第1の試練「シンデレラ」(2)
継母と2人の姉に意地悪をされていたシンデレラ。
ある日。
継母と2人の姉はお城の舞踏会へ行き。シンデレラは1人お留守番。
そんなシンデレラの前に魔法使いのおばあさんが現れ。魔法の力でかぼちゃは馬車に、ネズミは馬に、ボロボロの服は素敵なドレスへと変身した。
夜12時の鐘の音が鳴り終わると、魔法が解ける。その前に帰って来なさいと、魔法使いのおばあさんに言われた。
シンデレラはお城の舞踏会へ行き、王子様に見初められ。ダンスを踊るシンデレラと王子。
ここまでは、一般的によく知られるストーリー。
ここから先のストーリーがアリスのリメイク『シンデレラ』
ちなみに、ここから先の一般的によく知られるストーリーでは、シンデレラの片方のガラスの靴が脱げ落ち、ガラスの靴を残したまま階段を駆け下り。その後、片方のガラス靴の持ち主を大公が探し出し。シンデレラは王子と幸せに暮らし、ハッピーエンド。
アリスのリメイク『シンデレラ』
ダンスを踊る2人を大勢の来賓達が見ている。そんな中、2人はそっと舞踏会を抜け出し。月明りの綺麗な夜の中、星空が輝き、2人は城の中にあるバラの庭園を散歩していた。
すると、王子が立ち止まり。王子はシンデレラに名前を聞き。シンデレラは本当の名前を明かさず、「シンデレラ」と名乗った。
2人はまた庭園を歩き始め。その時、12時の鐘の音が響き、慌てるシンデレラは、「私帰ります」とだけ言い。王子を背に走り出したシンデレラ。王子はシンデレラの名を呼び。振り返らず走って行くシンデレラ。
すぐに王子はシンデレラを追いかけ。鳴り響く鐘の音を背に走るシンデレラは、慣れない靴を履き、急いで階段を下っていた。
すると、シンデレラの右足のガラス靴が脱げてしまい、それに気づいたが、シンデレラを呼ぶ声が聞こえ。急がないと王子様に、このボロボロの服を見られてしまう、きっと嫌われる、そう思ったシンデレラ。
ところが、突然後ろを振り向き。なんと、階段を上り始めた。
この時、シンデレラは魔法使いのおばあさんの顔が浮かび、あのガラスの靴を置き去りにできなかった。こんな私なんかに、あの優しい魔法使いのおばあさんが私の為に用意してくれたガラスの靴。置き去りに何かできない。そんなひどいことはできない。大切なガラスの靴。シンデレラはそう思い、片方のガラスの靴を拾い。
すると、無情にも12時の鐘の音が鳴り止んだ。その場に座り込むシンデレラ。魔法は解け、ボロボロの服に戻っていた。
その時、王子がシンデレラに駆け寄り。その姿を見て困惑する王子。
嫌われた、そう思ったシンデレラは立ち上がる気力をなくし、その場に座り込み動けない。
すると、王子は変わり果てたシンデレラを見て、ガラスの靴に気がつき。
「あなたは、シンデレラですね!? これはいったい、どういうことですか?」
シンデレラは答えた。
今から半年前。私は家の掃除をしていると、ふと窓の外を見ると。目の前を真っ白な馬に乗った王子様が家来を引き連れ、通りすぎて行き。私は、王子様を見て一目ぼれでした。私はこの頃から、毎日のように家の2階の窓からお城を見ていました。
今から2ヶ月前、お城で舞踏会を開くと聞き、もう一度王子様に会いたい。しかし、私にはお城に着て行く服がありません。
舞踏会当日。また、窓の外からお城を見ていると。魔法使いのおばあさんが現れ。こんな私に、馬車や素敵なドレス、ガラスの靴を用意してくました。ところが、魔法の効力は、夜12時の鐘の音が鳴り終わるまでと聞き。私は、このボロボロの服を着た姿を見せたくなかった。嫌われたくなかった。それで逃げ出したのです。
すると、王子はシンデレラに。
「では何故、あなたはここにいるのですか?」
ガラスの靴を抱きしめながらシンデレラは。
「魔法使いのおばあさんが、私の為に用意してくれた大切なガラスの靴。私には置き去りになんかできなかった……」
そんなのシンデレラの姿を見た王子は、嫌われるのを覚悟してまで、魔法使いのおばあさんの気持ちを大切にしたシンデレラの優しい気持ちが胸に響き。そんなシンデレラに王子は手を差し伸べた。
すると、その手を払いのけるかのようにシンデレラは自ら立ち上がり、真剣な表情で。
「あなたは王子様。私とは住む世界が違う。身分が違います!」
シンデレラの手にはガラスの靴、はだしのまま階段を駆け下りて行った。
身分が違うと言われ、その場に立ちつくす王子。シンデレラの後ろ姿を見ながら、ただ、シンデレラと叫ぶだけで、追いかけることすらできなかった王子。
この後、王子は突然舞踏会を中止し。王や上役からは舞踏会を台無しにしたと、さんざん注意を受け。王子はその夜、一睡もできなかった。
