第2話

「……ん? ここは……」


 森の中? ということは無事転生できたのか?


「無事転生できたようだな」


 と、大輝の声が聞こえた。


「あ、大輝! 同じ所に転生できたんだ! よかった!」


 本当によかった。1人だったらどうしようかと思った。


「そんなことはどうでもいいからとりあえず離れろ」

「どうでもよくないよ!」


 そういいながら俺は大輝から離れた。


「で、これからどうする?」

「どうする? といわれてもなぁ。とりあえず人がいる所を探すのがいいかな?」

「ということは村か町を探すのがいいか」

「村か町ねぇどこにあるんだろう」

「さぁ? こればっかりは適当に進むしかないな」

「んーそれしかないか……よし、この木の枝が倒れたほうに行こう」


 とりあえず俺たちは木の枝を立てて倒れたほうに進むことにした。

 そして歩き続けて1時間、俺は足が棒のようになっていた。


「大丈夫か?」

「少し休めば大丈夫……」

「じゃあ少し休むか」

「うん休む」


 そういって俺は近くに木にもたれかかる。


「子供の容姿になんかするから」

「ここまで体力が落ちるとは思わなかった……」


 男の時なら1時間どころか2時間、いや3時間だって普通に歩けたのに森の中とはいえバテるのが早すぎる。身体能力は高いはずなのにどうして……。

 そして10分後。


「そろそろ行くか」

「足が痛い……」

「仕方ないな。背中に乗れ」


 そういって大輝は背を向けてしゃがんだ。


「いいの?」

「ああ」


 俺はお言葉に甘えて大輝の背中に乗った。


「おぉ。おんぶされるのなんて久しぶりだ」

「そうか」

「いやーこれはすごく楽だね!」

「おい! 暴れるな落とすぞ!」


 道へ向ってる途中、大輝の背中ではしゃいでいたら怒られた。


「えー」

「えーじゃねぇよ。まったくお前の容姿がガキでよかったよ」

「大輝……ロリコンなの?」

「お前と一緒にするな。俺はガキだから軽くて楽だと言いたかったんだ」

「なんだそういう意味か。後、俺もロリコンじゃないよ綺麗な女の人は全般行ける。まぁ年下のほうが好みではあるけど」

「ロリコンじゃないか」

「違う、年下好きだよ!」

「お、おう」


 年下好きとロリコンを一緒にするなんて本当に失礼な奴だ。


「まぁ俺が元のままだったら普通に歩けただろうから、おんぶされてないな」

「それもそうか」


 それからまた休憩して歩いておんぶされてを繰り返して4時間。日も暮れてきたのに未だに森を出られずにいる。


「日も暮れてきたし、これは野宿するしかないか。深紅、とりあえず乾いた木の枝を集めながら出来るだけ開けたところを探すぞ」

「了解」


 しかし異世界に来ていきなり森の中で野宿か……。この先大丈夫かなぁ。

 開けた場所を確保してから1時間くらい枝を集めた。

 俺はそこで休憩しつつその周辺の枝を集めてただけだけど。

 

「よし深紅、魔法使ってみるからちょっと離れてろ」

「うん」


 返事して大輝から離れる。

 魔法なんて使って何するんだろう。


「かまくらみたいなのでいいか……」


 大輝が手を前に伸ばし暫くすると、手を伸ばした先の地面が迫り出しドーム状の物ができた。


「……初めて魔法使ったが結構疲れるな。使い方が下手なのか?」


 魔法を使うと疲れるのか……慣れれば疲れにくくなるのかな?


「これって土魔法だよね。なに作ったの?」

「土で出来たかまくらだ。とりあえず今日はこの中で寝る」

「あぁ、何もないよりはいいもんね」

「……念のためかまくらの周りも壁で囲っておくか」


 そういって大輝が周りに壁を作り、俺たちは土のかまくらの中に入る。


「結構広いね」


 中は2人とも寝転んでも十分余裕があるくらい広かった。


「もう暗いし火でもつけるか」


 そういって大輝が何もないところから大量の木の枝を出す。


「……大輝、今何もないところから大量の木の枝出さなかった?」

「ん? 出したがそれがどうした?」


 いや、それがどうしたってどう考えてもおかしくないか?


「普通何もないところから物が出てきたりしないよ。……あっ、もしかして魔法?」 


 魔法だったら何もないところから物が出てきてもおかしくない。


「いや魔法とは違うと思うが……お前もしかしてアイテムボックス取らなかったのか?」


 アイテムボックス?


「なにそれ」

「なにそれってあっただろ体作成の時10ptで」

「そんなのあったっけ?」

「あったぞ」


 んー記憶にないなぁ。


「ちょっとお前が覚えている項目を言ってみてくれ」

「んーっと、まずは性別変更、年齢変更、種族変更、容姿変更でしょ? で適正属性に身体能力成長速度増加と魔力保有量成長速度増加かな」


 うん、これで全部のはずだ。上から下まで見てこれだけだった。


「深紅、お前2ページ目があったこと知らないのか?」

「………………2ページ目?」

「ああ」

「そんなのあった?」

「あった」

「…………」

「…………」

「そ、そんな憐みの目で見ないでよ。それにほら、アイテムボックスがなくても生きていけるし!」

「いや、憐れんでるのはそこじゃなくてだな。……はぁ、まぁいいか」


 なんか今何かを諦められた気がする。


「2ページ目を知らないってことは武器と防具それに食糧もないってことか」

「そんなのあったんだ」

「あったぞ、ほら」


 そういって大輝はまた何もないところ……アイテムボックスから黒い槍と黒い杖それと黒いローブ、少し大きめのパン2個と木製の水筒に入った水(これが1食分らしい)を出す。

 そして食糧を見た途端、俺のお腹が鳴った。


「……おなかすいた」

「…………」

「…………」


 あ、またお腹が……。


「はぁ……少し待て。まずは火をつけよう」


 大輝はかまくらの中央に枝を置き火を魔法でつける。


「魔法って便利だな」

「そうだね。ていうか大輝、煙が!」

「思ったより煙出るな……。ちょっと天井に穴を開けるか煙突みたいな感じで。それで、もし雨降っても大丈夫なように先をまげて」


 そういって大輝は杖をもってまた土魔法を使って天井に穴をあけ煙突を作る。


「ふむ、杖を使うと魔法が使いやすくなるな。と、これで大丈夫だろう」

「ほんと、魔法って便利だね」

「そうだな。ほら、深紅」


 大輝がパンを1個こちらに差し出す。


「いいの?」

「ああ」

「やったぁ! いただきます!」


 俺は早速パンに齧り付く。


「んぐんぐ……ほおはん、おいひいれ!」

「そうか、それはよかった」


 そういって大輝もパンを食べる。


「ちょっと固いが確かに美味いな」

「ふぅ……ごちそうさま!」

「もう食べ終わったのか。水飲むか?」

「うん、飲むー」


 大輝から水筒を受け取って水を飲む。


「ふぅ……ありがとう」


 大輝に水筒を返す。

 この水はいい水なのかかなり美味しかった。


「ふぁぁ……。ねむくなってきた……」

「寝てもいいぞ」

「でも、火の番とかしないと」

「じゃあ交代でやろう。最初は俺がやるからお前は先に寝ろ」


 それならいいかな?


「わかった。それじゃ先に寝るけど、寝たくなったら起こしてね」

「了解」

「じゃあ、おやすみ」

「ああ、お休み」


 俺は横になって目を閉じるとすぐに眠りに落ちていった。

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