僕の告白

春豆風

白を告げる

 よく、一目惚れの衝撃を稲妻が走るだとか、火が噴き上がるようだとか、現実味のない表現で喩える人がいる。

 実際にそんな経験をした訳でも、その様子をつぶさに観察している訳でもないのに、知ったような顔でそれが事実だと告げてくる。


 自らの体験を語るのに、具体性のない抽象的な言葉ばかり並べてご満悦な輩が、想像力の欠如した猿並みの知能で、盛りのついた犬のように無駄な行動力を伴って、こちらに付き纏い身勝手な愛を捧げてくる。

 あまつさえ、それに応えないからと激昂する者もいる。


 そもそも、体験したことのない表現に喩えるということは、つまりそういうことなのだ。

 想像、空想、妄想と言ってもいい。そんな勝手な思い違いを恋だの愛だの、まるで宝石か何かのように綺麗なものとして他人に見せびらかす。

 自分の頭の中だけで生まれたものを、磨きもせず洗いもせず、なんて穢らわしいのだろう。


 宝石がそこらにそのまま湧き出るだろうか、金銀財宝が勝手に海に出現するだろうか、漆器も刀剣も清らかな泉も豊かな大自然も、全ては磨かれ研がれ濾過された後のものだ。


 自分勝手な愛や独り善がりな恋が、その美しさの何割に及ぶと言うのか、恥知らずの短慮に苦しむのは数年未来の自分ではなく、その目の前で想いを告げられた相手だということを理解してほしい。

 誰が落雷に打たれようと炎熱に胸焦がれようと、他の誰かがが雷を落とした訳でも火に焼いた訳でもないのだと、当たり前の現実を理解してほしい。


 人に対して「真っ白であってくれ」と告げる者の汚れに染まるなど、勘弁願いたい。








 明かせばこと更に非難轟々だと予測できる本音を、私は彼に打ち明けた。






















 それはまだ、セミの鳴く夏のことだ。

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僕の告白 春豆風 @HALtouhu

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