2ー7★洞窟の前で
老婆は洞窟の中に入る前に羊皮紙で何かを確認していた。
恐らく場所に関するメモの類いか何かだと考えられる。
なので、もしかすると目印の一つでもある可能性が高いが、あまり時間にゆとりなどない。
老婆と一緒の方法はとれない俺だが、別な方法で正確な場所を覚えておくことにした。
先ずは目を瞑り精神を集中する。
大きな深呼吸の後、職業スキルである
直ぐに真っ暗な空間の上に碁盤の目のような模様が広がってきた。
その後、
『何ですか?それは?』
トーレは、いきなり無言になってしまった俺のことが若干不思議に思ったようだ。
羊皮紙に書き留めている俺の手と顔を交互に見ながら訪ねてきた。
『あー、冒険者の職業スキルでこの場所の正確な位置情報を掴んだんだよ。老婆が羊皮紙で確認していたから、メモとかは有効だと思ってね。これで一旦離れても大丈夫だよ』
『ほー、冒険者の職業スキルですか~。ナカノ様が頭を使うなんてビックリです』
若干失礼極まりないような言葉が聞こえた気がする。
だが、そこに突っ込みをいれている時間的余裕もない。
いつまでも洞窟の入り口にいるのは次なる危険を招く可能性がある。
先ずは、どこか隠れることができ洞窟を見渡せる場所まで移動をしたい。
辺りを見渡すと二本の木に挟まれる形で大きな岩がある。
俺達はそこまで移動することにした。
★★★
俺とトーレが洞窟を発見してから、恐らくは二時間ほどが経過したはずだ。
その間にトーレに洞窟を監視してもらい、俺は魔話器を使いみんなに状況報告をした後でフェンとその護衛であるアンバーとエイジ、カントとエルメダの知り合いらしい調査員のローレン、アンテロを
残りのエルメダとティバーの二人、それに三人目の調査員達には拠点の方で待機してもらう。
当初は拠点の方で待機してもらう調査員はローレンの方がいいのではと言う意見が主にエルメダとローレンからでた。
だが他のメンバーからは、二人一緒だと集中してくれないと言う意見が出たので、こういった配置になったのだが…
俺とトーレが離れている間に二人は何をしていたのだろうか…
『よし!では準備が整ったら俺と一緒に洞窟に入るメンバーを決めたいんだけど…』
『それって…外れですよね…?』
『ローレン!おいっ…外れって…でも調査員さん、二人の内どちらかは一緒に入ってもらうつもり、と言うか…調査員だからね!』
『『えっ?』』
カントとローレンの声が揃った。
そして二人の顔は下を向いて目線を誰とも合わせようとしていない。
明らかに行きたくないと言う雰囲気を全開にしている。
気持ちは分かるのだが…
少なくとも俺が行くと言ったとき誰も止めてくれなかった…
それに調査員が行かないと言うのは…
『えーっと…とりあえず色々あるとは思いますが…調査員の方どちらか一人でも行かないと…』
『そうですか?』
『はい…』
『なるほど…では、ローレン!勝負です!』
ここに来るまでカントが調査員三人の中で最も立場が上だと思っていた。
なので、この調査最大の山場であろう一緒に洞窟に向かうのも彼だと思っていたのだが…
彼は半ば強引にローレンを捕まえ勝負をけしかけた。
本当なら一言いった方がいいとは思ったのだが、正直な意見としてはどちらでもいい。
余計な時間はかけたくないので、俺は他のメンバーと話し合う方を優先した。
『あそこに老婆がいるんですよね?』
『はい、いますよ』
『それで、今回はトーレとフェンはここで待ってて欲しいんだけど…』
『え?僕は入るつもりだったんですけど…アタルさんと調査員の方とアンテロさん、ということですか?』
『いや!ワシもお坊っちゃんは残った方がいいと思う。後、非常事態を考えるのであれば…お嬢さんではなくて、ワシかエイジの方がいいと思う』
『アンバーさん、俺も出来ればアンテロじゃない方がいいと思ってたんですよ!』
『えっ…ナカノ様…私…役立たずですか…?』
『いやっ…別に役立たずとか、そういうことじゃないよ!』
『あー…、ナカノ様、そういえばさっきもそんなこと言ってましたよね~』
『おい!トーレ!お前、嘘はやめろ!』
トーレが洒落にならない爆弾をぶちこんできた。
ちょっと話があらぬ方向へ飛んでいってしまうかと思ったのだが、アンテロには何とか誤解だと説明をして事なきを得る。
一悶着の後で、こちらの方では俺とアンバーが洞窟に入ると言うことで話し合いはまとまった。
それで、問題の調査員二人はどうなったのかと思い横を見ると…
思いっきりヤったぜ!と言う表情を浮かべ右手を高く掲げているカント。
私の人生は本日終了しましたと言う表情で右手を見つめているローレンがいる。
何らかの勝負をしてローレンが負けたのだろうなと言うのが直ぐに分かった。
固定給の二人としては、なるべく危ない橋はわたりたくないと言うことなのだろうが…
だがローレン!
まだ絶対に危険な洞窟と決まったわけではないぞ!
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