第4話

 王都へ向かって4日目、特に何事もなく王都についた。

 いや、一応犬の魔物に出会ったんだけどウィリアムさんが一瞬で倒してしまったため、まぁ何事もなく順調に王都へ来れた。強いて言えば俺がすぐ疲れて大輝に背負われていたということだろうか。


「おー城壁、大輝! 城壁だよ!」

「これはすごいな」


 王都は大きな城壁に囲まれていて門の所には馬車が並んでいる。そこに俺たちも並ぶ。


「2人とも城壁を見るのは初めてなのか?」

「はい、初めて見ました」

「すごく大きい!」

「ここの城壁はこの国で一番大きいからな」

「へーそうなんだ。……あれ? なんか私たち見られてない?」


 ふと気づくと周りの人たちがじろじろとこちらを見ている


「……確かに見られてるな」

「お前たちの服装のせいじゃないか?」


 ……あぁ、そういえば俺の服装はジャージと大輝に借りたパーカーで大輝は長袖のTシャツにジーンズだ。この世界ではかなり珍しい格好だ。

 でも服装を変えようにも他に持っていないので変えられない。王都の中に入ったら買わないと……。

 あ、でもお金がない。どうしよう、何か売ってお金を……でも何も持ってないし、あるとしたら今着てるジャージくらいだけど、これ結構気に入ってるやつだからできれば売りたくない。

