神業(マリオネット)

１ー８★正門の小部屋で

『外から帰ってくる時にはナカノさんのムーブを使ってもらうのですが、その際にはここに戻るようにしてください』

ルートの正門脇にある10㍍四方くらいの部屋の中で、イーグルのリーダーであるヘンリーに言われた。

『戦士系ギルドではなく、この部屋でいいんですか？』

『ルートの周りには侵入や危険物の持ち込み対策でムーブなどの移動スキルが使えないんです。だから帰還はこの部屋が基本となります』

『対策ですね、なるほど』

戦士系ギルドから正門に来るまでの道すがら俺はイーグルの方達と自己紹介を兼ねて、色々な話をすることになった。

先ずはイーグルの面々だがリーダーの男はヘンリーといい青戦士（ブルーファイター）という職業だと言っていた。

ドワーフの男と一緒に前衛を受け持っているだけではなく、水属性の魔法も使えパーティの回復役も担っているらしい。

そしてドワーフの男は全身を重そうな鎧に身を包む重戦士（ヘビーファイター）のラゴスと名乗ってきた。

3人目は本当は弓が得意だがメンバーの配置の関係上、槍を多く使う狩人のセアラといいヘンリーの奥さんらしい。

最後がエルフの魔法使いでソフィアで恋人募集中らしいが、寿命の概念が人間とは大きく異なるエルフだけに若く見えて年齢は200を越えているんだとか。

ヘンリーとセアラが夫婦だと知ったときには正直、殺意が少し芽生えたのは内緒だ…

なんでもヘンリーとラゴスの職業というのは上級職と呼ばれる職業で、複数の特定職業の熟練度が50に達することでなれると教えてくれた。

どうやら職業というのは利用する者の性格や成長などによって様々に分岐をしていくらしい。

職業ギルドは戦士や冒険者、商人や魔法使いのギルドなど、大まかにしか分かれていないので考えながら利用する方がいいともアドバイスをもらった。

『ナカノさん、アイテムの収集なんかをする時は、このデポットを使用してください。揉め事を避けるためアイテムボックスは使用しないでください』

『はい、こちらとしてもこういう方がやり易いです。ありがとうございます。』

非常に準備がいいということは、あらかじめ俺と一緒になるのをギルドマスターから話があったのかもしれない。

『ナカノさん、質問など最初は色々あると思いますが、体を動かしていれば直ぐに慣れると思います。』

『分かりました』

部屋を出るとルートに来るときにいた全身茶色のフードを被り水晶を持った怪しげな男がいた。

『用件は巡回討伐で？』

水晶を持ち俺たちの周りを周りながら、ぶっきらぼうに訪ねてくる。

『ああ、許可証はこれで』

ヘンリーが腕時計の様なものを見せると、フードの男は黙って頷いて右手を門の出口の方へ振って来た。

『よし、みんな行こう！』

俺はイーグルの方達に続いて門の外を出た。