第5話

「大輝! 朝だよ! 起きて!」 

「ん、もう朝か……」

「あ、起きた? おはよう!」

「ああ……おはよう。ってまだ外が暗いじゃないか……」


 次の日の朝、起きてすぐ大輝を起こしに来た。少し早い時間に起きたようでまだ外が薄暗いけど、まぁ大丈夫だろう。


「早起きは三文の徳っていうじゃない?」

「そうだとしても早すぎだと思うが、まぁいいか。で、ウィリアムさんたちが起きてくるまでどうする?」

「庭で剣とか弓とか魔法とか練習したい!」

「練習か……。よし、じゃあ庭に出るか」


 ということで昨日買った服に着替えて持って庭に出る。大輝はなぜかランタンを持っている。


「ランタンいる?」

「いや、要るだろ」

「そう?」


 まぁ、ダイキが要るというんだから要るのだろう。

 まずは弓を使ってみようかな。的がないので遠くに飛ばすことだけを意識して数回弓を射る。

 んー飛距離は大体20メートルくらい? 飛距離的には大丈夫かな。次は剣に持ち替えて振ってみる。うん、少し重いけど扱えなくもないかな。次は魔法最初は火の魔法を使ってみよう。どうしようかなファイアボールだと着弾したときの爆発がうるさいかな? んー、とりあえず掌の上に火がある感じのイメージで……。暫くして掌の上に火が現れる。


「よし、成功!」


 次は水の魔法、水ならちょっと派手にやってもいいかな。

 手を前に突き出しそこから放水する。


「できた!」


 消防車張りの勢いで水が出てるけどできた。この調子で他の属性も試してみよう。




「大輝ー」

「どうした」

「右手に封じられた邪神がっ……!」


 闇魔法で右手に黒い靄をまとわせて呻く。


「それは大変だな。切り落としてやろうか?」

「ええっ!?」


 さっと手を後ろに隠す。


「冗談だ」

「怖いよ!」


 ははは、と笑う大輝。冗談が怖すぎるよ!


「で、武器と魔法はどんな感じだ?」

「うん、剣は少し重いし魔法も発動まで少し時間がかかるけど使えなくもないから大丈夫!」

「それは大丈夫なのか?」

「……たぶん。まぁ実戦で使ってみて戦い方を考えてみるよ」

「結局ぶっつけ本番なんだな」

「そういう大輝はどうなの?」

「俺か? そうだな、ちょっと見てろ」


 そういって大輝は槍を構える。


「フレイムエンチャント」


 大輝がそう唱えた瞬間、槍の穂の部分が燃え出した。


「おーすごい」

「結構使えそうだろ」

「うん」


 これはエンチャントする属性を変えればいろんな敵に対応することが出来るのか。俺にも使えるのかな?

