第11話 地下迷宮とは
暗黒乙女モードのローズを宥めるために――カイエとエストの二人は散々苦労する羽目になった。
ようやくローズが機嫌を直すと、エストはキッチンで三人分の紅茶を入れて戻ってくる。
「そうか、明日は二人で
食後の紅茶を飲みながら他愛もない話をしているうちに、カイエとローズが
エストも最近は王都に籠っていたから、正直に言えば同行したいと少し思っていたが……これ以上話をややこしくならないように黙っておくことにした。
「だったら
この世界にも冒険者ギルドがある。依頼者から受けた
その収入源は、
冒険者には持ち帰ったものをギルドに売る義務はないが、専門家であるギルド職員への信頼と、一括で買い取ってくれる利便性から、全てギルドに売却する者が多い。
そんな冒険者ギルドにとって
だからギルドは自ら報酬を出してまで、
「なるほどね……でも、そんなレベルの
ローズが『退屈な場所』と言うくらいだから、明日潜る予定の王都に近い
「確かに王都の近くには存在しないが……多少時間を掛けてでも、カイエとローズにとっては行く価値がはあると思う」
エストの意外な言葉に、ローズが首をかしげる。
「私たち二人に価値があるって……どういうこと?」
「単純な理由だよ。
「まあ……悪くない提案だな」
勿論、カイエは冒険者の称号になど興味はないし、降り掛かる火の粉など払えば良いだろうと考えていたが――聖王国の人間であるローズのことを考えれば、たとえ『
「だけどさ……まずは遠出をするためにも金を稼ぐ必要があるから。明日は予定通りに、近くの
「まあ、そうだな……お金を稼ぐことが目的なんだし、カイエがそこに拘る理由も理解しているつもりだ。……差し出がましいことを言って済まなかったな」
「いや、エスト。こっちこそ色々と考えて貰ったのに、勝手を言って悪いと思ってるよ」
まるで気心の知れた親友同士のように、互いを気遣う気持ちが伝わってくるようなやり取りだったが――二人を傍らで見つめるローズの心は、決して穏やかではなかった。
「ねえ、二人とも……いつから、そんなに仲良しさんになったのかしら?」
ニッコリと微笑みながら、メラメラと黒い炎を宿すローズに――その晩、カイエとエストは自分たちの失敗を心底後悔する羽目になった。
※ ※ ※ ※
「
王都から僅か十キロほどの距離にある
カイエにとっては悲惨な記憶になった昨夜の出来事も――すっかり無かったことにされてしまっている。
「……まあ、良いけどさ?」
暫くの間、カイエは不機嫌な顔で黙って歩いていたが――ローズの心底嬉しそうな様子を眺めているうちに、いつの間にか自分も笑みを浮かべていることに気づく。
アルベリア
地上部分の石造りの建物は、
(……この国の連中は、意味のないものを作るんだな?)
ローズと一緒に地下への階段を歩きながら、カイエは皮肉な感想を懐いていた。
「ずいぶん昔だけど、私はこの
リポップする
「ああ、その方が手っ取り早くて良いな。ローズ、
勝手知ったる感じでカイエはそう言うと――ローズの後に続いて最初の階層を進んでいった。
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