1ー17★思わぬ可能性!
スルトの淹れてくれたお茶もだいぶ冷めていた。
正式名称をハツコウチャというようで嗜好品の類いに入るらしい。
多分、日本で言う紅茶だよなと思いながら飲んでいた。
(正直、砂糖が欲しいんだよね…ストレートは飲みづらいです…)
『すっかりお茶も冷めたみたいですから、もう1杯淹れてきましょうか?』
『いや、お気遣いなく大丈夫です』
『もしやハツコウチャはお好きではないですか?』
『これと似たものは故郷にもあったのですが、その時は砂糖なんかを淹れて飲んでいたので…』
『はて…砂糖というのは…』
『あー、すいません。私の故郷とは呼び名が違うみたいですね。砂糖というのは、甘味のある調味料の1種でして、他には塩味がするものや辛味や香りを楽しむ香辛料などもあったりと…』
『なんと!!香辛料ですと!』
スルトが方眉を吊り上げ、目を大きく広げながら俺の方を睨み付けてきた。
『えっ?なんか変なことでも??』
『恐らく、ナカノさんの言われているモノはこの辺一体では、スパイスと言われるものです』
(スパイスって香辛料ってことじゃないのか?塩とか砂糖も香辛料になるのか??)
『ここは交易都市とは言われているだけに物品はなかなかに流通しています。ですが、スパイスのほとんどは都市では生産されていないモノばかりなので非常に高価なモノとされています』
(もしかして…一般の料理屋には調味料自体が出回っていないとか?スルトの言い方だと…)
『なるほど、それで料理も全般的に味が薄いと感じたのですか…ちなみにどのくらいの価値なんですか?』
『スパイスは同じ量の金と等価交換と聞きます。種類など詳しいことについては…実は…私も実物は目にしたことがないので…』
『金と同じ量ですか??それはさすがに…』
スルトが変な冗談を言ってきたものだから思わず真顔で返答していた。
(さっきまでの暗い話題を変えるスルトなりのジョークか?)
『いえ、本当のことですよ』
『えっ…本当のこと?』
『はい、それに何度も食事をして味が薄いと感じているのでしょう?それほど香辛料は大切なものなんです』
『本当に本当ですか?』
『本当に本当です!』
『もしも塩や砂糖を持っていて売りたいと考えた場合、専用のお店とかってあるんですか?』
『スパイスなら商人系ギルドはもちろん、普通のお店や料理屋など何処でも買取りしてくれるとは思います。ただ、一番高い所は分かりませんが…一度、シオやサトウと言うモノを見てみたいものです』
『なるほど、なるほど、なるほど~』
(なんか~儲けの匂いがプンプンする!両目が金貨にならないように自制しなければ…今の宿泊所で隠れてやるのは無理そうだし、無料で住めるなら…)
『スルトさん、俺、この家気に入りました!実は冒険者以外にもやりたいことがあって、ここなら誰にも邪魔されない空間に立地状況で正に理想って感じです!』
『気に入っていただけたのなら、こちらとしても嬉しい限りです。』
『あっ、そー言えば、スルトさん。この辺って日用品や食料品とかの買い物関係ってどうなってるんですか?』
『それなら孤児院の近くに市場がありまして、そこで大抵のものは揃うと思います。』
『良いですね!今度は市場に行って実際に見てみたいので一度孤児院に戻りませんか?孤児院の子供達にも一度は顔見せた方が良いのかなとも思いますし』
『子供達にも紹介してもいいのでしたら、こちらとしても助かります。分かりました。では戻りましょうか』
(よし!そうと決まれば1秒でも早く計画を具体的にしていきたい!)
つい先程まで闇のような話をしていたとは思えないようなテンションで、俺はスルトと一緒に孤児院にムーブで戻ることにした。
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