2ー76★行くか?行かないか?

『それでナカノ殿、その御仁が言うには、どのくらいの危険度ということなのでしょうか…』


グリエルモが、俺が答えるよりも早く質問をぶつけてきた。

これは恐らくなのだが、質問を二つ平行させるということではなく、俺が答えにくいということに気づいたために、この質問の方に上塗りしようということなのだろう。


『いやー、グリエルモさん。とは言ってもまだそんな危険が迫っているのが確定ということではないですよ』

『とは言え、実力は未知数ではあるが長年、この辺りで生きていた御仁が何らかの危険はあるかもという内容を喋っていたのですよね?』

『ええっ…、まー、簡単に言うとそう言うことですね』

『それであれば念のために、あの光も調べておいて損はないと思うのですが…』

『確かにそうかもしれないですね。ただ、今いるこのメンバーで大丈夫ですか?』


俺、グリエルモ、トーレの三人はお互いを見あった。


『んー…、私の方としては、ある程度の装備があればそれなりには戦えるとは思いますけど…』


グリエルモは、そう言いながらトーレの方へ視線を流した。

彼の言いたいことは、分かる!

そして俺も同意見なので、視線はもちろん彼女の方へ動く。


『ちょっと…!それって、私も戦いの頭数に入れるってことですか?勘弁してくださいよ!出来るわけ無いでしょ!こんなただの可愛らしい女の子が…それに私…ねぇ~…』


彼女は、そう言いながら自分の事を指差しながら左腕をプラプラ振っている。

自分で自分の事を可愛いとか言っている彼女には、ちょっと別件で言ってやりたいことはあるが…

とりあえず俺とグリエルモは二人で見合い苦笑いすることしかできなかった。


そう…。

お前の左腕は、かつての俺にとってもトラウマになりかけた出来事なんだから、あまりアピールしないでほしいと思う。

アピールなどしなくても、その辺は考慮するつもりだから…


それに、みんなで移動中も彼女は戦闘には一切加わろうとしない。

恐らく演技とかではなく本当に出来ないのであろうと言うのは、みんなといる時も感じていた。


『と言うことは…俺とグリエルモさんの二人だけですか…』

『人員としては、そうなるのでしょう。後は装備なのですが…』

『装備なら、予備の武器防具をいくつか預けられているので、それから渡せます』

『おー、それは、ありがたい。では、さっそく行きましょうか!』

『えっ?もう?』

『はい、明日から移動するのであればどうあっても今日の内に光の正体の方は確かめたいところですから』

『まー、そう言われると確かにそうかもしれないのですが…心の準備というか、そう言ったものが……』


俺はこの時、グリエルモとはかなり温度差というものを感じていた。

恐らく、彼は自分の役目というものを全うしたくてしょうがなかったのだろう。

だが俺の方としては、自分の役目というよりも、どうすれば自分が最も安全に過ごすことが出来るのかという方が、正直なところ重要な案件と言える。

だから、出来れば光の方に関わらずに都市の方を目指したかったのだが…


目の前の御仁がそれを許さないようだ。


ん?

俺も言葉がうつってしまったのか?


『でも…、それならば俺一人で都市まで目指すってのはどうですか?それなら別に今から目指しても良いわけだし!』


自分としては結構いい考えかなと思ったのだが… 


『『え?私たちは?』』


当然、二人とも俺の発言に食いついてくるよね…


『え?移動せずに別邸の方で待機をしてもらってれば問題ないと思うよ。それなら別に時間かけて準備をする必要などもないだろうし、それで俺が出来るだけ手続きしてある程度まで進んだら戻ってきて状況説明すれば問題ないかと思います』

『と言うことは…あの光はそのままと言うことでしょうか?』

『ちょっとー、それってあの光が危険物か何かだった場合どうするんですかぁ~。たぶんですけど、それってナカノ様があの光に関わりたくないの丸出しじゃないですか?今から都市に一人で向かうなんて…万が一の緊急避難丸出しじゃないですか…』


トーレが変なことを言ってきた…

確かに可能性としては無くはない。

と言うか、彼女が言うことの可能性も否定できないので、俺としては光の方には関わらずになるべく早めに行動を開始したい。

なので彼女が言う緊急避難と言う言葉は、そのまま正解と言える。


言えるだけに、彼女は俺の方をおもいっきり白い目で睨み付けていた…

もちろん俺は反論できないので、目線は合わせない。


まー、俺の方でも初めから通る意見だとは思っていなかった。


『とは言ってもなー、俺とグリエルモさんの二人だろ?グリエルモさんは王国の兵士にも採用される実力なんだろうけど…正直、俺の方はねー…』

『やっぱり単なるビビリじゃないですか……』


トーレが俺の方を睨みながら、ホレ見たことかというような表情をしている。


『それはしょうがないだろ?冒険者としての活動なんて、ほとんど日数たってないんだから…』

『知ってますよ』

『だろ?そんな俺に戦いを専門的に期待されても困るだけなんだよ…それに、戦い以外で専門知識を必要とする場面と言うのもあるからなー。そういった場合はどうするんだ?どっちにしろ二人だけだと、綻びが生まれる可能性って言うのはかなり高いと思うぞ…』

『全く…良く口が回りますね…』


トーレの言葉に俺は自分の身を守るために、色々と理由を並び立てる。

何と言われようが、なるべくなら俺は危ない橋を渡りたくはない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る