2日目昼 「思い出」

板見は洞穴の中で日が傾くのを待っていたが他にすることがなく退屈していた。


「非常用セットの中身見直しておくか…」


板見は非常用セットを手元に引き寄せ、巾着の紐を緩め中身を見た。

中身はただ食料と水、ピッケル、サバイバルナイフ等が入っているだけであった。

だが、それら全てが板見にとってはとても懐かしい思い出の品であった。

アマゾンを探検した時に使ったサバイバルナイフ、川の水を飲むために、濾過装置を作る時に使ったスコップ、山へ登る時工藤がピッケルを忘れて非常用セットの中のピッケルを貸したこともあった。

それらを見るだけで、板見にはその時の思い出が鮮明に浮かび上がった。

それと同時に悲しみも再び込み上げてきた。

板見はその事を忘れようと、食料をひとつ食べた。


太陽が南中した頃だった。


板見が食料を食べ終え水を飲んでいると、遠くの方で2つ光った。

スナネコの目であった。

まるで水を飲んでいることが分かっているかのようで、こちらをじーっと見つめていた。

板見は空いた食料の蓋を皿にしてそこに少しの水を入れた。

そしてそれを運ぶために板見が立ち上がると、スナネコは洞穴の奥の方に逃げていった。

板見はそれに気づきながらも、前にスナネコに威嚇された場所の辺りに置いた。

直ぐに板見はその場を離れ、様子を伺った。

だが、いつまで経ってもスナネコは警戒して出てこなかった。

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