1ー38★一夜明けて

アンテロとの話から一夜明けて俺は本日のアイテム運びの仕事は休むことにした。

もちろん早速動くのがいいと思ったからだ。

先ずはスルトにアンテロのことを話すのが一番な気がする。

アンテロが修道院を辞めるのは仕方がないことだとはスルトも納得しているはず。

だが、それとは別にアンテロをフェンとの料理屋の方で暫くは面倒を見てくれないかと思ったからだ。

だからと言って、朝早くにいきなりムーブで小部屋に押し掛けるのもどうかなと思って、丘を降りて孤児院の正面入り口から訪問することにした。

入り口の横の方にはベル式の魔導装置が備え付けられている。

スイッチを入れ数十秒ほど待つとエルメダの声が聞こえてきたので、受け答えをしていると中に入れてくれた。

今は、ムーブで移動できる小部屋に通されてスルトが来るのを待っている状態だ。


『おはようございます、ナカノさん。朝早くに、どうされたのですか?』


スルトが急いで駆けつけてきたようで、若干驚いてるような表情で聞いてきた。


『いやー、アンテロさんと昨日お話ししたので、その報告とこれからについて早めに話し合っていきたいなと思いまして』

『なるほど、してあの子は何を言っていましたかな?』

『本人の中では後10日ほどで全て準備して出ていくつもりだったようで…』

『でしょうな儀式の期限が確か、それくらいだったはずですから…』

『話を聞いてみると、あまりにも無理があるというのが正直な意見でして』

『でしょうな…』

『本人の中で修道院を去るのは決定事項なのは譲れないようです。ですが資金などを含めて前準備などがあまりにも乏しいので、その間何とかなりませんかと思いまして話に来ました。』

『それならば資金の方を出すのはロスロー商会ですし、フェンさんの方に話をしてみませんと何とも…』

『ちなみにアンテロさんの寝床なんかは…』

『この孤児院でですか?』

『あー、はい…ダメですかね?』

『飲食店の方を手伝ってもらえるというのであればホールで良ければ…スペースはあるんですが…物資の方は何とも…』

『スペースの方だけでも貸していただけるのであれば、全然!スルトさん、ありがとうございます!』

『あの子も、この孤児院の出身ですから出来る範囲であれば協力はしたいと思いますが…』

『それでスルトさんからフェンの方には、いつ頃話をするのですか?』

『フェンさんの方からは孤児院の方の話が纏まったら持ってきてくれればいいという話でしたので、特には決めてませんでしたが…アンテロの話も何とかなりそうなので今日の昼にでも訪れるとしますかね』

『それであれば、俺も一緒にいいですかね?手間が省けそうですし』

『アンテロの件も考えるのであれば、確かにその方がいいかもしれませんね』

『はい、宜しくお願いします』


スルトとの話は何とか纏まりそうで良かったと安心した。

だが近くで話を聞いてたエルメダが「今日も討伐休むの?」と寂しそうに言ってきたのは心が痛んだ…


(確かに2日連続になってしまうけど…後にすることも出来ないし…)


エルメダには若干後ろめたいものを感じた。

だが最初に話を知るきっかけになったのはエルメダなので我慢してもらうしかないと思う。

とりあえず昼までには機嫌を直してもらえるように俺はエルメダを説得し続けた。

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