 そうだ! 髪の毛を売ろう髪質も結構いいし、白は珍しいらしいし高く売れるかも。それに切っても多分すぐに再生するだろう。たぶん。

 俺は確認のために髪を一本だけ手で切ってみる。するとすぐに元の長さまで伸びた。

 うんいける。切って売ってお金が無くなったらまた切って売って……あれ? これもう働かなくていいんじゃ……。


「そろそろオレ達の番だな」


 気が付くといつの間にか門の前に来ていた。

 そしてすぐに前の人が門を通り、俺たちの番になった。


「次、身分証明書を……って、ウィリアムさん! 今回は随分と早いですね」

「ああ、ちょっと王都に用事ができてな」


 ウィリアムさんはこの門番と知り合いのようだ。

 ウィリアムさんはカードを見せた後、銀色のメダルを2枚門番に渡す。

 カードはギルドカードかな? で、銀色のメダルは多分銀貨だと思う。


「……用事っていうとその2人のことですか?」


 そう言い門番は訝しげな様子でこちらを見る。


「ああ、森で迷ってたのを見つけてな」

「大丈夫なんですか? 見るからに怪しいですが」

「大丈夫だ。もし何かあればオレが対処する」

「そうですか。まぁウィリアムさんなら何があっても大丈夫でしょうし安心ですね」

「何があってもは言い過ぎだ」

「そうですか?」

「ああ。それよりも通っていいか? 後がつかえてる」

「ああっと、はいどうぞ!」


 そういってウィリアムさんは門を通る。少し遅れて俺達もウィリアムさんについていく。

 王都の中に入ってまず目についたのは数キロ先に見える白い王城だ。そして町を見るとこれまた白い。真っ白だ。


「すごく白いね」

「ああ」

「まずは冒険者ギルドに行くぞ」

「はーい!」


 冒険者ギルド、どんな感じなんだろうすごく楽しみ。

 俺たちはウィリアムさんの後を追い、冒険者ギルドへ行く。


「ここが冒険者ギルドだ」


 そう言いウィリアムさんは大きな看板がある建物に入っていく。俺達も少し遅れてそれに続く。

 ここが冒険者ギルドか……。昼間だからかな? 人が少ないな。

 そのままギルドの中を見渡してみると獣人がいた。


「大輝大輝、あの人猫耳だよ! あの人は犬耳! あの人は……なんだろう馬?」

「おい深紅、もう少し声を抑えろ」

「あ、ごめん」


 テンションが上がって大きな声を出してしまった。


「シンク、ダイキこっち来てくれ」


 いつの間にかギルドの受付まで行っていたウィリアムさんに呼ばれる。


「お前たちにはこれからギルドマスターに会ってもらう」

「ええ!?」

「……ギルドマスターですか?」

「ああ、まぁ安心しろ、取って食うわけじゃないんだ。いつも通りにしてるといい」

「……わかりました」


 ウィリアムさんに付いて奥にある階段を上がりすぐ近くの部屋に入る。


「シアンさん。入るぞ」

「久しぶりだなウィリアム。私に何か用か?」


 部屋の中にはすごくごつい男の人がいた。マフィアのボスといわれても納得してしまいそうだ。


「ああ、ちょっとこいつらのことでな」

「ん? その2人は誰だ?」

「ちょっと森で迷ってるのを保護してな、ここまで連れてきたんだ」

「なるほど。冒険者ギルドのギルドマスターをしているシアン・アスターだ」

「俺は大輝で……」

「し、深紅です」


 俺は大輝の背中に隠れながら自己紹介をする。


「で、なぜその2人を連れてきた? ここに連れてきたってことは何か厄介ごとがあるんだろう?」

「ああ、まぁ2人というより大体こいつ、シンクのことなんだが……シンクは吸血鬼なんだ」

「……………………………………」


 ウィリアムさんがそういった瞬間、シアンさんが止まった。


「いや、まぁそうなるよな。オレもそうなったし」

「……本当、なのか?」

「ああ、吸血鬼だ」

「シンクといったな。ちょっと確かめてみてもいいか?」


 シアンさんがこっちに近づいてくる。


「た、確かめるって?」


 また血を飲むとかかな?


「なに、簡単なことだ。血を飲んだり、腕を軽く切るだけでいい」


 血を飲んで、腕を切るだけかよかった………………いや、よくない! 全然よくないよ!


「軽くってどれくらい、ですか?」

「そうだな……5ミリくらい切っておくか」

「き、切る長さですよね?」


 まさかとは思うけど深さじゃないよね。深さ5ミリは軽くじゃないと思うんだけど。


「深さだ」


 まさかの深さだった。


「いやだ!」

「大丈夫だ。吸血鬼ならすぐ治るそれに切るのは血を飲ませて吸血鬼と確認してからだ」

「いや、それもう血を飲むだけでいいじゃん! 切る必要ないよね!」

「切るのは念のためだ。吸血鬼の再生力を見てみたい」

「話が進まないから切るかどうかは置いといて、とりあえず血だ。シンクは誰の血が飲みたい?」


 ウィリアムさんが間に入り話を進める。

 出来れば置いとかないで切らないでほしいんだけど。仕方ない、誰の血が飲みたいか。か…………。

 ウィリアムさん、シアンさんそして大輝をみる。

 大輝か……。大輝の血、飲んでみたいなぁ。

 俺は大輝をじーっと見る。


「シンクはダイキの血が飲みたいようだな」

「俺か」

「だめ?」


 俺は上目遣いで大輝をみる。


「……はぁ、わかった。ほら飲め」


 そういって大輝は腕を俺の方へ差し出す。


「やった!」


 あ、でもこれどうやって血を飲めばいいんだろう。腕を噛んじゃってもいいのかな?

