1ー32★奴隷商人の館
●今回はトラボン側のお話になります。
アンテロ・ハクショクとアタル・ナカノの2人が帰った奴隷商人の館では、トーレを取り押さえたドワーフとトラボンがゆっくりと話し合っていた。
『ゲノムよ、トーレはよくやってくれたか?』
『私の目からだと若干やり過ぎな気もしました。』
『だがトーレの言ったことは全て真実なのだろう?』
『はい、確かに真実です。トーレは自分の
『それなら何も問題などないと思うのだが…』
『確かにありません。』
『それにしても真逆アンテロさんにカードがあるって言うのはビックリしたよ。』
『そこは旦那様の計算ではなかったのですか?』
『さすがに私でも出来ることと出来ないことというのがあるし、今回の事は全く予想していなかったことだ。みんな色々と考えるよ。でもそのお陰で計画を運びやすくなったから、それについては感謝しないといけないな』
『では早速行動に移すのですか?』
『ゲノムよ、気が早すぎるぞ!運びやすくなったとは言っても、それは行程をいくつか省略できる程度のものだ。焦ってはいけないよ』
『申し訳ありません』
『私はね、今回の計画は何があっても絶対に失敗するわけにはいかないのだ。その為には今のあの2人ではまだ足りない。資格と覚悟を植え付ける必要があると思うのだよ。』
『資格と覚悟ですか?』
トラボンの言葉にゲノムは腕を組み目を瞑り数秒考え込んだ。
『そうだ、ただそれは残念なことに私の専門分野とは言い難い。資格と覚悟を手にして一皮むけてくれれば、きっと私の力になってくれるはずだ』
部屋の奥に続く方の扉が少し開いている。
隙間からは寂しそうにトーレが座り込んでいて2人を見ていた。
『トーレ、申し訳ない。お前にあんなことを頼んでしまって、辛い記憶を思い出させてしまったことに私は心が痛む』
トラボンが、そう言うとトーレが嬉しそうに顔を上げてトラボンの前にすり寄ってきた。
『いいえ、私をあの時助けていただいたのは旦那様だけでした。私は一生かけて旦那様に恩返しをしたいのです。』
『そうか、ありがとう!私は自分の計画も大切だが、お前が幸せになることも同じくらい大切なんだよ』
トラボンの右足に顔をすり寄せているトーレの頭をトラボンは優しく撫でている。
『ありがとうございます。今のトーレは世界一の幸せ者でございます。これからも何があっても旦那様についていきます』
『私はもう一度、あの時をあの方と生きたいだけなんだ…』
最後にトラボンが誰にも聞こえないほどの小さな声で呟いた…
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