璧なプロポーション。まるで彫刻のような完璧な美貌を湛える美女は、金色の瞳でカイエを睨む。
「あのなあ……アルジャルス、おまえは部外者なんだから黙ってろよ?」
カイエに文句を言われて――白い髪の美女、神聖竜アルジャルスは不敵に笑う。
「そんなことを言って……本当に良いのか? おまえは我の願いを一つ、どんなことでも叶えると言った筈だな?」
「ああ、そうだな……でもそんなこと、今は関係ないんだよ!」
カイエは何食わぬ顔で言い放つと――三人の方に向き直った。
「エスト、アリス、エマ……ローズが待ってるから、そろそろ行こうか?」
カイエの言葉に――三人はそれぞれの思いを込めた笑みで応えた。
※ ※ ※ ※
「……カイエ!」
対応に戸惑う衛兵など完璧に無視して――牢獄を破壊して救い出してくれたカイエに、ローズは歓喜の表情でしがみつく。
「カイエ! カイエ! カイエ……」
ひとしきり抱きしめてから……潤んだ瞳でカイエを見上げて、唇を重ねようとするローズに――
「ちょっとさあ……ローズ? 劇的な再会みたいな雰囲気出してるけど……あんたたちが離れていたのは、せいぜい一日ってとこでしょう?」
ジト目で見ているアリスに、ローズは頬を膨らませる。
「……時間なんて関係ないわ! 私とカイエは、無理矢理離れ離れにされたのよ!」
「でもねえ……ローズ? それについては、私たちにも言わなきゃいけないことがあるんじゃないの?」
アリスはニッコリと笑ってローズに近づくと――その頬を思いきり引っぱたいた。
「この、馬鹿ローズ! ……エドワードを殴って、あんたが捕まったて聞いたとき……私がどれだけ心配したか解ってるの!」
人目など一切関係なく――アリスは大粒の涙を流しながら怒っていた。
「アリス……その、私……ごめんなさい!」
ローズもボロボロ溢れ出す涙に堪え切れずに――アリスに抱きついて号泣する。
「……本当に馬鹿よ、ローズは……でも、私にだけ謝ったって……みんなだって……どれだけ……」
「……そうだよ、ローズ! 私だって……わああああ!」
感極まって泣き出したエマの肩を、エストが優しく抱き寄せる。
「……エマ、今日は……今日だけは、泣いても良いんだ……」
そう言うエストの頬にも――熱いものが溢れていた。
そんな四人を尻目に――アルジャルスは一人、冷めた顔をしていた。
「……何だよ、アルジャルス? 騒がしくて興覚めしたって顔だな?」
いつの間にか隣に居たカイエが、
「いや……そういう訳ではない。生命が持つ感情を否定するほど、我は無粋ではないつもりだ。そうではなく……」
複雑な表情を浮かべるアルジャルスに――
「だったら、何なんだよ? もしかして……羨ましいとか?」
カイエが何気なく言った言葉に――アルジャルスは意外なほど激しく反応する。
「……き、貴様という男は……どうして、そのようなことを……」
あれ? まさか図星なのかよと、カイエは唖然とするが――
「……あ、ああ、そうだな! 今夜は興覚めした! 人間などが居る場所に、長居するものではないな!」
そう言うなり、アルジャルスは突然姿を消すと――それ以上何も言わずに帰ってしまった。
「……ホント、何なんだよいったい?」
全く、訳が解らないと呆れるカイエだったが――
傍らで互いを抱きしめ合う四人を眺めていると――まあ、こんな夜も悪くないかと思ってしまった。
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