異世界転生希望者

Ast

第1話

 現在時刻は深夜1時50分。俺はPCを立ち上げ、とあるサイトを検索した。


「異世界転生希望者募集サイト…………あった」


 そのサイトは異世界転生希望者募集という文字と名前を入力する欄があるだけの簡単な作りだった。


「とりあえず名前入れるか……」


 名前を入力し、そして2時になってから少し躊躇いながらもEnterを押した。途端、目の前が真っ白になった。




 事の発端は約半日前、学校から帰る途中に遡る。


「異世界転生希望者募集サイト?」

「ああ、昨日たまたま見つけたんだ。お前こういう異世界転生物の小説とか好きだろ?」

「まぁ、好きだけど」

「今日……じゃないな明日の深夜2時から1分間だけ募集するらしい」

「なにそれ募集する気あるの?」

「そうだな。でも、面白そうだろ?」

「いや、本当だったら面白そうだけど……怪しすぎない?」

「確かに怪しいんだが、個人情報の入力が自分の名前だけだからやってみるのも面白いかなって思ってな? お前も一緒にやってみないか?」

「嫌だよ、なんかウイルスとか怖いし。大輝1人でやればいいじゃない」

「いや、本当に異世界転生した時1人だったら嫌じゃないか」

「じゃあやるなよ」

「そんなの面白くないじゃないか」

「面白くないって、はぁわかったよ俺もやるよ。ただし、何かあったら大輝が責任とってよ?」

「了解、2時だからな忘れるなよ」

「大輝って偶にこういう変なことしようとするよね」


 前は何だったかな。……そうだ昼休みに家庭科室で焼き肉パーティしたんだった。


「最近暇でな」

「暇だからって変なのに手を出そうとするなよ……」


 異世界転生希望者募集サイトか……まぁ、本当かわからないけど試してみるのもいいかな?

 そう思って試した結果、本当に異世界転生してしまった。




 気が付いたら白い部屋にいた。

 そこには100人くらいの人がいてほとんどの人が茫然としていた。

 ここはどこだろう? 本当に転生したのか? あのサイトが原因なら大輝もいるはずなんだけどどこにいるんだろう? そういえば転生って死んだ後に別の存在として生まれ変わることじゃなかったっけ? ということは俺死んだの? と、そんなことを考えていたら突然ゲームのシステムウィンドウのようなものが出てきた。そこにはこう書かれていた。


『異世界転生希望申請ありがとうございます。今、貴方がいる場所は世界の狭間です。狭間には生身では来ることができませんので今のあなたは魂だけの存在です。なお、元の世界にある体は貴方の人格をコピーした魂を入れましたので、これまで通りに生活しています。ここで転生するための体を作成して頂きます。体の作成が完了し次第、異世界へ転生していただきます。詳しくはヘルプをお読み下さい』


 体の作成? 転生の取り消しとかはできないのかな? 無理かな……あぁ無理っぽいなぁ、どこを見ても体の作成とヘルプの二つしかないからなぁ。


「深紅! やっと見つけた!」


 不意に聞き覚えのある声が聞こえた。


「大輝! よかったいたんだ」

「ああ、しかしあのサイトが本物だとはなぁ」


 うん、俺もまさか本物だとは思わなかった。


「そうだね。ところで体を作れって書いてあるけど、どうする?」

「どうするって言われても作るしかないんじゃないか?」

「まぁそうだよね。作るしかないかぁ」


 そう言って俺と大輝はウィンドウの体の作成を選んだ。




 さて、体を作るか。



性別 男

年齢 16

種族 人族


性別変更

年齢変更

種族変更 

容姿変更


残り100pt



 まずは性別、うん女だな。折角変えられるんだからこのチャンスを逃してはならない…………気がする。次は年齢、これは変えなくてもいいかな。次は種族か……。



種族変更

人族

魔族

獣人族

精霊族

アンデット族



 とりあえず各種族の特徴を簡単に纏めると


人族は魔力や身体能力は低めだけど器用で魔力操作が上手い。

魔族は人族と比べて魔力や身体能力が高いがかなり不器用で魔力操作が下手。

獣人族はどの獣人かで変わるけど大体は魔力は低いけど身体能力が高い。竜人も獣人族に分類される。竜人は魔力、身体能力ともにかなり高いが使うことができる魔法の属性は一種類だけ。

精霊族はエルフやドワーフとかのことで能力面は極端。

アンデット族はゴースト、グール、吸血鬼などの幽霊や化け物系。どのアンデットにするかで能力は大きく変わるけど基本的に回復力が高く、光が致命的な弱点。


 という感じだ。どうしようかなぁ獣人族の竜王とかいいかも。あ、でも50ptも使うのか……。他にも50ptいるやつあるのかな? 人族は勇者、魔族は魔王、精霊族は精霊王が50ptか。次アンデット族は……吸血鬼が50ptか。んーここは自分の好みで吸血鬼かな。えっと、吸血鬼の特徴はは身体能力、魔力保有量共にかなり高く、光属性以外の不死性を持っている。光属性に対してはかなり弱く攻撃を受けすぎると一時的に身体能力や再生速度が落ち不死性もなくなる。……まぁ、光属性の攻撃にさえ気を付けたら大丈夫だね。あ、これ人数制限あるんだ。勇者は5人、魔王は3人、竜王が2人、精霊王と吸血鬼が1人。寿命の長さで人数も変わるのかな? 吸血鬼はまだ選べるのかな。……よかった選べた!