 とりあえず大輝の腕を咥える。

 か、噛んでいいんだよね? あ、でも噛むのはちょっと抵抗が……んーどうしよう。


「……深紅、なんで甘噛みしてるんだ?」

「ふぇ?」


 どうやら噛むかどうか迷ってる間、ずっと甘噛みをしていたようだ。


「噛んでいいんだぞ?」

「んー」


 大輝は噛んでいいって言ってるんし、早く噛まないと。

 強く噛みすぎても駄目だよね。だから弱すぎず強すぎず力加減を注意して……。


「ん!」

「くっ」


 大輝の腕を噛んだ瞬間口の中に血の味が広がる。

 あぁ……大輝の血すごく美味しい……。


「深紅飲みすぎるなよ」

「んー」


 もうちょっと、もうちょっとだけ。

 俺は大輝の血を飲み続ける。


「本当に飲んでるな。よし、大体わかったからもういいぞ」

「深紅、終わりだ。口を開けてくれ」

「あぁ、まって! もうちょっとだけ」

「駄目だ」


 そう言い大輝は俺の口から腕を遠ざける。

 もう少しだけ飲みたかった……。


「次は腕を切ろう」


 シアンさんがナイフを持って言う。


「それはいやだ」

「ダイキはシンクに噛まれるのを我慢したぞ」

「う、それは……そうだけど」

「シアンさん、嫌がってるし別に切らなくてもいいだろ?」


 シアンさんに切らせてくれと言い寄られていると、見かねたウィリアムさんが助けに入ってくれた。


「だがなぁ。お前だって吸血鬼の再生能力がどのくらい凄いのか知りたくないか?」

「知りたいか知りたくないかで言ったらもちろん知りたいが、冒険者やってたらそのうち分かるだろうから別に今じゃなくてもいいな」

「そりゃお前はシンクと一緒に行動してればいつかは目にするんだろうが、それだと私は見ることが出来んだろう」

「ギルドマスター辞めて冒険者になったらいいじゃないか」

「そんなの無理に決まってるだろう」

「なら諦めろ」

「くっ、諦めるしかないのか…………。そうだ! シンク、これは依頼だ。金貨10枚で少しだけでいい、切らせてくれ!」


 ようやくあきらめたかと思ったがいきなりそんなことを言い出した。

 金貨10枚……。価値がわからないけど金貨なんだからそれなりの価値はあるはず。お金はほしいけどその代わりに腕を切られるのは……。


「……金貨ってどれくらいの価値があるの?」

「金貨は銀貨100枚の価値だ」

「えっと、銀貨は?」

「銀貨は銅貨100枚だ。ちなみに金貨100枚で白金貨になる。……こんなことも知らないなんて今までいったいどんな生活をしていたんだ?」

「えーっと……じ、自給自足?」

「……まぁいいか」


 俺はとっさに誤魔化す。

 シアンさんは納得いかないような顔してるけどたぶん大丈夫だろう。自給自足はそんなに変なことじゃないはず。


「で、受けてくれるか?」


 価値が完全に同じってわけじゃないだろうけど、とりあえず銅貨を1円として考えよう。そうすると銅貨100枚で銀貨1枚だから銀貨は100円、銀貨100枚で金貨1枚だから金貨は1万円、それが10枚なんだから10万円。腕を少し切って10万…………。


「うぅ……わかった。でも少しだけだから! 本当にちょっと切るだけだから!」

「よし、それじゃ切るぞ」


 シアンさんの持つナイフが俺の腕を切る。


「いっ!」


 痛い痛い!! ちょっとそれ深すぎない!? これ絶対5ミリ以上いってるよ! 何ならセンチにまで届くよ!




「おお! 見ろウィリアム切った所がすぐに治っていくぞ!」


 なんでこの人楽しそうなの? そういう嗜好の危ない人なの?


「痛い! 痛いからもう終わり!」

「おおっと、すまんすまん。いやー本当にすぐに治るんだなほらこれで血を拭くといい」


 俺は渡された布で血を拭きとる。腕の傷は綺麗に消え去っていて痛みすらもなくなっていた。

 傷と一緒に痛みも治るのか。吸血鬼の回復力が高くて本当によかった。……あ、そういえば大輝の腕は大丈夫かな? 結構血が出てたし強く噛んじゃったかも。


「ねぇ大輝、腕は大丈夫?」

「ああ、まぁ大丈夫だ」


 大輝の腕にはすでに包帯が巻かれている。

 俺がシアンさんにナイフで腕を切られてる時に巻いたんだろう。


「ならいいんだけど。ごめん、ちょっと強く噛みすぎたかも」

「そんなに痛くなかったし気にするな」

「ん……」


 そう言い大輝は俺の頭をなでる。


「吸血鬼かどうかの確認が済んだところで本題だがこいつらの冒険者登録を頼む」

「わかった。しかし吸血鬼か……」

「シンクが吸血鬼だということを公表しないでくれ」

「なんだ公表しないのか」

「出来ないだろ。他国に知られたらめんどくさいことになる」

「違いない。だが国王には報告するぞ?」

「ああ、わかってる」


 なんか他国とか国王に報告とか不穏な会話が……。


「シンク、どうした?」


 ウィリアムさんが俺の様子に気が付き声をかけてきた。


「あ、いや他国に知られたらとか国王に報告とか言ってたから」

「帝国とかはまぁシンクの正体がばれたらちょっかいをかけてくるだろう」

「ちょっかい?」

「手に入れようとするか殺そうとするかどっちかだな。何もしてこないという事はありえないだろう」


 うん、帝国には絶対行かないようにしよう。


「この国の国王は大丈夫なの?」

「それは安心しろこの国の国王は他種族との共存を目指してるからな」


 それなら大丈夫。なのかな?


