2ー77★やはり外せない問題なのか…

『とりあえず、グリエルモさんの方には俺がみんなから別れる時に預かった予備の装備のいくつかを渡しておきますね』


俺は、あまり深くは考えていなかったのかもしれないが…

それでも今後の事も考えると何が起きるか分からない。

先ずは彼が明らかに俺よりも戦力になるのが分かったので装備を渡そうと思ったのだが…


何故か、彼が浮かない顔をしている。


『えーっと…どうしたの?』


一瞬、グリエルモに直接聞いてもいいのかためらってしまった俺は、思わずトーレの方へ恐る恐る聞いてしまった。


『はい、鎧をもらうということは、戦いを視野に入れるということになりますが、宜しいでしょうか?』

『えっ…、どういうことですか?いや…戦いを視野と言いますか…どうなるか分からないから一応渡しておく的な考えだったのですが……』


思わずトーレに普段使ってない丁寧な言葉で答えてしまう俺…


『なるほど…ですが、移動の速度と距離などを優先するのであれば、鎧の方はなるべく装備したくはないのですが…』


一瞬、今の言葉使いが変かなと思ってしまったが、グリエルモが何も言わずに会話を続けてくれた。


『えっ…、それって、もしかして…』

『はい、恐らくお気づきでしょう。この亜人能力解放状態トランスフォームと言うのは個人の能力にどうしても左右されてしまう関係上、出来ることであれば鎧など重いものは…』


そこまで彼は言うと、後は口ごもってしまった。

ここまで何度かしかやり取りはしていないとはいえ、結構はっきりと意思表示をしていた彼にとっては珍しい言動に思える。


『あれ?でも確かフィリアさんの説明では、グリエルモさんって…』


俺は彼女の説明を思い出しながら、彼の能力の事を考えていた。

あの時、彼女は大鷲となった彼に掴まれて空を飛んでいたと言っていたはずなのだが…

んー…、あの時と今とどれほどの違いがあると言うのか…

俺は結構不思議に思ったのだが…


どちらにせよ、彼が喋りづらいような内容と言うのは彼の能力の限界か欠点などに通じるところになるはず。

確かに自分の能力の欠点を自分で喋ると言うのは、どうにもしゃべりづらいことではあると思う。

なので、ここはあまり深追いはしないで話を進めようとしたのだが…


『えー?それはフィリア様より、ナカノ様が明らかにデブということではないですか?そんなの誰でも想像つくでしょう!』


横にいるトーレが、何やらカチンとくるようなことを言ってきた。

なんだコイツ?と思いながら、俺は彼女を睨み付け


『おいおいおい、トーレ!デブって何だよ。確かに彼女よりは重いけど、俺個人として見ると決してデブじゃねーぞ!』


俺の言葉を聞いた彼女は、ケラケラと笑っている。


『おい、なんだよ。それは!』

『あのー、ナカノ殿。その辺でおやめくださいますよう。トーレ殿もあまりそう直接的すぎる物言いは…』


俺と彼女のやり取りを見て、騒ぎが大きくならないうちに火消しと思ったのかグリエルモが間に割ってはいってきた。

正直、ちょっと待てとは思ったのだが、ここで彼女の言ってきたことをもう一度考えて見ると…


確か最後に直接的すぎる物言いとか言っていた気が…

と言うことは…


うん。

多分、俺の装備品含んでの重さと言うのが、彼の力の限界に近い感じなんだろう…


だが、それは決して俺がデブと言うことではない。

あくまでも女性のフィリアと比べた結果、重いと言うことでしかないはずだ。


と言うことはだ…


『あのー、グリエルモさん。空を飛んでいる時って俺も装備品外した方がいいですかね?』

『んー、それについてはどうなんでしょうか。そうなると二人でモンスターに遅れをとる可能性も出てきますので、そこまで無防備にするのは逆に危険なのかもしれません』


彼の言葉を聞いて、俺はなるほどと思った。

恐らく、明日の移動と言うのはなるべく早い速度で行いたいはず。

そうなると、装備を軽くして移動をした方がいいのは誰の目にも明らかなのだが、危険度の方にもある程度の対策をしておく必要がある。


恐らく明日、モンスターと戦うことになった場合、今回の能力を過去にも使ったことがある彼。

と言うか、確かフィリアを連れ去るときに王国のほぼ全ての要員から攻撃を受けながらも命からがら逃げ出したと言う過去があるだけに、恐らく彼の場合はどうとでもなるのだろう。


だが一方で…


戦闘経験が乏しい俺。

むろんだが装備品などなしで戦う手段など持ち合わせてはいない。

と言うか、装備品ももらったばかりなので、どの程度自分にあっているのか未知数。


そして、二人の顔色を見るに、そんな俺の状況に気づいているのだろう。


でも、そう総合的に判断していくのであれば、明日移動前に光の正体と言うのを試しておくべきなのだが…

いかんせん気が進まない。


『でも、やっぱり一番確実な方法としては、光の原因と言うのは前もって調べておいた方がいいですよね?』

『そうなるねー…』


そう、確かにトーレが言うように危険かもしれないというのは、最初に調べておいた方がいいのは間違いないように思う。

ただ、そうすると今のメンバーが、なんとも心細くてしょうがないのだ…


『それであれば何ですけど…ナカノ様、都市に行くのではなく一人で山小屋まで戻るというのはどうですか?』

『え?山小屋まで?俺一人でか?なんで?』

『そこで、みな様に事情を話して対策を立て直す。そしてグリエルモ様にはナカノ様が行く位置を予め教える。地図は私の予備の地図が屋敷に戻ればありますので、それを差し上げます。そして人数を固めた上で光の正体を調べると言うことではどうでしょうか?』

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