 吸血鬼を選ぶと吸血鬼の文字が灰色の変わった。他も見てみると勇者と精霊王も灰色になっていた。制限人数に達すると灰色になるんだ

 よし、次は容姿だな。どうしようかな…………。




 結構時間かかったけど出来た。少し釣り目で赤い目そして白髪で長さは膝より少し上くらいまである10代前半くらいの美少女。うん、完璧だな。

 次は身体能力成長速度増加と魔力保有量成長速度増加そして適正属性。各成長速度増加は元々の才能に取得したランク分の補正がかかるらしい。

 適正属性は火、水、土、風、雷、無は適正がなくても一応その属性の魔法を使えるみたいだ。かなり弱いっぽいけど。光と闇は適正がないと使えないらしい。



身体能力成長速度増加

F 1pt

E 3pt

D 5pt

C 7pt

B 10pt

A 15pt

S 20pt


魔力保有量成長速度増加

F 1pt

E 3pt

D 5pt

C 7pt

B 10pt

A 15pt

S 20pt


適正属性

火 5pt

水 5pt

土 5pt

風 5pt

雷 5pt

無 5pt

光 10pt

闇 10pt


 吸血鬼は身体能力と魔力保有量は最初からそこそこあるみたいだしいくら成長速度が速くなったとしても成長の限界っていうのもあるだろうし、すぐに強くなりたいってわけじゃないから成長速度系は取らなくていいかな。それに折角魔法が使えるようになるんだから全属性使えたほうがいいよね。ということで俺は身体能力成長速度増加、魔力保有量成長速度増加にptを振らず適正属性を全属性取った。光属性の魔法を使う吸血鬼とか最強だな。



名前 御神 深紅 

性別 女

年齢 16

種族 アンデッド族 吸血鬼


身体能力成長速度 G

魔力保有量成長速度 G

適正属性 火、水、土、風、雷、無、光、闇

残りpt0



 うん、こんなもんかな? 容姿にかなり拘ったから結構時間が掛ってしまった。大輝はできたのかな? 

 大輝の様子が気になり周りを見ていると、獣人、エルフ、ドワーフなどがいた。

 種族変えた人、結構いるんだな。ちなみに俺はまだ決定ボタンを押していないため人間のままだ。


「ん? 出来たのか?」


 と、隣にいた大輝が話しかけてきた。


「決定ボタンは押してないけど出来たよ。大輝は?」

「俺も出来たぞ。もう決定ボタンも押した」

「そうなんだ。姿が変わってないってことは種族は人間? 性別とか容姿とかも弄ってないんだね」

「まぁな。というかそんなん弄るなんてめんどくさいし、種族変更するなんてptがもったいないだろ」

「…………ソウダネ。スゴク、モッタイナイネ」

「なんで片言なんだ……」

「ナンデダロウネ」

「お前……変えたのか?」

「ま、まぁね」

「まぁ,10ptか20ptくらいの奴なら変えるのも有りか……」


 大輝がため息をつきながらそう言う。

 でもごめん50ptなんだ……。


「……………………」

「……おい、深紅」

「だ、大丈夫!」

「まて、お前のことだから全然大丈夫じゃない。まだ決定してないんだろ? 今からやり直せ」


 そう言って大輝は手を伸ばし決定ボタンを押そうとしている俺の手を止めようとしたけど


「甘い!」


 それを躱し俺は決定ボタンを押した。瞬間、眩いほどの光が俺を包み込んだ。


「うわっ! 眩しい!」


 5秒くらいたっただろうか体を包んでいた光が弱まっていき俺の姿が露わになった。そして。


「………………………………」


 大輝が唖然としている。まぁ友人が美少女になったら驚くだろう。ちなみに服は元々着ていたジャージとここに来た時に何故か履いていた俺の靴も体に合わせて小さくなっている。


「どうだ!」


 俺はそう言って胸を張った。


「どうだじゃない。お前面影全くないじゃないか」

「でも、かわいいだろ?」

「そうだな。で、種族は?」

「………………」

「なぜ黙る。まさか50ptの奴か?」

「……えへへー」


 俺は笑って誤魔化す。


「なんか凄く殴りたくなった」


 失敗したようだ。


「ごめん白状する。50ptの奴」

「はぁ……やっぱりな。で、種族は?」

「吸血鬼」

「なんで吸血鬼なんて選んだんだ」


 なんでってそりゃあ


「身体能力とか魔力量とか人族より多いし、それに吸血鬼ってなんかいいでしょ?」


 こう……何とも言えないけどなんか惹かれるんだよなぁ。


「なんかってなんだよ。昼間はどうするつもりなんだ?」

「え? どうするって普通に過ごすけど……」

「吸血鬼が昼間に普通に過ごせるわけないだろ」

「……あ」


 光が駄目ってことは日光も駄目ってことか。


「転生先によっては死ぬな」

「た、たとえば?」

「砂漠とか」


 確かに死ぬかも。昼の砂漠なら絶対に死ぬ。


「ど、どうしよう?」

「どうしようってお前……」

「そうだ! もし転生先で何かあったら助けて!」

「別に助けるのはいいが、転生先が同じになるかは分からないしなぁ」

「…………あ」

「お前……それくらい気づけよ」


 と、大輝が呆れたように言った。


「ど、どうしよう? どうしたらいい? 手、手を繋いでたら何とかならないかな? それか大輝にしがみ付くとか!」

「お前必死だな」

「当たり前だよ! 俺だって死にたくない!」

「それならちゃんと後先考えろ」

「うぅ……」


 そんな話を大輝としているとシステムウィンドウに


『まもなく転生を開始します』


 と出てきた。え? もう転生しちゃうの? まだ心の準備が出来てない!

 体が光り始め焦った俺は必死に大輝にしがみ付いた。その瞬間、目の前が光で真っ白になりそして、真っ暗になった。

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