 試しに剣にエンチャントしてみる。んーどうやるんだろ。とりあえず刃が燃えているのをイメージして……。


「フレイムエンチャント!」


 と、唱える。すると、剣が燃え出した。


「やった! 成功!」

「おーお前も出来たか。とりあえずこれで何とかなりそうだな」

「そうだね!」




「2人とも随分と早起きだな」


 しばらく燃える剣を振り回しているとウィリアムさんがやってきた。


「あっ、ウィリアムさん! おはよう!」

「おはようございます」

「おはよう。こんな朝早くから剣を振ってるなんて随分と気合入ってるな」

「それはもう冒険者初日だからね!」


 目指すはSランク!と気合を入れる。


「やる気があるのはいいが、怪我には気をつけろよ。シンクは怪我してもすぐ治るだろうけどな」

「治るけど痛いのは嫌いだからできるだけ怪我しないようにするよ!」

「何があるかわからんしそれがいいな。ダイキも気をつけろよ。ちょっとした怪我が死に繋がることもあるんだ」

「はい、気を付けます」


 確かに何があるかわからないし、気を付けたほうがいいかも。この世界のこともよくわかってないし。


「2人とも少し早いが飯でも食うか?」

「うん! 食べる!」

「はい、食べます」

「よし、それなら作っといてやるから風呂場で水でも浴びてくるといい」

「はーい」

「ありがとうございます」




「……おはよう」


 風呂場で軽く水を浴びてから朝ごはんを食べているとユーナちゃんが起きてきた。すごく眠たそうだ。


「ユーナおはよう。少し早いがユーナも朝飯食うか?」

「うん、たべる」

「なら用意しとくから顔洗ってくるといい」

「うん、ありがと」


 そういいユーナちゃんは顔を洗いに行く。しばらくしてユーナちゃんが戻ってきて椅子に座る。


「シンクちゃん、ダイキさんおはよう」

「おはよう」

「ユーナちゃんおはよう! すごく眠たそうだね!」

「うん、わたし朝弱くて。それにいつもなら今の時間はまだ寝てるし」

「もしかして起こしちゃった?」

「ううん。たまたま早く起きただけだよ」

「そう?」


 俺たちがうるさくて起こしちゃったのかと思ったけどそうじゃないならいいかな。


「ユーナ。飯持ってきたぞ」

「あ、おにいちゃん。ありがとう、いただきます」


 ウィリアムさんが運んできたサンドイッチを食べる。


「飯食い終わったら俺たちはギルドに行くから」

「うん、わかった。シンクちゃん頑張ってね!」

「うん、頑張るよ!」


 ユーナちゃんにも応援されたし、頑張って冒険者やっていこう。目指すはSランク!




 ということで俺たちはギルドにやってきた。


「シアンさん入るぞ」

「ウィリアムかこれまた随分と早いな」

「ああ、こいつらが早起きでな」

「シアンさん、おはよう」

「おはようございます」

「おう、おはよう。ほら2人のギルドカードだ」

 

 シアンさんから銅のカードを受け取る。


「ギルドカードの素材はランクが上がると変わる。FとEが銅でDとCが銀、Bが金、Aがミスリル、Sがオリハルコンだ。無くさないようにしろよ。銅のギルドカードの再発行には銀貨1枚必要だからな」

「はーい」

「気を付けます」

「……シンクがすぐに無くしそうで心配だな」


 シアンさんが失礼なことを言ってるが気にしない。


「そんなことより依頼だよ! 大輝、どうする?」

「そうだな最初だし簡単な奴がいいな」

「とりあえず下で依頼書でも見ながら考えるといい」


 ウィリアムさんの提案でロビーに張り出してある依頼書を見に行く。


「結構張ってあるね。どれにする?」

「そうだな。……これとかいいんじゃないか?」


 そういって大輝がとったのは巨大猪の狩猟だった。




「大輝あそこ」

「これは随分とでかい猪だな。魔法は……まだうまく使えないからやめといたほうがいいな。深紅、弓でいけるか?」

「やってみる」


 俺たちは近くの村の農作物を荒らしている猪を狩猟するために村へ行きそこから森の中へ入った。そして猪の痕跡などを見つけながら歩いて1時間と少し、ついに猪を見つけた。昔、動物園で見た象より少し小さいくらいのサイズだ。

 俺は弓を構えて猪の頭を狙い、矢を放つ。

 俺の放った矢は猪の頭部に直撃したが、猪は走って森の奥へ逃げていく。


「ええっ! 頭に当たったのに!?」

「脳まで貫通しなかったか、逸れてたのか」

「ぐぬぬ」

「まぁ頭に当たったんだかなりのダメージは与えたはずだ」


 一撃で仕留めるつもりだったのになぁ。


「2人とも、見失う前に追いかけた方がいいぞ」

「確かに、急いで追いかけよう」

「うん」


 ウィリアムさんに言われ俺たちは猪を追いかけるが、すでに姿は見えなくなっていたので足跡や血の跡を追う。

 そして暫くの間痕跡を追いかけて、ようやく猪に追いついた。


「お、居た。結構遠くに逃げたな」

「今度こそ仕留めるよ!」


 今度もまた頭部を狙う。弱ってはいるはずだから今度はいけるはず。

 弓をさっきより強く引いて、放つ。放った矢は猪の頭部に当たる。そして猪はこっちの向かって走ってくる。


「って、ええ!? ちょっと待ってなんで!?」


 さっきより強いはずの一撃を頭に当てたのになんでまだ動くの? というかそんなことよりなんでこっちに向かって走ってくるんだよ!

 猪はさらに速度を上げこちらに突っ込んでくる。余りの気迫に俺は後ずさりをして足をもつれさせて尻もちをついてしまう。

 そしてぶつかるというところで大輝が槍で猪の頭部を貫く。


「わざわざこっちに来てくれるとはな。深紅、大丈夫か?」

「う、うん。大丈夫」

「いい突きだったぞダイキ! シンクも精度は完璧だったぞ。ただ威力が少し足りなかったな」


 威力が足りないということは腕の筋力が足りないということだろう。もっと鍛えないといけないようだ。


「さて、この後は猪を村に持って帰って依頼書に依頼達成のサインもらってギルドに提出すると報酬がもらえるぞ」

「……この無駄にでかい猪はどうやって村まで持って帰るの?」

「それはもう気合で」

「気合、ですか」

「ああ、気合いだ」


 この後、俺たちは気合で巨大猪を村まで運んだ。ちなみにウィリアムさんは今回はただの付き添いなので横で見ているだけだった。

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