アリスとアリス(4)
アリスたちを乗せたタクシーの車内では、未来のアリスのことが気になっているアリス。
アリスは考えもしなかった。結婚して娘がいる、それに孫もいる。あの家、空き地に建てられた家、あれが娘の家なのか。アリスはいろいろ考えていると、車窓の景色は殆ど目に入らず、病院へ到着した。
病院の駐車場は広く、大きな病院の建物を目の前にするアリス。窓を下の方から数えると10個。10階建ての病院。
アリスはポケットから懐中時計を取り出し、見ると、午前9時過ぎていた。いよいよ、病院の中へ。
未来のアリスは、この病院の元院長とは古い付き合い。現在の院長はその息子が引き継いでいる。元院長の古い付き合いということで、ラビーを病院内に入る許可が下りた。キャリーバックはきちんとアルコール除菌し、カバーをかけている。
未来のアリスは、アリスの検査手続きを済ませ。アリスが検査にかかる時間は1時間。その後、1時間後に検査結果が出る。この間にラビーを動物病院に連れて行くことに。
アリスは、検査に不安だったが、初めて見る物に圧倒されその不安は消えていた。
未来のアリスは、またタクシー乗り。ここから車で10分くらいの場所にある動物病院に向かった。
2人が乗り込んだタクシーは、動物病院に着くと、30分くらいで検査が終わり。検査結果は、優秀。まったく問題なかった。これで一安心、あとはアリスのみ。
未来のアリスは、アリスのいる病院に戻ると。看護婦に、特別待合室に案内され。検査は、あと30分くらいかかると言われ、看護婦は部屋を出た。
ここには、未来のアリスとラビーの2人切り。向い合せのソファーに、未来のアリスが座り。目の前のソファーには、キャリーバッグが置かれ、顔を出すラビーは、自宅を出てから一言も喋っていない。
「ねぇー、アリス!? おばあちゃんって呼ぶの? 何か変じゃない!? ややこしくなるか」
「何1人で納得してんの!? 私は、おばあちゃんでいいの。おばあちゃんなんだから」
「それはそうだけど、声あんまり変わっていないし……。雰囲気は、おばあちゃんだけど」
「よく言われる。声、可愛いって」
「それ自分で言う!?」
「だって、本当のことだし」
「その喋り方、お姉ちゃんのまんまだよ。あっ、お姉ちゃんは、お姉ちゃんか」
「また、1人で納得して……」
未来のアリスは、いろいろとラビーと話したい。しかし、この状況では長話も無理。2人して、10階から景色を眺めていた、窓のそばで。
未来のアリスは、この部屋の時計を見ると、午前10時になり。アリスは看護婦に連れられ、この部屋に入って来た。そして、アリスはラビーの隣に座り。
看護婦は、院長からの指示で、飲み物とお菓子を準備し、午前11時には検査結果が出ると言い、部屋を出て行った。
すると、未来のアリスはアリスをジッと見て。
「アリス、どうだった? 検査!? 怖くなかった?」
「全然平気、って言いたいけど、注射がねー、あの血を見るのが」
「わかるわかる、だよねー、私も苦手。あっ、勘違いしないでよね。注射は痛くないし、怖くないからね」
そこへ、割って入るラビー。
「あのー、私も血を取られたんですけど……」
何も言わないこの2人。
「私のことは無視ですか!?」
2人して、冗談よと言い。病院あるあるの話で盛り上がっていた。しかし、ラビーは少し不機嫌だった、話についていけない。
もうすぐ、午前11時。
その時、ドアをノックする音が聞こえ。この部屋に入ってくる看護婦ともう1人、白衣を着ている男性が1人。
すると、未来のアリスは立ち上がり、その男性の所に行き握手をしている。どうやら、この病院の院長で、院長自ら検査結果を伝えに来ていた。未来のアリスは真剣な表情でその結果を聞いている。
しばらくして、院長と看護婦はこの部屋を出て行き。未来のアリスはソファーに座り、アリスをジッと見て。
「アリス、よかったね! 健康優良児だって」
「健康優良児!?」、って何、首をかしげ。
「優等生ってこと、問題なし、健康そのものだって」
これで、タイムトラベルにおける健康被害はなし。これで、本当に一安心。
その時、未来のアリスのお腹が鳴り。未来のアリスは、ここ6年間はまっている料理があり。それをごちそうすると言う。どうやら、お昼は未来のアリスの手料理が振る舞われる。
そのことに驚いたアリスは、自分が料理するイメージができない。隣にいるラビーも驚き、本当にできるのか不安。
病院を後にする3人。近くのスーパーに行き、買い出し。未来のアリスは、手際よく買い物をし。これが、80歳の動きなのか。アリスは感心するばかりだった。
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