2ー43★もっと分かりやすく!

俺はみんなから色々な話を聞いて自分なりに整理してみた。

それによると、俺が気絶をした原因と言うのは、目の前のイケメン騎士グリエルモなる人物による一撃が原因と言うことらしい。


流れ的には…

俺がフィリアに対して勘違いをしてしまい、それが原因で彼女は叫ぶ。

怪我の最中、小康状態を保っていた彼は睡眠中だったが叫び声に目を覚ます。

叫び声の方を見ると俺が彼女を押さえつけて彼女は涙目。

いてもたってもいられない彼は、俺に一撃を入れてエルメダを始め他のみんなを相手に大立回り。

途中で外見が変化したフィリアが彼の前に立ちふさがり事情を説明。

その後、何とか誤解はとけたというのが全てらしい。


なるほどと思いながらみんなの説明を聞いていたのだが…

フィリアとグリエルモ、フェンを除いた全員が俺を責める責める。


確かに俺が原因を作ったのかもしれないのだが…

でもあの時の状態としては、仕方がない部分もあったと俺の方も反論するのだが…

「そんなの関係ない」とか「誰でも分かる」とか「本性出しすぎ」とか大人数で俺に言ってくる。


みんなの責めに耐えられなくなった俺は、どうしようもなくて再びフェンの顔を見た。


『はーい。それでは、フィリアさんとグリエルモさんの今後についてなのですが、協力はしていくと言うことで宜しいですか?』


フェンの言葉に続くように、他のメンバーは無言だが次々首を縦にふっていく。

どうやら俺が不慮の事故に見舞われている間に、誤解だけではなくみんなの中ではある程度の意見が一致したらしい。

俺の方としても、別にできる範囲であれば協力をしたいとは思うのだが、具体的には何をすればいいのかはちょっと分からない。

とは言っても俺の意識がない間にある程度の事は話し合ってるはずだと思うので…


『あー、なんか俺のいない間に粗方の意見は纏まっているようで、俺としても全然反論はないんだけど…その…協力って…具体的には何するんだ?』

『では、アタルさんの了解も得られたようなので、具体的にお二人に対しての協力内容を決めていきましょう。先ず決めたいのは、食料とかですよね。これは…』

『あー…、それ…食料っていうか…身の回りの生活に関してなんだけど…変なこと聞いていいですか?』

『トーレさん、何ですか?』

『それ、市の補助金とか出ますか?』

『んー、そう言ったことは…カントさん、お願いできますか?』

『はい、先程聞いた話から判断するとグリエルモさんの方は亜人でかつ指名手配なども受けていないということであれば貿易都市ルートの規定に沿って一定額の補助金と希望であれば貸付の方もご用意できるとは思います。ただ、その為には一度戻って手続きなどをしなければいけないですけど…』


トーレとカントの話の内容が俺には正直よく分からない。

ただ前にスルトが、この都市の成り立ちみたいなことを教えてくれた時、亜人の保護みたいなことを言っていた気がする。

俺自身は亜人ではないから、その時深く突っ込んだりはしなかった。

だが、もしかしたら色々とサポートプログラムみたいなものもあるのかもしれない。

ここで詳しく話を聞きたいなとは思ったのだが…

多分、知らないのは俺くらいな気がする。

そうなると変に無駄な時間を食ってしまう可能性があるので、俺はこの話をそのままスルーすることにした。


『でも、それなら彼も一緒に戻って手続きなんですよね?傷口が開かないように貿易都市ルートまで運ぶって何日かかるんですかぁ~と言うか…先ず間違いなく途中で何かに襲われるでしょう!』