一方、シンデレラはというと。王子と別れあと、家に帰り着くなり、家を出ることを決心し。小さな鞄に少ない身の回りのものをバッグに詰め。時計を見ると、午前1時。もうすぐしたら、継母と2人の姉が帰って来る。父親は寝ている、何も言えない。シンデレラは父親に置手紙を書き、家を出た。
向かう先は、ここから5キロ先の父方の祖父母の家。ここしか頼るところがないシンデレラは、月明かりの中、真夜中の一本道を歩きながら、まさかこんなことになるとは、そう思いながら、自分で決めたことだと涙をこらえ、辛くて、悲しく、寂しい気持ちでいっぱいだった。
シンデレラが祖父母の家に着いたのは、午前3時ごろ。祖父母は寝ている。起こすわけにはいかない。そこで、シンデレラは幼い頃に馬小屋の屋根裏部屋で暮らしていた屋根裏部屋で休むことに。馬が2頭、よく寝ている。
シンデレラはこれでよかったんだと思いながら、気になるのはやはり優しい父親。あの継母と2人の姉には逆らえない。そんな父親が心配だが、戻るわけにはいかない。
2年前までは、継母と2人の姉がくるまでは、シンデレラは毎月1週間くらい、ここで畑の手伝いをし。父親は祖父母に仕送りをしていた。しかし、畑の手伝いも父親の祖父母へ仕送りも無くなり。祖父母は細々だが、農業で生計を立てていた。
翌朝。
祖父母が目を覚ますと。いい匂いがする。驚く2人。
目の前には、2年ぶりに見るシンデレラが朝食を作っている。その後ろ姿、楽しそうにしているが、何処か寂しそう。何も聞かないことにした祖父母は、いつもように、おはようと声をかけ。祖父は、ひさしぶりだな、元気にしてたか、と声をかけ。笑顔で迎える祖父母は、お帰りと言った。
その言葉にシンデレラは、泣かないと決めていたが涙がこぼれ、泣いてしまい。祖母はシンデレラに寄り添い。その後ろで祖父が、もう泣なく、もう泣かんでいい、好きなだけここにいろと言ってくれた。
しばらくして、シンデレラは、昨日の出来事を話し、家には帰れないと。
シンデレラは祖父母に心配をかけたくない想いから、継母と2人の姉のことは秘密にしていた。しかし、祖父母は知っていた、継母と2人の姉のことを。
父親は、シンデレラに対する継母と2人の姉の意地悪に、ここにいてはダメになると思い。折を見てシンデレラだけは、そちらで暮らせるようにと言ってあった。
一方、家に帰り着いた継母と2人の姉は、突然舞踏会の中止とシンデレラの家出に気づき怒り心頭だった。
一方、王子は王に、シンデレラのことを話したがまったく相手にされない。身分が違いすぎると言い。上役達も諦めなさいと言った。しかし、王子はシンデレラのことが諦めきれない。身分が違いすぎることは重々わかっている王子は、来る日も来る日も、王や上役を説得し続け、2ヶ月が経ち。何も進展のないまま、王子はある決断を。
ある日の早朝。
王子は庶民の服装に着替え、シンデレラに会う為に城を抜け出し。王子は馬に乗り、町まで来ると。馬を引きながら王子は聞き込みを開始した。
この格好で町を聞き込みする王子に、誰も王子だとは気づかない。多少、馬が目立ってはいるが。
そんな中、聞き込みをする王子だが、誰もシンデレラのことは知らないと答える。この町に住んでいることは間違いないはず、そう思う王子。何の手がかりないまま聞き込みを続けていると、シンデレラの知る女性が現れ、親友だった言う。
その女性は小声でこんな話しをした。
2年前、突然ボロボロの服を着て、いきなり私に関わらない方がいいと言われ。私は困惑気味の中、何でそんなことを言うのか聞いた。しかし、彼女は何も答えなかった。そして、私はシンデレラとして生き行くのと言い、逃げるように立ち去った。私は次の日、納得がいかず、彼女の会いに家に行くと。とんでもないものを見てしまった。
あの継母と2人の姉にこき使われ、文句1つ言わずに家の仕事をしている。おそらく私に危害が加わらない為に、あんなことを言ったのだと思い。シンデレラと名前まで変えられ。私は悔しかった、あんな優しい子をひどい目に遭わせるなんて。
涙ながらに話してくれた女性は、シンデレラの住んでいる場所を王子に教え、彼女を救って欲しいと訴え。私には何もできないと嘆き。2ヶ月前から姿が見ていないと言っていた。
そんなことを聞かされ焦る王子は、急いでシンデレラの家に向かい。玄関ドアをノックすると、父親が出で来た。
王子は、シンデレラの友達で心配で会いに来たと言うと。父親は王子の目を見て小声でここにはいないと言い、居場所を教えてくれた。
王子は馬に乗り、急いでその場所へ向かった。馬を走らせていると辺りは畑の景色。家も少ない。王子はそんな景色にも目もくれず、真っ直ぐにシンデレラのことだけを考えていた。やっと会えると。
目的地付近に着くと、一旦馬を停め、辺りを見渡すと。1人の女性らしき人が見え。王子は馬を下り、馬を連れ、ゆっくりとその女性ところへ。
