アリスと本屋(3)
あの本屋。そのことを話す日が来るとは思っていなかった母親。アリスに依然、母親はここに移り住んだ訳を話したことがある。しかし、ここに移り住んだ1番の決め手を話していない。父親も知らない。
ここ移り住んだ1番の決め手は、アリス書店が近くにある事。
母親は、『不思議の国のアリス』が大好き。母親が若い時、出版社に自作の小説を持ち込み断れていた。友達は面白いと言ってくれる。何で分かってくれない。悩んでいた。
ここに住む前は、ここから20キロ離れた、いわゆる都会と言う場所に住み。アマチュアの小説家仲間5人とコーヒーショップの店内でよく小説について語っていた。
ある日、いつものように、コーヒーショップの店内で話していると、親友が超驚くことを口にした。
その親友の女性は、ここから2キロ離れた所に今も住んでいる実家がある。今でも交流が続いている。
世間では、アリス書店の本屋の主ことを、『不思議の国のアリス』の大ファンだと思われている。ところが、本屋の主は、『不思議の国のアリス』の作者の親戚だと言う。どうやら、その親友も親戚にあたると言う。
その日、その親友と2人でアリス書店へ、自転車で向かった。
その当時、アリス書店はオープンしたばかりで、本の数も少なかった。
2人は、アリス書店に着き。本屋の主に会い、『不思議の国のアリス』の作者にまつわるいろいろ話しを聞き。本屋の主が本好きのこともあり。そこで、母親の小説を読んでもらった。結果、話は面白いが、独創性にかけると指摘され。その後、母親は小説家になる事を諦めた。しかし、母親はあの本屋の主に、もし生まれて来る子供が小説家を目指すことになったら、その時は、小説の指導をお願いしますと言い。本屋の主は快く引き受けてくれた。
母親は驚いていた。まさか、あの本屋に行くとは。今でもあの本屋に行くことがある。
父親も驚いていた。まさか、あの本屋に行くとは。次の夢を見つけるきっかけになった場所。最近開発したエアコンを試験的にあの本屋に取り付け。自宅にも取り付けてある。これがうまくいけば快適な暮らしができ、今後の研究費にもなる。
アリスは、あの本屋のことを知り。科学者としてやっていく気持ちには変わりわないと言い。母親には、申し訳ない気持ちだった。
本屋の主は、アリスが小説家を目指し、悩んでいたことを知っている。但し、アリスにはこのことは秘密していた。
そして、あのノートは誰にも見せることはなく、完結もせずに机の中に眠ったままになり。そのことで、あんな事に巻き込まれるとは、この時アリスは知る由もなかった。
数日が経ち。アリスの様子が少しおかしい。いつもなら、休憩時間は物理や化学の本を読んでいる。
ところが、庭の芝生の上に座り、ボーっとしている。まるで、恋でもしているかのように。アリスは研究所でも、ボーっとしている時があり。父親は気になっているが、何故か聞けない。
ある日。
休憩中のアリス。庭の芝生の上に座り、今日もボーっとしている。
そんな中、庭に洗濯物を干しに行く母親。ふとアリスの見ると。やはりあの方角をみている。
「アリス……。アリス、ちょっといい!? 洗濯物を干すのを手伝ってくれる?」
返事はなく。しかし、手伝いに来たアリスは、心ここにあらず。
洗濯ものを干す2人は無言。
すると、母親がアリスの顔をジッと見て。
「アリス。あの本屋に行きたいんでしょう!? 顔に書いてるよ」
人差し指で、自分の頬を指差している。ここ、ここって。
アリスは頬に手をやり。
「えっ!? 何処に書いてるの!?」
その仕草に思わず、吹き出した母親。
洗濯物を干し終え。芝生の上に座る2人。母親はアリスに聞きたいたことが。
「どうして、あの本屋に行きたいの?」
すると、本屋の主が手にしていた本が気になっていたことを話し。
「だったら、お昼食べたら行って来なさい。お父さんには、私から言っとくから。但し、夕方までには帰って来なさい」
「……やっぱりいいや。行かない」
