1ー9★全力疾走

正門を抜けると草木に囲まれながら空は快晴となっているので、非常に爽やかな景色が広がっている。

ルートの外枠に沿って建てられている外壁から歩くこと5分、ヘンリーは立ち止まった。


『今日はこの辺りでどうだ?』

『取り敢えず一度探しておくのが良いんじゃないか?』

『そうね、先ずはやってみようかしら』

『最初はソフィアお願いね』


みんなは当然のごとく喋っているが、俺には何が何なのか全くわからない。

ただ一つ分かるのはソフィアが何かすることなので、顔をソフィアの方へ向けると…


ソフィアの体全身が一瞬青く光ったと思ったら勢いよくソフィアの体が上空へと舞い上がった。


俺は驚いて口を半開きの状態でソフィアの軌道を追いかけていたら、ラゴスに思いっきり爆笑されて我に返った。


『俺たちがやっているのは巡回討伐という外壁にモンスターが近づかないようにすることなんです。ソフィアに先ず上から見てもらって、どの辺りにモンスターがいるのかを把握してもらっているわけです。』


恥ずかしくて顔を赤くしている俺にヘンリーが説明してくれた。


上空にいたソフィアが俺たちの元まで高度を下げてきた。


『北西の方向に中型8、距離800』


ソフィアの声を聞いて他の面々が頷くと一斉に走りだした。

俺も一緒に走りだすが全くついていけない。

姿は見失わないように走っていくと、遠くの方でヘンリーとラゴスの叫び声が聞こえた。

どうやら戦闘に入っているようだ。


5分ほどして俺が4人にようやく追い付くと犬頭悪魔コボルト豚頭悪魔オークが合わせて8匹ほど倒れていた。

ヘンリーとラゴスは陽気にハイタッチして、セアラはモンスターの魔素を自分の魔石に取り込んでいるようだ。

上空にいたソフィアが降りてくるなり


『あそこの木陰に3匹ほど隠れてる』

『ナカノさん、魔石は持ってますよね?モンスターの魔素の処理とアイテムが出てきた場合は回収お願いして良いかな?』

『分かりました』

『よし、いくぞ!』

『『『おう!!』』』


4人は目標の木陰へ一目散に走り出していった。


(なるほど、こんな感じで夕方まで続くのか。体力持つのかな…とんでもない仕事になりそう…)


サポーターの仕事が戦闘に対する雑用というのは本当に上手い例えだと思うが…

全力疾走なんて何年もしていなかった30代半ばのおっさんがいきなり何度もしなければいけない恐怖。

慣れるまではモンスターとの戦いなんて先の出来事になるだろうなと思いながら、俺はコボルトとオークの処理をしていた。

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