トーレがそんなのお手上げとでも言わんばかりにジェスチャーを交えている。

そして、その彼女の言葉に従い、全員の視線がグリエルモの方へ向く。

恐らく、先程大立回りと言っていたときも傷口が開いたのを全員が目撃したのだろう。

もしそうだとしたら今の彼は長時間の移動はキツいように俺も感じる。


『でも、だからと言っていつまでもここにいては治るものも治らないと思いますよ』

『えっ…?傷って…命に関わる感じじゃないし、ポーションで治らないのか?』

『ちょっと黙っててください!説明がめんどくさいんで…』


俺の疑問に対して、トーレが右手で払うような仕草を見せ面倒くさそうに言い捨てた。

俺なんか悪いこと言ったのだろうか…

と言うか、トーレの俺に対する態度がどんどん雑になっているような感じがするのは気のせいだろうか…


『では逆にトーレさんは、どのように考えているのでしょうか?』

『この近くにご主人様の別邸があるので、そこで手当てなんかをした方が貿易都市ルートに運ぶよりは安全かなと思います。どうせ、専門薬の許可なんて直ぐにおりないでしょうし…』


専門薬ってなんだ…?

ここで、また疑問を挟みたいのだが…

心にダメージを負いたくない俺は、取り合えず説明は後回しにスルーすることにした。


『なるほどちなみに、その別邸まではどのように運ぶのですか?』

『あー、ナカノ様にお力を貸していただければと思います』

『えっ…?俺?何いってんの?』


トーレが俺に話を向けてきた。

もちろん俺としても力になれるのであれば、なってあげたい。

だけど話の内容がイマイチ理解してないのに、任せろと言うこともできないだろう。

反応に困っていると全員の視線が俺に集まってきた。

錯覚なのかもしれないが若干距離もつまってきているような感覚もある。

せめて内容だけでも確認したいなと思ってトーレの方を見ると…

眉間にシワを寄せながら「テメー余計なこと喋んじゃねー」というような顔で俺を見ている…


『方法があるのであれば、特例として彼の同意書をここでとり後の手続きは私の方でやってもいいですけど…ちなみにどのような方法でしょうか?』


俺の返事を待たずにカントが話をすすめだした。


『あー、はい。それは昨日見せてもらった、あのギューンってなってピュッってきたやつですよ。ナカノ様、あれなんて名前なんですか?』


……


トーレの言葉の後、全員の動作がピタリと止まった。

もちろん言われた対象の俺も、彼女の言葉の意味が全く分からない


『あのな…トーレ…ギューンでピュ?それだと全く分からないぞ?』

『あー、もー!こっちは冒険者じゃないんだからスキルの名称とか知らないんですよ!』


トーレが若干、イライラした素振りで俺に言ってきた。

見るからに「分かってくれよ!」と言わんばかりの表情なのだが…

「冒険者のスキル」!この一言でやっとトーレの言葉を理解することができた。

彼女が言っているのは座標認識スポット座標移動ムーブの事なのだろう!


彼女は恐らく、最初に俺と彼女で別邸まで行き俺が場所を記憶する。

その後、ここに戻ってきて俺にグリエルを運べと言いたいのだろう。


ここから貿易都市ルートの距離でそれをやれと言われたら無理だと思う。

ただ、別邸がここからどれ程の距離あるのかは分からない。

だが、トーレは近いと行っていたから可能性としては考えられると思う。

確かに彼女が言うように試してみる価値はあるのだが…


それにしても「ギューンってなってピュッってきたやつ」じゃー、全く意味が通じない。

とは言っても突っ込みいれるとなんかややこっしくなるなんだよね…


『了解、トーレ!別邸が近いなら座標認識スポット座標移動ムーブで確かにグリエルモさんを安全に運べるね。でも大丈夫なのか?トラボンさんに断り入れなくて…』

『そう!それです!やっと分かりましたか!やれやれですねぇ~。ご主人様はナカノ様とは比べ…あっ…失礼、そういう方なので大丈夫ですよ!』


俺の返答が彼女にとって満足いくものだったようだ。

明らかに安心したというような表情を見せながら、彼女はグリエルモの方に近づいた。

その状況に他のみんなも安心したのだろう。

次々に安堵の表情を続けていく。


それにしても…

やっぱり彼女の一言は…

何か一言多い気がする…

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