「お父さん言ってたよ。そんな気持ちで仕事は出来ないって。それに、作業中怪我をしたらどうするのって、お父さん心配してたよ。お母さんだって同じ」
そう言われ、納得したアリス。父親には自ら話に行き。昼食後、アリス書店に行くことになった。
父親は、この時アリスに、これからは研究だけにとどまらず、世間のことも知り。いろいろ学ぶべきことがあるから外へ出かけなさい。それも仕事うち、科学者として大事な事。そう言っていた。
アリスは昼食を食べ終わると、あの服装で本屋に行った。日差しが照る付ける中、足取りも軽く。アリス書店に着くと。本屋の主が店先に立っている。
「アリスよく来たね。又来ると思ってよ」
母親が本屋の主に連絡していた。
アリスは少し笑みを浮かべ。店内に入るといきなり。
「おじいさん。あの本を見せていただけますか!?」
本屋の主は快くOKし。社長室へ行き、アリスに手渡された本のタイトルは、『鏡の国のアリス』
初めて手にする本に驚くアリス。あの本の続編に思わず、鳥肌が。ソファーにゆっくりと座り、読み始めた。
すると、あの時よもゆっくりとしたスピード読んでいる。少し笑みを浮かべたり、時には悩んでいる表情、いろんな表情を見せながら本を読んでいると。この本、少し私の小説に似ているところが、と思い。
アリスは本を読み終えると。テーブルに本を置き。本屋の主に、面白かったと言った。
すると、本屋の主はその本の最後のページ見なさいと言い。もう一度本を手にするアリス。最後のページ見ると。
アリスへ、8歳のお誕生日おめでとう。と書いてある。この本は、アリスの母親から、アリスへの誕生日プレゼントだった。
アリスは、母親に申し訳ないやら、嬉しいやら、その想いに涙をこぼし。本屋の主は、紅茶をテーブルに置き。
「アリス、この話はいまだ誰にも話したことがない……。アリスのお母さんにも話したことがない」
そう言い、本屋の主は、鍵のついた机の引き出しから、1冊の本を手に。アリスの目の前にあるソファーに座り。 向き合う2人。
「これは、あの作者の日記だが、日記には、こんなことが書いてある」
ある晴れた日。少し肌寒い、もうすぐ秋。いつものように私は散歩をしていた。
ふと子供たちの騒ぐ声、そこは小さな公園。私を見て手招きをしている。行ってみると、驚いた。真っ白なウサギ。どうやら足を怪我している。その時、そのウサギと目が合い、助けと言っているように聞こえ。
飼い主がいるかもしれない、そう思ったが傷の手当てが先。自宅に連れ帰り、傷の手当てをした。
本屋の主は、日記をテーブルに置き。
「これがきっかけで、あの小説が生まれた。結局、飼い主はみつからず。野生のウサギだったみたいだね」
「ウサギの名前はなんていうの?」
「名前!? 確か、ラビーって書いてあったな」
「名前の由来は?」
「由来!? 分からない」
「本当に声が聞こえたのかもしれないね」
「そうかもな」
2人はまるで友達のように、いろいろ話していた。アリスはまだ子供だが、でも大人のような不思議な女の子。
もうずぐ、帰る時間になり。本屋の主は、鍵のついた机の引き出しから、アリスの母親からもう1冊預かっていた、『不思議の国のアリス』の本を渡し。この本はアリスが持つべき本だと、本屋の主に言われ。
アリスは快く受け取り、2冊の本を紙袋に入れた。どうしてこの本がここにあるのか、何となくわかったような気がし、あえて聞かなかった。
アリスは自宅に戻り。母親に本を受け取ったこと話し。そして、「お母さん、ありがとう」、それだけ言い。この本のことは聞かなかった。
アリスは2階に上がり、自分の部屋へ行き。紙袋から2冊の本を取り出し。科学係の本が沢山ある本棚に置き。しばらく、その本棚を眺め。そして、机に向かい。あの引き出しを開けようと。しかし、開けなかった。父親との約束。
その時、ふとアリスは外を見て、本屋の主が言っていたことを思い出していた。いつでも遊びにおいでと。
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