「そうだ。シンク、報酬の金貨10枚だ」

「やった金貨! はい、大輝! 半分あげる!」


 シアンさんから金貨を受け取り、その半分を大輝に渡す。


「いいのか?」

「うん!」

「ありがとな」

「ん」


 そういって大輝は俺の頭をなでる。


「それじゃシアンさん、ギルドカードは明日取りに来るから」

「わかった用意しておく」


 ウィリアムさんはシアンさんにそう言い俺達の背中を押して部屋を出る。

 ギルドを出てウィリアムさんが「まず服をどうにかしよう」と言ったのでまずは服屋へ向かい服を買う。

 俺は白いワンピース、黒いローブ、パンツを3着ずつ、あと冒険者として活動する時用の丈夫な服とズボンを2着ずつ。そして、靴も置いてあったので靴も普段用と仕事用で2足買った。


「大輝、どうかな? 似合ってる?」


 今、俺が着ているのは買ったばかりの白いワンピースだ。自分でもかなり似合ってるんじゃないかと思う。外に出たらローブを羽織らないといけないのが残念だけど。


「似合ってるぞ」

「うん! 大輝も似合ってるよ」

「ああ」


 大輝は長袖の服に長ズボンという格好だ。使われている素材が違うだけだけど随分と違うなぁ。


 次は、服屋を出て武器屋へ向かう。

 武器屋には一般的な物から使い方がわからない様な物までいろんな武器が置いてあった。


「よし、お前たちはどの武器を使う?」

「あ、俺は槍を持ってるので……」

「槍? そんなものどこに?」

「あー……ここに」


 そういって大輝はアイテムボックスから槍を柄の部分を少しだけ出してウィリアムさんに見せる。


「…………ダイキ、収納魔法が使えたのか」

「はい」


 ここではアイテムボックスは収納魔法と呼ばれているようだ。


「……収納魔法、か」

「どうかしましたか?」

「いや、収納魔法を使えるやつが稀にいるってのは知っていたんだが実際に見たのは初めてでな」


 アイテムボックスを使える人は相当少ないようだ。


「まぁそれはいいか。ダイキは槍を使うとして、シンクは何を使うんだ?」

「私は何がいいかな……」


 武器なんて使ったことないし、あまり変なのはやめておいた方がいいかな。

 やっぱり剣がいいかなぁ。でも、今、身体能力はそんなに良くないんだよなぁ。なら弓とか遠距離の武器がいいかな。あ、近づかれた時のために剣を持つといいかも。うん、そうしよう。


