1ー39★間抜けな二人


俺とスルトは午後になり次第、二人でフェンのもとに向かった。

俺の方はフェンの方に約束していた訳ではない。

なので最初フェンは俺とスルトが一緒に来ていたことに驚いているようだった。

ただ全く知らない仲でもないしフェンの方でも近いうちに俺と話さなければいけないと思っていたようで、とりあえず三人で話すのを了承してくれた。

そこで俺はアンテロの話をフェンの方に相談してみたのだが、フェンはどうにも不思議な目で俺とスルトを見ている。


『あのー、アタルさんとスルトさん…アンテロさんの事なら別に心配要らないと思いますけど…』

『ということは…フェンの方で面倒を見てくれるの?』

『いやー、そう言うことではなくて…と言うか…少なくとも金策に置いては面倒見る必要もないと思いますよ!』

『えっ…??どういうこと?だって修道院をもう少しで去らなければいけなくて、住まいや仕事も0から探すしかないんだけど…』


どうやらフェンにとっては俺とスルトの心配というのが不必要なものと思っているようだ。


『だって…アンテロさんって…薬師の職業があり、既にポーション作れるんですよね?それならポーションをつくって売れば良いと思いますよ。確実な現金収入があるわけですし、慣れてくれば飲食店の手伝いなんかよりも全然稼げるはずです。それに住処の方も1日か2日位の問題だと思うんですけど…』


俺とスルトはフェンに言われて、やっと気づいた!

確かに自分でポーションを作って売ればいいだけの話だ。

あれだけ話していて二人とも気づかないなんて、何とも間抜けな話に思える。

そしてフェンの言葉に続くようにスルトも続けた。


『本当にフェンさんが言うようにポーションを作り売ればいいだけの話ですね。それにポーションの原料となる癒し草においても都市の外に普通に生えています』

『えっ?そうなの?イーグルと討伐に行った時には採取とかしたことないんですけど…』

『それは恐らく…買い取り価格が安いからでしょうな…単体で使っても本当に癒し位の体力しか回復できませんし…討伐の方が割りに良いと思います。なので癒し草はポーションを作れる者がいないとメリットがあまりにも小さすぎます』

『あー、そうなんですか…と言うことは他にも作れる薬系のアイテムってあるのかな…』

『それは本人に確認してみないと何とも言えませんが…可能性は高いと思います』

『その方はギルドの登録は済ませているのですか?製薬ギルドに登録しているならポーションの売買だけではなく、専門の薬関係の事とかも調べられると思います。』

『あっ、登録してない…』

『ちなみに修練士さんと言ってましたが、旅に出るんですよね?それなら実力はどうなんですか?一人で都市の外で材料を集められるくらいには強いんですか?』

『『いや、多分と言うか…絶対に弱い!』』


俺とスルトの声がピタッと揃った。


『え?二人揃って、そこまで言うとはって…アタルさんが、そこまで言うんですか…』


そう!フェンは俺が山で遭難していたところを保護されて、何も出来ないで右往左往していた頃を知っている。

その俺が弱いと断言しているのだ。

途端にフェンの顔が暗いものになってしまった。


『ちなみに…フェン…その辺をカバーできる方法って知ってたりする?』

『知っていたら僕の方こそミモザまで行くのに護衛を雇ったりしませんよ』

『『ですよねー』』


俺だって、そんな方法を知っていたら別な手段で上手くやっていると思う。

薄々は感じていたが、一番の問題というのはアンテロの実力だと思われる。

だがアンテロに持っていく今後の話としては、明るい話題も手に入れることが出来たようだ。

大体の話はできたので、俺はキリのいいとこで話を終えて一度アンテロの方へ報告へ行くことにした。

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