王子は焦る気持ちを抑えながら、その女性のすぐ近くまで来ると。その足音に気づき、後ろを振り向いた女性はンデレラ。しかし、シンデレラは王子だと気づいてはいない。
「こんにちは。真っ白な綺麗なお馬さんですね」
「……ありがとうございます。あのー、すみません。私のこと覚えていますか?」
「えっ!? 何処かで、お会い、あれ!? もしかして、いや、そんなはずはない。でも……」
「シンデレラ、ですよね!?」
そう言われ、シンデレラは思い切って聞いて見た。
「もしかして、王子様ですか?」
「はい、そうです。王子です」
驚く、シンデレラ。
「えっ!? どうしてここに!? どうしてここが分かったのですか!?」
困惑するシンデレラ。
王子はシンデレラに、胸の内を話し始めた。
私もシンデレラと同じです。一目惚れだした。私はこの2ヶ月間ずっとあなたのことを思っていました。私はシンデレラを妻にと、王や上役に頼み込み、身分が違うと断られ。それでも私は諦めきれずにいました。しかし、月日が経つうち、あなたへの想いがつのるばかりで。私は決心し、城を抜けだし、1人で町に聞き込みをして、あなたの父親に友達だとウソをつき、ここを教えてもらいました。ウソをついたことは謝ります。ただ、私の気持ちを知って欲しくて、あなたに会いたくて、ここに来ました。
その時、王子のいる場所から斜め後ろ、5メートルくらい離れた所に、藁が沢山積まれ、山のようになっているその陰に隠れるように身をひそめ、あの2人を見張っている者がいる。どうやら、城の上役1人に家来2名を連れ。城からずっと尾行されていた。
すると、家来1人が上役を見て。
「済みません。いつになったら、王子を連れ戻すのですか!?」
「もう少し待って。どうしても見極めたい。あのシンデレラが王子の妻に相応しいかどうか」
それを聞いた家来は驚いている。あのシンデレラを妻になどと、真っ先に反対をしたのはこの上役。確かに、身分が違う。それはどうしょうもない事実。それなのに、王子をここまでにさせるシンデレラとはどういった女性なのか知りたくなった上役は、王子を尾行した。そのことに全く気づかない王子。
シンデレラは真剣な表情でひざまづいた。
「王子様に申し上げます。私、言いましたよね!? 身分が違うと」
「確かに、身分が違う。私もそう思った。だから、私はここに来た。王子を辞める覚悟はできている!」
その発言に驚いたシンデレラ。
「何で、そこまでするんですか!?」
「決まっているじゃないですか。あなたを愛しているからです!」
生まれて初めて言われたその言葉に、シンデレラは飛び上がって喜ぶくらい嬉しい。目頭が熱くなり、今にも泣きそう、嬉しすぎて幸せすぎる。
しかし、何思ったのかシンデレラは、自分の気持ちを押し殺すかのように別な意味で涙をこらえ、突然立ち上がり。
「王子様に申し上げます。王子を辞めるって言いましたよね!? ふざけないでください! あなたは自分が何を言っているかわかって言っているんですか!? あなたを置いて、誰が次の王になるって言うのですか!? あなたしかいないでしょう!? 違いますか!?」
それに反論するかのように王子は。
「だったら、シンデレラは私のことをどう思っているのですか!?」
「決まっているじゃないですか。私もあなたを愛しています! だから、お城へ帰ってくださいと言っているのです!」
渾身の想いで言いきったシンデレラ。
その時、山のように積まれた藁の陰から上役が出で来た。
「実にいいものを見せてもらった!」
その声に驚き、後ろを振り返る王子。
上役は、ゆっくりとシンデレラの方に歩いて行く。王子は上役に何故ここにと聞くと。上役は何も答えず、シンデレラの近くまで行き。
「初めまして、お城に仕える者です。シンデレラさんでしたね。大した娘さんだ。その目、いい目をしている。流石、王子。人を見る目がある……。いいでしょう。私があなたを王子の妻として推薦しょう。いや、実にいいのものを見せてもらった」
その発言に王子は驚き。シンデレラは呆然としていた。
王子の妻になりたい者は大勢いる。しかし、シンデレラは違う。王子の覚悟を知っても、それをあえて断った、この国の為に。この女性こそが王子の妻に相応しい人物、上役はそう思い。
上役は王子に、夕方までには城に戻るように言い、王子はそれを承諾し。上役は家来を連れて城へ帰って行き。
王子とシンデレラは抱き合って喜び、祖父母にこのことを報告した。
それから1ヶ月経ち。盛大な結婚式を執り行い、2人は幸せに暮らした。
ところで、あの継母と2人の姉はどうなったのか。この3人は手のひらを返すように、申し訳ないことをしたと、シンデレラになんども謝り。そして、心を入れ替え、これからは人に優しくすると誓った。
おしまい。
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