「弓と剣にする!」

「弓と剣……基本的に遠距離ってことか。ならシンクに合う弓と剣を買わないとな」


 そういってウィリアムさんは小さめの剣と弓を見繕う。


「後は防具だがシンクは後衛な上に吸血鬼だしローブだけでいいか。ダイキは……」

「俺はローブ持ってるんで大丈夫です」

「ダイキは前衛だろ? ローブで大丈夫か?」

「はい。結構いいローブなんで」

「そうか、なら今日はもう帰るか!」

「あ、俺達今日泊まる宿探さないと」

「そんなのオレの家に来ればいいだろ」

「いいんですか?」

「ああ、当然だろ?」

「ありがとうございます。お世話になります」


 こうして俺たちはウィリアムさんの家に居候することになった。




「ここがオレの家だ」

「……でかい」


 ウィリアムさんの家は富裕層が住んでいるであろう場所の一画にあった。なんていうか家というより屋敷といった方がいいと思う。


「ウィリアムさんって貴族だったんですか?」


 大輝がウィリアムさんに聞く。


「いや平民だ。Sランク冒険者になったらこのくらいの家には余裕で住める」

「ということはウィリアムさんってSランクの冒険者?」

「ああ、そうだ。これでも下手な貴族よりも権力があるんだぞ?」


 なんか俺たちは異世界に来て早々凄い人と知り合ったようだ。


「それはともかくほら中に入ろう」


 ウィリアムさんに促されて中に入る。


「まずはお前たちの部屋に行って荷物を置こう」


 俺たちがこれから住む部屋に案内される。部屋は客が来た時用なのか広くベッドも大きい。

 ちなみに俺と大輝の部屋は隣同士だ。


「荷物も置いたし応接間でゆっくりするか」


 部屋を出て応接間へ向かう。

 目印になる絵とか壺が全然無いから迷子になりそうだ。


「あれ? おにいちゃん?」

「ユーナ! ただいま! 会いたかったぞ!」


 応接間に行く途中、金髪セミロングの女の子に出会ったと思ったらウィリアムさんが女の子に飛びつき抱き上げた。


「きゃっ!」

「やっぱりユーナは可愛いなぁ」

「もう! いきなり抱き上げないでよ!」

「おっと、すまんすまん」

「まったく、おにいちゃんったら…………あれ? その人たちは?」


 女の子が俺たちに気が付いたようだ。


「おっと、こいつ等は今日から一緒に住むことになったダイキとシンクだ」

「大輝です。今日からお世話になります」

「深紅です。よろしくお願いします」


 俺達は女の子に挨拶をする。


「ダイキさんにシンクちゃんっていうんだー。あ、わたしはユーナ! よろしくね!」

「ユーナはオレの妹なんだ。すごく可愛いだろ」


 うん、ウィリアムさんはシスコンだったのか。しかも結構重症っぽい。


「じー」


 ……なんかユーナちゃんにすごく見られてる。


「な、なに?」

「シンクちゃんって、すごく可愛いね! 髪の毛も真っ白できれい……あっでもちょっと汚れが……」

「そ、それはずっと森の中にいたから……」

「じゃあお風呂に入らないと! おにいちゃん、ちょっとシンクちゃんとお風呂に入ってくる!」

「お、おう。飯作って先に食っとくぞ」

「うん! シンクちゃんこっちだよ!」

「え? うわ!」


 俺はユーナちゃんに引っ張られてお風呂に連れていかれた。




「うわーシンクちゃんってお肌もきれいでいいなー」

「そ、そうかな?」

「そうだよーずっと触っていたくなるよ」

「!!」


 そういってユーナちゃんは抱き着いてくる。

 俺たちは今、風呂場で洗いっこしている。つまり抱き付きているユーナちゃんは裸、さらに石鹸でぬるぬるだ。そしてユーナちゃんは11才だそうだ。要するに今、俺は理性を試されている。

 でもせっかく女になったんだし、ちょっとだけなら……。ちょっとだけ、ちょっと抱き着くだけ……。今は女の子同士なんだし問題ないよね。


「……えい!」

「あはははは! シンクちゃん! それ、くすぐったい!」


 俺はユーナちゃんに抱き付きくすぐる。


「もぉ、わたしもおかえし!」

「あははははは!」


 ユーナちゃんがおかえしにくすぐってくる。

 そうしてお互いにくすぐりあって数分後、ようやく湯船に浸かる。そして湯船の中でユーナちゃんにウィリアムさんとの出会った時のことを聞かれたので話した。




「んーやっぱりお風呂はお湯に浸かる方がいいな。森の中じゃ川だったから冷たかったし」


 お風呂をあがり、着替えを持ってきていなかったのでさっき着ていた服を着る。


「また一緒に入ろうね!」

「ま、また?」


 俺としてはうれしいけどいいのかな?


「……だめ?」


 ユーナちゃんが上目遣いで俺を見る。うん、可愛い。


「駄目じゃないよ」

「やったぁ! 約束だよ!」


 ユーナちゃんの笑顔も可愛いなぁ。つい駄目じゃないって言っちゃったけど、この笑顔を見れたし別にいいか。

 お風呂をあがった後はウィリアムさんが用意してくれた晩御飯を食べて少し談笑した後、今日はもう寝ることになった。

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