1ー5★初仕事
朝起きて宿泊所で身支度を整えたら、昨日言われた通り冒険者ギルドを訪ねてみた。
するとモルガンが俺を見つけてくれて手を振りながら大きな声で俺を呼んでいた。
『おーい!新入り~!お前は、取り敢えず、こっちこーい!』
周りは結構な人だかりになっている。
俺は面倒なことにならないようにモルガンの方へと近づいていった。
およそ10人ちょいの人数が輪を作っていて中心に俺とモルガンがいる配置になった。
『今日からお前たちと同じ冒険者になったアタル・ナカノだ。未経験で入ってきたから何かあったら宜しく頼む』
モルガンが俺のことを紹介してくれると、みんなはこちらを見ながら無言で頭を下げていた。
『とは言っても普通に仕事をするだけなんだけどな。じゃーみんな!仕事を開始してくれ!』
そうモルガンが声をかけると冒険者たちは円を離れて隣の倉庫へと足を運んでいった。
『ナカノ、お前さんは、先ずこれを持っててくれ。今日の依頼書になるからなくすなよ』
『はい、分かりました』
『先輩の仕事を見学しながら段取り説明するから隣の倉庫へ移動してくれ』
『あそこですね。分かりました』
倉庫へ移動すると自分のアイテムボックスに荷物を入れている冒険者。
自分のアイテムボックスを商人らしき人に確認してもらっている冒険者。
依頼書に記入してもらっている冒険者などがいた。
(なるほど、こうなってるのか)
『ナカノ、見てると流れはわかってくるとは思うが…』
『そうですね。荷物入れてチェックしてもらったらムーブで移動って感じですか?』
『そうだ、移動先にも人がいるから依頼書と荷物を渡して問題なければ料金をもらう流れになってる』
『なるほど。それで依頼書の左上にかかれているスポット番号が届けるべき先ということですか』
『そういうことだ。依頼者はあまりあるほどいるから冒険者は数をこなせれば、それだけ稼げるっていうわけだ。お前さんの方はムーブが使えないから移動は1ヶ所限定になるが、デポット使えるから多くの量が運べるから稼ぎやすいと思うぞ』
『そうですね。ありがとうございます。がんばります』
といっている間に冒険者の大多数が商人のチェックを終えてムーブで移動してしまったようだ。
俺は昨日契約したアイテムボックスからデポットを取り出すと、モルガンの言われるままに荷物を片っ端から入れていった。
この荷物の依頼者の一人であろう男が近寄ってきた。
『おっ、デポットもちですか。モルガン様は、良い方を見つけられたようですね』
『こいつは昨日入った未経験の新人冒険者ですよ。ムーブは不安なんで、取り敢えずは徒歩移動になりますけどね』
『では、続いてくれるように私からもお祈りしておきましょうかね』
今の俺には二人の会話の意味が良くわからないが、荷物を取り敢えず入れれるだけデポットの中に入れて、依頼者らしき男に確認して貰った。
どうやら全部で68種類の荷物を99個づつ入れているようだ。
男の了解を得るとモルガンから指示が来た。
『ナカノ、依頼書のスポット番号をなぞりながらスポットと心の中でいいから唱えてみろ』
頭の中に方眼紙のように無数の升目が広がり、一番上の左から1、2、3と数字が右に広がる。
続いて最初の1から下に向けて2、3と数字が広がっていた。
数字が広がり終えると、指でなぞったスポット番号の位置が不思議とイメージできた。
俺が小さい声で
『あっ…』
といったことでモルガンも俺がスポットに成功したのを確認したようだ。
『よーしナカノ、本来はムーブをして終了になるんだが、お前は無理だから歩いて場所に向かってくれ。多分、歩くと片道3時間くらいかかるから今日は直帰でいいぞ』
(結構かかるな…)
『ありがとうございます。では失礼します』
場所がスキルでイメージができているからといってスンナリと目的まで行けるほど甘いものではなかった。
場所がイメージできても、それまでにある建物などの障害物までイメージできるわけではない。
片道3時間と言われた道のりも俺は5時間くらいかかっていた。
目的地にいた商人は笑顔で依頼書を確認してくれて報酬を払ってくれた。
報酬は6800YUNで、この世界に来て初めての現金収入だ。
これだけでも贅沢さえしなければ日々の生活は何とかなるかもしれない。
ムーブができて複数回を重ねることが出きれば、かなり割りのいい仕事になるだろうと思う。
(はやく熟練度上がってくれないかな~)
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